ウミウシ談「頭だけになっても体を再生できるので問題なし」。奈良大研究グループが確認
飼育していたウミウシが、頭部を自ら切断(自切)し体と分離後、残った頭部から体全体を再生しているところを奈良女子大学の研究グループが確認した。同グループによると、「複雑な身体構造を持つ生物で確認されたのは初めて」としている。今回確認された驚異の再生力をもつウミウシは、飼育されていた一部の個体にみられており、共通事項としてそれらウミウシがもつ‟ある機能”が挙げられているようだ。一体どんな機能を持ったウミウシなのか、また、なぜ頭部を自切したのか。
自切した理由は「自己防衛」⁉
奈良女子大学の研究グループは、ウミウシが自切してからも観察を続けたところ、
頭部から1週間以内に体の再生が始まり、3週間後にほぼ完全な状態となったとしている。切り離した体部分は頭部を再生することはできなかったが、それでも最長で110日間の生存が確認されたという。
https://news.yahoo.co.jp/articles/7a75ce96051e85a54f6786e4aee498eb2b3d45f8
同研究グループが、撮影した動画がこちら↓
Sacoglossan sea slugs don't mind losing their heads. Not only can the sea slugs elect to detach their heads and survive, but they can regrow a whole new body. Read more in @CurrentBiology https://t.co/7ueo5HL0Vn@NaraWomensUniv
Video: Sayaka Mitoh pic.twitter.com/oL5bh9psQ7— Cell Press (@CellPressNews) March 8, 2021
同グループは、ウミウシが頭部で自切した理由や原因は不明とした上で、体に寄生虫と思われるような生き物が付着していた個体もあったといい、寄生生物からの「自己防衛」を図った可能性を示唆している。
ダテハゼ属に付着して生活するスミゾメキヌハダウミウシのように、ウミウシ自体が寄生的な生態を持つものも知られているが、今回のようにウミウシが宿主となることもあるようだ。
また実験過程で、個体の首部分を糸で絞めてストレスを与えた場合にも、自切が見られたという。人為的に切断する実験はまだ行っていないようだ。
驚異の再生要因はウミウシの‟光合成機能”にあり!?
今回確認された、頭から体を再生できるウミウシは、ウミウシの一種である「囊舌類(のうぜつるい)」のうち、「コノハミドリガイ」と「クロミドリガイ」など計15体だったという。これらに共通する点は、餌の海藻から取り込んだ葉緑体で光合成できる機能を持っているということ。
研究の中心を担った奈良女子大大学院の三藤清香さんは、「頭だけでも生存できた大きな要因は光合成なのではないか」と話している。当局は頭部から体全体に分化できる細胞の存在や光合成で生存できる仕組みなどは、今後再生医療などに活用できる可能性があるとしている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/7a75ce96051e85a54f6786e4aee498eb2b3d45f8
同グループにおけるこの確認内容は、9日付の米科学誌カレント・バイオロジー(電子版)に掲載された。次のダイバーに身近な存在でありながら、まだまだ謎だらけなウミウシの世界にロマンを感じてしまう。もしかしたら、次の発見者はあなたかもしれない。