身体の中にスミを出す!? 大瀬崎で捉えた珍しいイカの稀な生態

昨年の初冬からリュウグノツカイなど沢山の浮遊生物で盛り上がりが見られた西伊豆の大瀬崎だが、年が明けて日が経過するにつれリュウグウノツカイの幼魚などの目撃例が減少してきた。そんな現状のなか、今回は1月30日に現れたすごい生き物を紹介する。

謎に包まれたイカが出現

私自身、ここのところは夜の水底にいる生物を撮影する機会が多く、その日は浮遊生物の撮影をする予定ではなかった。しかし湾内にエントリーして海に顔をつけ、手持ちのライトの周りを確認すると甲殻類の幼生で溢れかえっていた。その中には内湾に生息しないような甲殻類もいたので、カメラは浮遊系にはあまり向いていないレンズではあったが、急遽、浮遊生物の撮影に狙いを切り替えることに。

するとすぐさま、ハダカイワシという日中は中深層に生息する魚の稚魚がライトの周りを泳ぎ回っていることに気づく。そんな変わった生き物たちを苦戦しながらも撮影していると、大瀬館マリンサービスの元店長、熊谷翔太さんが、「すごい物が出た!」と言わんばかりに、あるイカの仲間をこちらに教えてくれた。

それがこのサメハダホウズキイカ科の1種の幼体である。

サメハダホウズキイカ科の1種の幼体 外套長30㎜

サメハダホウズキイカ科の1種の幼体 外套長30㎜

サメハダホウズキイカ

特徴的な腕

昨年も目撃情報はあるものの、この時期毎日にように大瀬崎を潜っている私がこのイカの仲間を最後に見たのは2014年。実に7年ぶりの遭遇だ。今回撮影した個体が、最低でも30種類以上いるとされるサメハダホウズキイカ科のどの種類なのかは、目撃例も少なく、写真以外でもサンプルが必要になるため特定は難しいよう。生態などもほとんど謎に包まれたイカなのである。

他では見られない生態を披露するサメハダホウズキイカ

じっくり観察していると、体全体を外套膜で包み込みはじめ、外敵から身を守るためなのか、丸くなりまるでボールのような姿に。このような行動をするイカの仲間はほぼいないと思われ、さらにサメハダホウズキイカ科の中でも外套膜に体を入れない種類もいるため、この生態を持つイカ自体がとても珍しいといえるのではないだろうか。

風船のような姿になるサメハダホウズキイカ

風船のような姿になる

また、今回の個体を観察していて面白かったのがスミである。外套膜の中に一度スミを出し、そこから徐々にスミを外に出していく姿が見られた。

外套膜の中にイカスミが溜まっているように見える

外套膜の中にイカスミが溜まっているように見える

スルメイカなどイカの仲間は自分の分身を作るようにスミを出して、素早く逃げるような行動をする。

しかし、このイカはどうみても泳ぎが遅いので、スルメイカのような素早いイカのスミの吐き方とは異なることがわかった。少しずつゆったりとスミを出していることから、私が観察したなかでは、タコのように煙幕みたいなスミの吐き方をしているのかなぁとも感じ取れた。

徐々にスミを外に吐いていた徐々にスミを外に吐いていたサメハダホウズキイカ

徐々にスミを外に吐いていた

生態も生息域もまだまだ不明な部分が多いイカ。冬のこの時期、大瀬崎は珍しいイカに遭遇する可能性が高いのでチャンスがあれば狙ってみてほしい。

撮影協力:大瀬館マリンサービス
     熊谷翔太様

堀口和重さん
プロフィール

horiguchi_profile

伊豆の大瀬崎にある大瀬館マリンサービスにチーフインストラクターガイドとして勤務後、2018年4月にプロのカメラマンに転向。
現在は伊豆を拠点に水中撮影から漁風景や海産物の加工まで海に関わる物の撮影を行っている。
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PROFILE
日本を拠点に活動している⽔中カメラマン。カメラマンになる以前はダイビングガイドをしながら数々のフォトコンテストで⼊賞。現在はダイビング・アウトドア・アクアリストなどに関連する雑誌やウェブサイト、新聞などに記事や写真を掲載、水中生物の図鑑や教書にも写真提供している。2019年に日本政府観光局(JNTO)主催の“「⽇本の海」⽔中フォトコンテスト 2019”にて審査委員、2020年には“第28回 大瀬崎カレンダーフォトコンテスト”の特別審査員も務める。近年は訪⽇ダイビングツーリズム促進を⽬的として“NPO 法⼈ Japan Diving Experience”としての活動も⾏っている。