和歌山・白崎海洋公園をもう一度ダイビングの海へ。「白崎オーシャンフェス」に込めた思い

白崎海洋公園
白い石灰岩に囲まれた景勝地、白崎海洋公園。西日本最大級とも言われたそのダイビング施設は、2018年9月、和歌山県由良町を襲った台風によって壊滅的な被害を受けた。
その後、かつて「ダイビングの拠点」として親しまれた場所は、白崎海洋公園はキャンプ場と道の駅を中心とする施設へと姿を変えていく。
一方で、その海を案内し続けるのが、白崎でダイビングショップ「スクーバサポートサービスTRYS」を営む、代表の石引 伸さん(以下、石引さん)だ。石引さんは、施設が変わった後も、地道に白崎の海に潜り続けてきた。
そうした歩みが、2026年7月に開催される「白崎オーシャンフェス」へとつながった。
「白崎の海は、もう安心して潜り、楽しんでいただける環境になっていますよ」と石引さん。
このイベントは、白崎海洋公園の海をあらためて多くの人に知ってもらうための、新たな節目でもある。ダイバーはもちろん、地域の人や親子連れも巻き込みながら、これからの白崎の海をみんなで育てていく。
いざ、白崎海洋公園“リスタート”。そこへたどり着くまでの歩みと、これからのビジョンを聞いた。
「白崎オーシャンフェス」開催
新しい白崎海洋公園のはじまり
大阪のダイビングショップに勤めた後、2003年にスクーバサポートサービスTRYSを創業した石引さん。2007年には、白崎海洋公園から車で約5分の大引地区にダイビングショップを構えた。
「大阪のショップで働いていた時、よく白崎海洋公園で講習をしていました。和歌山で起業しようと思った時、大阪から日帰り圏内の海がいいと思ったんです」。
それから、白崎海洋公園の海に潜り続け、2018年には自社船を持ちボートダイビングをスタート。白崎海洋公園に台風が直撃したのは、その矢先だった。
プールを含むクラブハウスは全壊。地下にあった浴室や更衣室も天井近くまで海水に浸かり、施設全体が甚大な被害を受けた。

2018年の台風によって被害を受けた白崎海洋公園のクラブハウス
「幸い、私たちの店舗は大きな被害を受けずに済みました。しかし、白崎海洋公園の被害状況を目の当たりにしたときは、その被害の大きさに言葉を失いました。まさか、あれほど多くの人に親しまれてきた施設が、一夜にしてあのような姿になるとは…」。
そこから白崎海洋公園は、キャンプ場と道の駅を中心とした施設として活路を見出す。
「ちょうどキャンプブームという追い風もあり、多くの来園者でにぎわう施設へと生まれ変わっていきました。それまで『白崎海洋公園=ダイビング施設』というイメージが強かったのですが、この時期を境に、新しい形の白崎海洋公園へと歩み始めたのだと思います」

キャンプ場として賑わう白崎海洋公園
一方、海そのものは何も変わっていなかったと石引さんは言う。白崎の海に潜り続けるうち、次第に、石引さんの中で「もう一度この海でダイビングができる環境をつくれないだろうか」という思いが強くなっていった。
「以前のような大規模な施設をそのまま復元することは現実的ではありませんでした。そのため、クラウドファンディングで多くの方々にご支援いただきながら、必要なものを少しずつ整え、潜れる環境づくりを進めていきました。町役場の皆さんにもシャワー施設などの整備を進めていただき、本当に多くの方の協力があって現在の形があります」。




実際、2022年に行われたクラウドファンディングは目標を上回る127%の支援総額を達成。この話題で、白崎海洋公園が潜れるようになっていると知ったダイバーも多いだろう。しかし、目指したのは、かつての白崎海洋公園とはまた一味違ったものであった。
「今ある環境の中で、安全に、また白崎の海で潜りたいと願うダイバーの方に『新しい白崎』をつくることでした。そうした思いを共有しながら、一歩ずつ環境を整え、今日まで歩んできました」。
そして2026年7月、遂に「白崎オーシャンフェス」を開催するところまで辿り着いたのだ。
当日は、ダイバー向けの器材モニター会をはじめ、親子写真教室やクラフト体験教室など、一般来場者も楽しめる陸上プログラムも用意。さらに会場にはキッチンカーも並び、海に潜る人も、陸で過ごす人も楽しめるイベントになりそうだ。
「じわじわと土台を作りながら、みんなが恩恵を受けられるような形にしたいですね。ここから新しい白崎が始まっていくーーそんな節目にできたらと思います。このようなイベントを通じ、みんなで新しい白崎の海を育てていきたいです」。
これまで、一歩ずつ地道に積み重ねてきた石引さん。これが、また一つターニングポイントとなるかもしれない。
四季折々の魅力を放つ
白崎海洋公園の水中景観
ここまで石引さんを惹きつける白崎海洋公園の魅力は、やはり海にある。
「冬にはホンダワラやワカメなどの海藻が一面に広がります。漁師さんに聞いたんですが、水温14度以下にならないとワカメって育たないそうなんです。冬に水温がぐっと下がる白崎の海だからこそ、水中ですごく四季を感じるんですね。夏と冬で劇的に海が変わります」。

一面に海藻が広がる
春にはアオリイカだけでなく、ヤリイカやコウイカの産卵も観察できるそうだ。季節来遊魚がやってくる夏には、クマノミの赤ちゃんがお目見えする。そして、夏限定のダイビングポイント「白崎水中洞窟」も見逃せない。
「洞窟内に差し込む太陽の陽射しが、まるで光のカーテンのようにダイバーを包み込む神秘的な場所です」。

光が差し込む白崎水中洞窟
見どころいっぱいの白崎海洋公園だが、今、石引さんが注目しているのは、秋に観察できる“かもしれない”、100匹を越えるムレハタタテダイの群れ。
「例年は10匹ぐらいの群れだったんですが、20匹に増え、去年、一昨年ぐらいからは100匹ほどに!しかも、水深10mくらいなので、スノーケリングでも見られるかもしれません。今年どうなるかはわかりませんが、圧巻ですよ。同じく秋は、ブリ・カンパチなどの迫力あるシーンに出会えることもあるんです」。

ムレハタタテダイの群れ
四季折々の発見があり、初心者からベテランダイバーまで楽しむことができる白崎の海。石引さんは「ぜひ、プロのインストラクターやガイドの方々に、新たな魅力を見つけて、一緒に盛り上がって欲しい」と続ける。
ちなみに、ダイビングショップの方がゲストと一緒に白崎海洋公園エリアで潜る場合、当日、対面でのコミュニケーションはなく、LINEでのやりとりのみ。ショップ側が潜りやすいレギュレーションを整えている。
また、これからは学生のダイビングサークルの受け入れも検討しているそうだ。
「実はまだ、学生さんのダイビングサークルの受け入れは行なっていないのですが、白崎オーシャンフェス2026では、はじめて受け入れてみようと思っています。そのため、大学ダイビングサークルと学生ダイバー向け特別プランも用意しました。(詳細は白崎ダイビングセンターに問い合わせ)トレーニングの一環で、コストを下げた形で学生サークルの方々に潜っていただきたいですね。練習を重ねるうちに、白崎海洋公園をホームのように思ってくれたらな、と。社会人になってなかなか潜れなくても、少し余裕が出た時に『またあそこで潜りたいな』と思い出してもらえるような付き合いができたら嬉しいですね」。
白崎海洋公園の海のポテンシャルを肌で感じているからこそ、自らだけでなく、もっと幅広いダイバーに訪れてもらいたい。その純粋な思いが、石引さんを今も突き動かしているのだ。
おわりに
ダイビングショップが使いやすい海であること。学生が成長できる海であること。地域の人も楽しめるイベントであること。
「みんなで新しい白崎の海を育てたい」という思いが、石引さんの真ん中にある。
ぜひ、白崎オーシャンフェスに参加して、新しい白崎を体感してみてはいかがでしょう。

石引 伸さん
スクーバサポートサービスTRYS
大阪から約90分。和歌山県白崎海洋公園の大引エリアのビーチからわずか30秒のロケーションに位置するダイビングショップ。自社ボートを所有し、大引エリアのポイントまでは5分と船酔い知らず。少人数で手厚い講習が、関西ダイバーたちに支持されている。

スクーバサポートサービスTRYS 店外観

スクーバサポートサービスTRYS 店内
Sponsored by SCUBA SUPPORT SERVICE TRYS

