伊豆の海に現れた海藻の森。東京から日帰りダイビングで西伊豆・井田へ!

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井田の海藻迷路はワイド撮影が楽しめる

井田の海藻迷路はワイド撮影が楽しめる

海藻の森といえばカリフォルニア州などで見られる「ジャイアントケルプ」が有名だ。1日に50cmも成長し、その高さはなんと50m以上に達することもある。対して陸上では日本で1番大きな杉の木が高さ62mあるのだが、樹齢1000年を超えることを考えると海中の植物は驚異的な成長スピードである。

海藻が密集する藻場にはアシカなどの海獣類が生息し、魚類や甲殻類の隠れ家になっていることから、生物多様性にも富んでいる。このような環境は春から初夏の日本の海にも見られ、西伊豆の海藻はたった数週間で「海中林」を形成する。

今回は東京都心から日帰りで潜れるビーチダイビングスポット、「井田」の海中に広がる海藻迷路を潜ってきた。

海藻タワーマンション

海藻タワーマンション

海藻求めて200km。東京から西伊豆の井田へ

早朝5:00に東京を出発し、平日の渋滞を避けて伊豆半島へ向かう。井田は西伊豆エリアにあり、ダイバーの聖地と呼ばれる大瀬崎からさらに車で15分ほどの小さな集落だ。

西伊豆の大瀬崎へ向かう道

西伊豆の大瀬崎へ向かう道

8:00前には井田へ到着し、ダイビングサービスで受付を済ませたら早々にダイビング器材と撮影機材を準備する。カメラ派ダイバーに人気のダイビングスポットなので、朝の空いている時間にじっくり撮影しようと思い早めに行動した。

海藻迷路が人気の時期なので、通常のポイントマップに加えて迷路の地図も見せてくれた。

井田の海藻迷路ダイビングマップ

井田の海藻迷路ダイビングマップ

井田のビーチは器材を背負ってから歩く距離が短く、エントリーが楽だ。すぐに深くなるので水面移動も少ない。水深3m程度の浅場を泳いで行くと、海藻迷路を形成する「ホンダワラ」の姿が見えてきた。ブルーのソラスズメダイが住み着いており、褐色の海藻のアクセントになる。

迷路はかなり狭い部分もあるので、通過する時はレギュレーターやカメラのストロボが引っかからないよう注意したい。自分が絡まってしまうことも気になるが、海藻もサンゴ同様に小魚の隠れ家や産卵場所になっているので、できる限りダイビング中にダメージを与えないよう配慮しよう。

海藻迷路はダイバーひとりが通れるくらい

海藻迷路はダイバーひとりが通れるくらい

結論!海藻は地形ダイビングのように楽しめる!

井田の海は潮の流れがあたりやすいこともあり「井田ブルー」と呼ばれる真っ青な海の色を楽しむこともできる。いつも透視度が良いわけではないが、東京から日帰りで来れるダイビングスポットとしては屈指の期待度だ。この日は透視度10〜12m程度だったが、ホンダワラゴールド×ブルーオーシャンを堪能できた。

井田ブルーとホンダワラゴールド

井田ブルーとホンダワラゴールド

海藻迷路は水深3〜5mの浅場にあり、満潮と干潮で姿を変える。満潮の時間帯はまっすぐ伸びた姿が迫力あり、干潮の時間帯は水面に横たわったホンダワラが天蓋のような形になり、アーチやトンネルを作り出す。

洞窟や岩穴の地形を楽しむことはダイビングの魅力のひとつだが、1年のうちでたった数日、それも限られた場所でしか見られない海中林の探検を楽しんでほしい。また、井田はディープダイビングに適した場所なので、深場での生物探索の後に浅場で減圧しながら迷路で遊ぶこともできる。

流れを受けるホンダワラ

流れを受けるホンダワラ

見られる期間が限られていると書いたが、夏や冬にホンダワラは一体どこにいってしまうのか?場所によっては大きく育つことなくブダイやアイゴ、ニザダイなどの魚が食べ尽くしてしまうこともあるのだが、基本的な生態としては成長したホンダワラ類の海藻は岩から離れ、水面を流されて沖をドリフトする「流れ藻」となる。

このホンダワラの流れ藻はすぐには枯れず、遠くの沖合まで漂流し寿命を終えると深海に沈んで堆積する。西伊豆の沖は日本一深い「駿河湾」で、その最深部は2500m。

流れ藻が駿河湾の沖合へ旅立つ

流れ藻が駿河湾の沖合へ旅立つ

海藻は植物なので光合成でたっぷりと二酸化炭素を吸収している。ソーダやコーラなどの炭酸飲料に使われるように二酸化炭素は水に溶けやすく、海全体には二酸化炭素が大気中の50倍もの量が溶けているという。ホンダワラは、自動車や飛行機などの乗り物や発電所、工場などから排出される二酸化炭素を自身の体に貯め込んでいるかもしれない。

このように深海の海底に貯留された海藻由来の炭素を「ブルーカーボン」と呼ぶ。

日本の海のブルーカーボン

日本の海のブルーカーボン

日本は島国なのでブルーカーボンの宝庫。今回紹介した伊豆以外にも、東北の海、日本海の海、神奈川の海、千葉の海、和歌山の海、九州の海、沖縄の海などスキューバダイビングを楽しむことができるすべての場所に海藻・海草藻場の生態系が存在する。しかし、沿岸地域の開発や海水温の上昇で生物の住処が急速に失われている地域もある。それらの現象は、長年海の中を潜って観察を続けているダイバーが1番知っているのではないだろうか。

国や企業がカーボンニュートラルを実現するためには、ダイバーにできることがあるのかもしれない。

ブルーカーボンについて -ocean+α BLUE Mag-

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井田ダイビングセンター
http://www.itadc.com

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PROFILE
福岡県出身。18歳からスキューバダイビングを始め、翌年にプロ資格を取得。
22歳でPADIマスターインストラクターとなり、宮古島・沖縄本島・東京都内と拠点を変えつつダイビングスクールで15年間働いた後に観光業専門の広告代理店として独立。

現在はWebサイトのディレクション、Web広告運用、SNSの運用サポートなどデジタルマーケティングを主な生業としている。

オーシャナでは、取材時の写真撮影を担当。
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