写真家・むらいさちが北海道で激写 「カラフトマスに会いたい!」

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北海道といえば、陸に海に豊かな大自然が残り、写真家にとっては被写体の宝庫だ。今回、むらいさち氏が赴いたのは知床半島。お目当ては、カラフトマスの遡上の撮影だという。産卵のために川を遡上してくるカラフトマスの生命のドラマ、そして知床の海の水中シーンをむらいさち氏の写真と文章でお送りしよう。

川を遡上するカラフトマスの撮影のために、いざ知床へ!

日本一早いと言われる北海道大雪山の紅葉が始まる9月中旬、僕は北海道の大地に立っていました。

森には冬眠に備えてシマリスたちも忙しく走り回っています。

北海道らしい景色に目を奪われますが、今回の本当の目的は「カラフトマス」の遡上シーンを撮影することです。
実は今年の2月に流氷ダイビングをしに、この地を訪れた時、現地でお世話になった「ロビンソンダイビングサービス」の西村さんから「さちさん9月にカラフトマスが知床に遡上するのですが、今年から地元の協力を得ることができて、川に潜れることになったんです! 来ませんか?」というお話を聞いたのです。

「え!行きマス! 行きマス!カラフトマス!」と二つ返事で行くことを決めて、この日を心待ちにしていました。
なぜなら、サケの遡上の観察などをやっているのは知っていましたが、カラフトマスの遡上シーンが見られるなんてそうそうないと思ったからです。

で、早速カラフトマスが遡上するという川へGO!

ウトロの街から車で10分ほど、この川で観察することに。
来年度から本格的にツアーも開催するということで、素敵なのぼりも作成したそうです。テンション上がりますね~! さて、この川でどうやって観察するのでしょう?

はい、このように「僕ドザえもん」スタイルで観察します。
今回は写真のような小さな滝の滝壺にカラフトマスが集まっていたので、それを水面に浮きながら観察します。観察中は西村さんが安全管理をちゃんとしてくれます。

水温は12~13度、外はまだ暖かいですし、体半分しか水には浸からないので、ウエットスーツでも大丈夫です。写真は、今回のむらいの撮影スタイルです。
僕は長時間水に浸かると思ったので、悩んだあげくドライスーツに。フィンは着けずにマスクとシュノーケルだけでいけます。水深も深くて1mくらいで、30㎝くらいの場所での撮影がメインでした。

迫力と美しさにあふれたカラフトマスの姿に感動!

では、どんな世界が見られるのか、ワクワクする気持ちを抑えきれず、そっと水の中を覗いてみました。

少し紅葉の始まった森の木の下で、お目当てのカラフトマスが泳いでいました。
想像以上に簡単に出会えてちょっとびっくり。そして僕らのことなど気にせず、目の前を悠々と泳ぐ姿が美しすぎました!

そうそうそう! この迫力あるオスの姿が見たかったのです!

カラフトマスは、繁殖期になるとオスの背中がこのように出っ張り、独特の姿を見せてくれます。「背中が張る」という意味で、「セッパリマス」とも呼ばれます。
では、サケとマスの違いって何?と思ったのですが、調べて見ると学術的にはサケもマスも一緒のようです。
では、カラフトマスの様子をゆっくりご覧ください。

水深が浅いので自然光が入り、その体色の美しさに見とれてしまいます。海からこの地点までが近いので、傷ついた子が少ないのも知床ならではでしょう。そして、体長は50㎝ほどあるので迫力満点! 何時間見ていても飽きません(実際数時間、僕は楽しくて顔を付けっぱなしでした)。

僕もこのようなスタイルで撮影させていただきました。じっとしていると向こうから近くに寄ってきてくれます。最初は圧倒されていましたが、見ているとちょっとずつ愛が芽生えてきます?

また、浅い穏やかな場所では、産卵活動も行われていました。

手前にいる2匹はメスで、産卵場所の取り合いで戦っていました。そして奥でそれを見守るオス。この写真、よく見ると手前にもう一匹小さいお魚が……。この子はオショロコマという魚で、日本では北海道にしか生息していない珍しい魚なのです。
普段彼らはこの川でのんびり生活しているのですが、この時期だけはマスの大群に追われておろおろしていました(笑)。

そして、うまくペアリングできると、このように産卵行動に入ります。残念ながら産卵シーンには出会えませんでしたが、生まれてから降海して2年後にまたこの川に戻って来て、産卵後彼らの生涯は幕を閉じます。その一瞬の命のきらめきはとても美しく、いつまででも見ていたくなります。

産まれたばかりのカラフトマスの卵です。
初めてのカラフトマスの遡上シーンは、迫力と、美しさと、感動にあふれていました。
こんな機会を与えてくれた西村さんに感謝しかありません。何年も流氷ダイビングをこの地で続けてきたからこそ、地元の方々の信頼と協力を得ることができて、カラフトマスの観察も実施できています。そんな感謝の気持ちも忘れずに、謙虚にカラフトマスと向き合いたいですね。

知床の海は、一面にアマモが広がる生物の宝庫だった

さて、知床まで来て川だけではもったいないですよね。なんと今回海にも潜ることができました!
天候の関係で1ダイブだけでしたが、軽く海の中も紹介したいと思います。
流氷の時期には潜ったことがあるのですが、この時期に潜るのは初めて、どんな世界が広がっているのか興味津々、海でのダイビングも今回の旅の楽しみの一つでした。

この日はあいにく雨模様。冬は真っ白だったこの場所も夏に来ると雰囲気が違い、その違いもまた楽しいものです。タンクを担いでここからビーチエントリーです。

エントリーをすると浅い場所はアマモがぎっしり生えています。
そのアマモでさっそく生物を発見!

その名も「ホッカイエビ」、名前の通り北の海にすむエビ。いきなり見たことのない生物に出会いテンションも上がります。北の海でしか見られない生物に会えるのも、このダイビングの楽しみであります。

こんな感じで岩場には貝やウニがぎっしり! 命の濃さを物語っていますよね。
こんな岩場やダイナミックな地形の間を、生物を探しながら潜っていきます。
西村さんたちもまだあまり潜ってないそうで、まさに未知の海。良い響きです。
どんな生物に出会えるのかワクワクしますよね。今回は、水温20度、透明度10m、最大水深10mほどで流れもなく、のんびりと潜れました。

それでは、この時に出会った生物たちの写真をご覧ください。

これもアマモに隠れていた、とても小さなヒメイカちゃん。

こんなお花のような生物も壁にたくさんいて、思った以上に海の中はカラフルでした。

印象的だったのが、ヤドカリの数がすごかったこと。ほんとにどこにでもいるんです、こんなに見たことありません! この子はオホーツクホンヤドカリ君。ウニの殻に登っていました。

この子もちょくちょくお目にかかった、イトヒキカジカ君。
背景のエメラルドグリーンの海、知床の海の命の濃さを感じる色です。

普段は流氷の時期にしか潜れないこの場所を潜れるというのは、なんとも特別感を味わえます。また北の海のかわいい生物たちに会えるのも魅力ですね。
来年はじっくり海も潜ってみたいです! いやー海も川も楽しいですね!

グルメも北海道のダイビング旅では欠かせない

そして忘れてはならないのがグルメです(写真は携帯です……。雑ですみません……)。
今回お世話になった、ウトロの宿「世界自然遺産の宿 しれとこ村」のご飯はほんとにやばいです! 海鮮を中心に、地元の食材を使った料理を出してくれます。しかもボリュームもすごいです!
この時は、毛ガニをトッピング。でもこれが普通の量なのです。すごいでしょ?
温泉も気持ちよく最高! 冷えた体が芯から温まります♪

そして、忘れてはならないのがこれ!

僕の大好きなソフトクリーム! これは道の駅で販売していた、コケモモソフトミックス。
ちょっと酸味もあり、これはほんとにおいしかったので皆さんもぜひ!
知床では食もぜひ楽しんでくださいね。

そして、今回案内してくれたのはこのお二方!

左が、「ロビンソンダイビングサービス」の西村浩二さん。そして右がご存じ、「ダイビングサービス グラントスカルピン」の佐藤長明さん。この2ショップがタッグを組んで、「カラフトマス遡上見学ツアー」を行います。
僕も大好きなお二人、北海道最強タッグですよね。取材時も笑いが絶えませんでした。
期間は、9月の中旬~下旬の期間限定の開催となります。
各ショップに直接お問い合わせください。

遡上ツアー以外にも、知床の海でのダイビング、船の上からのヒグマの観察やトレッキングも楽しめる。秋の北海道は見たいものが多すぎますので、余裕を持った旅程を組んでくださいね。

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PROFILE
沖縄座間味島でのダイビングガイドを経て、写真の世界へ。
広告カメラマンの助手を経てダイビング雑誌の出版社に入社し、その後独立。
現在、水中はもちろん、ボーダレスに地球のあらゆるところで「しあわせなとき」をテーマに撮影を続ける。
その独特の淡い写真表現が特徴。 

著書に写真集「ALOHERART」「LinoLino」「きせきのしま」「FanataSea」「しあわせのとき」、最新写真集「Life is Beautiful」が発売中!
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