水中でレギュレーターのスイベルOリングが突然破裂

メンバーが、DANアメリカに寄せたさまざまなトラブルの報告。この報告を専門家が分析・評価して、ダイビングの安全のために役立てています。DANアメリカの協力により、DAN JAPAN会員のみなさまに順次ご紹介します。

※本記事はDAN JAPANが発行する会報誌「Alert Diver」2020年6月号からの転載です。

水中でレギュレーターのスイベルOリングが突然破裂

スイベル付きレギュレーターでダイビングをしていると、突然大きな音と叫ぶような声が聞こえた。レギュレーターを外してみると、スイベル部分から空気が漏れていて……。スイベル付きレギュレーターを使用した水深15mのダイビングで起こったケースです。

報告されたケース

ガイドがスティングレイ(アカエイ)を見つけたのは、水深14m、潜降開始から6分後のことでした。私はガイドを追いかけ3分後には水深20m に達し、そこで1分間スティングレイを撮影し、その後浮上を開始。3分後には水深17m、そしてその3分後に15mまで浮上した時(合計潜水時間=18分)、何かがぶつかるような大きな音と叫ぶような声が聞こえたのです。

周囲を見回すと、バディは私より上の水深10m辺りにいて、写真を撮っているのが見えました。水中でガイドが何かを見せてくれた場合、私はガイドを臨時のバディとしてついて行き、私のバディは後ろからついてくる、というように決めてありました。

叫ぶような声がどこからするのか探していると、自分のレギュレーターから大量に泡が漏れていて、それが「叫び声」のもとだったことに気付きました(上写真参照)。何が起きているのか確認しようと口からレギュレーターを外すと、スイベル部分から空気が漏れているのを確認できました。それから私はガイドの方へと泳ぎ始めました。

ガイドはレギュレーターを手にして泳いでくる私を目にして、素早く近寄ってきてすぐに自分のレギュレーターを渡してくれました。そうしている間にも、私のタンクの空気は減少し浮き気味になってきたので、ガイドがフィンを広げて抵抗を作ることで、浮上速度を落とすよう試みました。この間、全体で2分はかからなかったと思います。ガイドに助けを求める直前、大きく息を吸い、冷静に対応をしました。

気になるのは15リットルのアルミタンクの浮力で、あいにくタンクは撮影の為に低い位置につけていたので、自分の手が届かないことは判っていました。 撮影とはいえ、手が届く範囲にファーストステージをセッティングしておくべきだったのです。

水面にはクルーズ船のゴムボートが待機していたのでそれに乗って私は船に戻りました。まず30分程横になり、それから少量の水を摂った後に器材を確認しようと、レギュレーターのすぐ横にあるスイベルを外すと、Oリングがはみ出していることに気づきました。

そこで、この器材の故障について、どこに原因の可能性があったのかと考えることに。器材は旅行前にオランダ最高のダイビングストアで修理・点検を受けていました。私は、潜水前のバディチェックより前に自分で各器材の確認をするほど、器材に対しては普段からすごく慎重です。ひとつだけ可能性として思いつくのは、最後に潜った際にスイベルを回しても抵抗が無い時があったことで、それが問題になるとは思いもしませんでした。

現在記入しているこのネット上の報告書には、器材の詳細を書くようになっています。しかし、このスイベルにはなにひとつ情報の記載がされていないため、私は何も記入することが出来なかったのです。器材を購入した時に、スイベルについて説明書やその他の資料を受け取った記憶もありません。

現状、スイベル付きレギュレーターが多くの器材会社で販売されています。今回と同様の事故は今後も起きるだろうし、ダイバーには注意を呼びかける必要があると、この件を経験したことで強く感じました。私はもちろんスイベルを取り外しました。もう二度と使わないことでしょう。

その後私は、スイベルの回転抵抗をチェックするべきだ、という注意がダイバーに広がることを願う想いから、オランダのダイビング雑誌に今回の出来事についての記事を寄稿しました。

そして、もう一つ注意点があります。それはウエイトについて。私はこの時、最低限のウエイトだけを使用していました。タンクがほとんど空になっても水中でいられるように調整していましたが、完全に空のタンクの場合には不十分なウエイトの量だったのです。この経験から、余分なウエイトを少しつけてゆくのも必要だと強く感じました。

専門家からのコメント

スイベルは本来、口の中にマウスピースを簡単に保持することを目的とした器材です。セカンドステージのレギュレーターと中圧ホースの間にはめ込む空洞の可動部品で、最大360度の回転を可能にします。こういった類の部品を器材に加えた場合、故障する可能性のある部分が増えることになります。また、器材の初期モデルでは、不具合は必ずしも珍しいことではありません。

スイベルに使用する素材の質の向上と、設計の改善によって故障はほとんどなくなりました。しかし、可能性がまったくなくなることはありません。すべての不具合を予防できる訳ではないからこそ、ダイバーは緊急手順を準備する必要があります。

このケースの場合、タンクバルブを閉め、バディから空気をもらうことが安全な浮上に役立つでしょう。しかし、このダイバーはタンクバルブに手が届かず、タンクが空になるのを防ぐことが出来ませんでした。その結果、空のタンクによって浮力トラブルを起こし、最適な浮上速度より早く浮上する原因となりました。このインシデントが傷害に繋がらなかったのは、運が良かったからです。

今に始まったことではありませんが、生命に関連する装備すべてに、遮るものなく簡単に手が届くということを確認するのは、とても良い習慣です。

Dr. Petar J. Denoble, MD. D.Sc.

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