【フリーダイビング世界大会、日本人選手結果】アジア記録、日本記録更新!

6月18日から6月25日にかけて、ヨーロッパの南東部、ブルガリアのブルガスでフリーダイビングプール種目の世界選手権「AIDA World Championship2022 Burgas」が開催された。2年に一度開催される世界選手権は、前回の2020年がコロナウイルスにより中止となったため、4年ぶり。29カ国から記録保持者も含む130人以上の選手が参加し、日本からは男女合わせて20名の選手が参戦した。そこで今回は、熱戦を繰り広げた日本人選手と各日のハイライトをお届け!
※AIDAとは、世界最大のフリーダイビング記録認定機関。本大会もAIDA主催で行われた。

1日目 DYNB(2枚フィン平行潜水)

6月20日、いよいよ1日目が開幕。本大会には世界選手権初参加の日本人選手も多く、緊張感漂う中、朝を迎えた。会場のプール水温は26度で、一般的な日本のプールと比べ若干低め。前日の公式練習での最終調整も経て、各選手が本大会1発目の競技に挑んだ。

2枚のフィンを履いて泳ぐ距離を競うDYNB1日目の結果は、なんと森村舞選手がいきなりの207mを叩き出し日本記録更新!日本チームにとって、幸先の良すぎる結果だ。しかし、競技後半はスタート時間が1時間遅れるというアクシデントが発生。そんな中でも日本人選手たちは自身の泳ぎに集中し、力を出し切った。ベテランの尾関靖子選手も攻めの姿勢を見せたが惜しくもレッドカードの判定、だが太田陽子選手も自己ベストを更新するなど全体的には多くの選手が大会初日に良いスタートを切った。

サポートの鈴木愛選手と競技後の太田陽子選手

サポートの鈴木愛選手と競技後の太田陽子選手

日本人選手結果

大井沙矢加 120m white 成功
米澤 和昭 134m white 成功
乾 昂行 130m white 成功
森村舞 207m white 成功 アジア記録
山下あるな 160m red 失格
中野敦 151m white 成功
太田陽子 158m white 成功
榊原理矢 162m white 成功
阿部 恭祐 154m white 成功
大井慎也 169m white 成功
矢部 紀行 154m red 失格
尾関靖子 209m red 失格
市原由利子 177m white 成功
総合順位

男子
Petar Klovar(クロアチア)250m
Yueh Shiang Hsu(チャイニーズ・タイペイ)240m
Karol Karcz(ポーランド)232m

女子
Magdalena Solich-Talanda(ポーランド)236m
Kateryna Sadurska(ウクライナ)216m
Lidija Lijic(クロアチア)209m

2日目 DNF (フィンなし平行潜水)

6月21日、選手たちは徐々に大会の雰囲気に慣れてきた様子。2日間連続で出場する選手もそれぞれコンディションを整え、最高のパフォーマンスを発揮するために準備をする。

フィンを履かずに、水中を手の掻きと足の蹴りだけで泳ぐDNFの2日目は、日本チームに目立った記録はなかったものの、次の種目の自信に繋がる納得の結果を残した。また、世界選手権初出場の杉谷大地選手も大舞台で果敢にチャレンジし、チームメイトからもその姿を讃えられた。海外選手で驚きの記録を叩き出したのはポーランドのJulia Kozerska選手。なんと本大会の男子選手よりも高記録の209mでAIDA世界記録を樹立した。

チャレンジするもレッドカードの判定だった杉谷大地選手と米澤和昭選手

日本人選手結果

米澤和昭 99m red 失格
矢部 紀行 82m white 成功
杉谷大地 89m red 失格
阿部恭祐 106m white 成功
森村舞 157m white 成功
山下あるな 115m white 成功
大井慎也 154m white 成功
中野 敦 100m white 成功
太田陽子 103m white 成功
榊原理矢 136m red 失格
尾関靖子 140m white 成功
市原由利子 140m white 成功
総合順位

男子
Guillaume Bourdila(フランス)193m
Karol Karcz(ポーランド)185m
Michal Bochenek(ポーランド)159m

女子
Julia Kozerska(ポーランド)209m
Magdalena Solich-Talanda(ポーランド)180m
Kateryna Sadurska(ウクライナ)171m

3日目 STA (息止め)

6月23日。オフィシャルトレーニングを1日はさみ、迎えた競技3日目は、その場でどれだけ長く息を止められるかを競うSTA種目。世界選手権初出場の鈴木愛選手、飯島久美子選手、横田太郎選手も確実にホワイトカードを取り、晴れやかな世界デビューを飾った。残すもあと1日。

鈴木愛選手ホワイトカード

鈴木愛選手ホワイトカード

日本人選手結果

米澤和昭 5分11秒 white 成功
鈴木愛 5分00秒 white 成功
大井沙矢加 6分14秒 white 成功
尾関靖子 5分13秒 white 成功
中野 敦 6分26秒 white 成功
横田太郎 5分25秒 white 成功
山下あるな 5分08秒 white 成功
奥山まどか 5分35秒 white 成功
市原由利子 6分58秒 red 失格
飯島久美子 5分14秒 white 成功
阿部 恭祐 5分41秒 white 成功
矢部紀行 5分27秒 white 成功
大井慎也 5分33秒 white 成功

総合順位

男子
Valdemar Karlsson(スウェーデン)08:58
Laurent De Beaucaron(フランス)08:41
Ming (William Joy) Jin (中国)08:37

女子
Sylvie Gilson(フランス) 07:49
Julia Kozerska(ポーランド)07:41
Agnieszka Kalska(ポーランド)07:14

4日目 DYN(1枚フィン平行潜水)

6月24日、ついに最終日。これまでの戦いを経て、日本チームは“ONE TEAM”となっている。大会最終日はフリーダイビングで花形とされる、モノフィンを使っての潜水で競うDYN。昨日で競技が終わった選手は、競技を控える選手が少しでも高記録を出せるようにサポートへ回り、一丸となって戦う。団結した日本チームの応援もあり、尾関靖子選手が214mのアジア記録を更新し、女子3位を獲得!そして、その流れに乗るかのように、日本チームキャプテンでもありベテランの大井慎也選手も日本記録を見事更新!さらに、フランスのGuillaume Bourdila選手は人類で初めて300mを折り返し、301mという信じられないAIDA世界記録を更新した。

競技後の尾関靖子選手

競技後の尾関靖子選手

競技後の大井慎也選手

日本人選手結果

杉谷大地 114m white 成功
大井沙矢加 184m white 成功
森村舞 200m white 成功
馬崎直 155m red 失格
山下あるな 170m white 成功
市原由利子 177m white 成功
三野夏実 150m white 成功
阿部恭祐 200m white 成功
矢部紀行 150m white 成功
大井慎也 235m white 成功 日本記録
尾関靖子 214m white 成功 アジア記録
総合順位

男子
Guillaume Bourdila(フランス)301m
Yueh Shiang Hsu(チャイニーズ・タイペイ)259m
David Custic(クロアチア)258m

女子
Magdalena Solich-Talanda(ポーランド)265m
Julia Kozerska(ポーランド)260m
尾関靖子(日本)214m

選手コメント

DYNでアジア記録を更新し、3位に輝いた尾関靖子選手と、同じくDYNで日本記録を更新した日本チームのキャプテン大井慎也選手に大会を振り返りそれぞれコメントをいただいた。

尾関選手コメント

編集部

素晴らしいアジア記録おめでとうございます!CYNBは悔しい結果でしたが、そこからどのように切り替えていったのでしょうか。

尾関選手

大会初日のDYNBは記録や順位に拘り過ぎた結果、失敗してしまったので、その後の種目では自分の泳ぎにフォーカスすることを心がけ、立て直していきました。最終日のDYNではイメージ通りの泳ぎができ、結果的にアジア記録、3位入賞となりました。私はこの過程はまさにフリーダイビングそのものを現しているなと感じていて、競技を通じて今の自分を知ること、周囲との競争ではなく自己のパフォーマンスを高めることが結果に結びつくのだと再認識しました。

編集部

本大会を振り返ってみて、会場の雰囲気や日本チームの様子はいかがでしたか?

尾関選手

4年ぶりの世界選手権でしたが、各国の選手はフレンドリーな方も多く、フリーダイバーならではの明るさ、穏やかさの中楽しく競技生活を送ることができました。また、今回の日本代表メンバーは初めて世界選手権に出場する方も多くいましたが、それを感じさせないパフォーマンスを発揮し、さらに森村舞選手やベテランの大井慎也選手の入賞など、日本チームの層の厚さを示すことができたと考えています。チーム内では早い段階で協力関係ができていて、”ONE TEAM”を合言葉に、お互い助け合い、連携して競技に挑む、非常に良い雰囲気が生まれていました。日本のチークワークは海外選手からも高い評価をいただいており、このメンバーで大会に出場できたことを誇りに思います。

表彰式の小関靖子選手

表彰式の小関靖子選手

大井慎也選手

編集部

日本記録おめでとうございます!本大会に向けて、どのような意識で練習に取り組まれてきたのでしょうか。

大井選手

コロナ禍でプールが閉鎖になり、練習環境としては厳しいものがありました。しかしその時間で、これまでの練習内容をしっかり振り返り、見直すことができました。今まで足りていなかったトレーニングをすることで、基本的な潜水能力を伸ばすことができ、DNF5位、DYNは日本記録更新7位入賞の好結果に繋がったと思います。

編集部

本大会を振り返ってみて、会場の雰囲気や日本チームの様子はいかがでしたか?

大井選手

2018年以来の世界選手権ということで、かなり盛り上がりました。久しぶりに会う海外選手とも話をすることができました。日本代表チームについては、20名の過去最大規模でした。各選手が自立し、お互いに協力しあい、チームワークは抜群。大会期間中、とても雰囲気の良い中で競技を続けることができました。日本チームの成績はホワイトカード41、入賞10、アジア・日本記録3と大活躍でした。

日本チーム

チームワーク抜群の日本チーム

静寂と歓声が入り混じる、フリーダイビングの大会。日本人選手も大いに活躍し、涙あり笑顔ありの4日間が幕を閉じた。本大会では、2つのAIDA世界記録が誕生した。国別のメダル数は、ポーランド金メダル3個、銀メダル4個、銅メダル3個。 フランスは金メダル3個と銀メダル1個。クロアチアは金メダル1個と銅メダル2個。スウェーデン金メダル1個。チャイニーズタイペイが銀メダル2個。中国・日本が銅メダル1個を獲得した。今後も日本人選手の活躍に注目していきたい。

日本代表メンバー 一覧
女子
尾関 靖子 / 市原 由利子 / 大井 沙矢加 / 森村 舞 / 三野 夏実 / 山下 あるな / 奥山 まどか / 太田 陽子 / 榊原 理矢 / 鈴木 愛 / 飯島 久美子
※計11名男子
大井 慎也 / 阿部 恭祐 / 矢部 紀行 / 馬崎 直 / 杉谷 大地 / 石田 正樹 / 中野 敦 / 米澤 和昭 / 乾 昂行 / 横田 太郎
※計10名
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PROFILE
0歳~22歳まで水泳に没頭し、日本選手権入賞や国際大会出場。新卒で電子部品メーカー(広報室)に入社。同時にダイビングも始める。次第に海やダイビングに対しての想いが強くなりすぎたため、2021年にオーシャナに転職。ライターとして、全国各地の海へ取材に行く傍ら、フリーダイビングにゼロから挑戦。1年で日本代表となり世界選手権に出場。現在はスキンダイビングインストラクターとしてマリンアクティビティツアーやスキンダイビングレッスンを開催。
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