フリーダイビング初心者から一人前への道! マスターフリーダイバーコースレポート
「海にもっと深く潜りたい」
「記録を伸ばしたい」
「もっと長く呼吸を持たせたい」
フリーダイビングをしている方なら誰しもが思うはず。ダイビング教育機関PADIが提供する「マスター・フリーダイバー・コース」は、そんなダイバーの目標を達成するために、スキルや知識をブラッシュアップするアマチュアフリーダイバーの最上位のコース。
「マスター・フリーダイバー・コース」の目的や概要、また実際にどんなことを学び、求められるのか。フリーダイビング・スキンダイビング専門店「トゥルーノース沖縄」にてocean+α編集部のスイカが受講してきた体験談を交えて紹介していきます!
目次
「マスター・フリーダイバー・コース」とは
「マスター・フリーダイバー・コース」の大きな目的は一人前のフリーダイバーになるということ。前資格である「フリーダイバー」と「アドバンスド・フリーダイバー」よりも高い実技スキルが求められるのはもちろん、「フリーダイバー・コース」の認定アシスタントとして、チームを監督できるスキルや立ち居振る舞いまでも求められる。
認定基準は以下のとおり。
コース名 | 実技達成条件 | 参加条件 | 必要日数(目安) |
---|---|---|---|
フリーダイバー | STA※1 1分30秒 DYN※2 25m(水平距離) CWT※3もしくはCWTB※4 10m(深度) バディスキルおよびブラックアウト、LMC※5に対するレスキュースキル 200m・スイムもしくは300m・スノーケリング |
資格:シュノーケリングの経験があり、数m潜ったことがある。 年齢:15歳以上 |
事前学習:半日 座学・プール:1日 海洋:1日 |
アドバンスド・フリーダイバー | STA 2分30秒 DYN 50m(水平距離) CWTもしくはCWTB 20m(深度) バディスキルおよびブラックアウト、LMCに対するレスキュースキル ノーマスクスイムや片フィンスイムなどのエマージェンシー・スキル |
資格:PADI フリーダイバー(相当する資格でもOK) 年齢:15歳以上 |
事前学習:半日 座学・プール:1日 海洋:1日 |
マスター・フリーダイバー | STA 3分30秒 DYN 70m(水平距離) DYF※6練習(距離設定なし) CWTもしくはCWTB 32m(深度) バディスキルおよびブラックアウトに対するレスキュースキル |
資格:PADI アドバンスド・フリーダイバーおよび過去2年以内のEFR一次ケア(CPR)コースの修了(相当する資格でもOK) 年齢:18歳以上 |
事前学習:半日 座学・プール:1日 海洋:2日 |
※1 STA(スタティック・アプネア):呼吸を止めて水面に浮き、その時間を競う。
※2 DYN(ダイナミック・アプネア・ウィズフィン):呼吸を止めてフィンをつけた状態で水平方向に何メートル潜水できるかを競う。
※3 CWT(コンスタント・ウエイト・ウィズフィン):呼吸を止めてフィンをつけた状態で、自身の泳力だけで垂直方向に何メートル潜水できるかを競う。潜水中にウエイト量を変えたり、ガイドロープを手繰ってはいけない。
※4 CWTB(コンスタント・ウエイト・ウィズバイフィン):呼吸を止めてフィンをつけた状態で、自身の泳力だけで垂直方向に何メートル潜水できるかを競う。CWTと違いモノフィンの使用・ドルフィンキックが禁止されており、2枚フィンでバタ足で泳がなくてはならない。潜水中にウエイト量を変えたり、ガイドロープを手繰ってはいけない。
※5 LMC(ロスト・モーター・コントロール):極限まで息を堪えてしまうことで、浮上直後に脳の酸素欠乏が起き、身体の動きがコントロールできなくなる現象。数秒で回復することもあれば、そのままブラックアウトすることも。
※6 DYF(ダイナミック・アプネア・ウィズアウトフィン):呼吸を止めてフィンをつけずに水平方向に何m潜水できるかを競う。
「マスター・フリーダイバー・コース」の内容
「マスター・フリーダイバー・コース」の内容は、学科、プール講習、海洋講習と大きく3つに分かれる。学科ではeラーニングと座学、自主学習。プールと海洋ではそれぞれの条件を達成するためのトレーニングとチェックが行われる。
「マスター・フリーダイバー・コース」学科
eラーニングと座学
学科では、eラーニングで自習したあと、座学でさらに詳しく学習する。「マスター・フリーダイバー・コース」の達成条件の一つは、水深32mまでのCWTかCWTBができること。そのため学科では、水深が深くなるにつれて起こる体の変化を知り、効率的に潜る方法や、リスク、リスクを回避するための方法を学んでいく。
フリーダイビングの生理学:マウスフィル圧平衡、ガス昏睡、減圧症、食生活
フリーダイビングの器材:リキッドゴーグル、ノーズクリップ
フリーダイビングのスキル:アドバンスド・リラクゼーション、プラナヤマ(呼吸法)、機能的残気量(FRC)トレーニング
ある程度フリーダイビングをしている方であれば、先輩たちから「マウスフィル」や「FRC」といった単語を聞いたことがあるだろう。これらは深く潜るためのテクニックや練習の方法で、「マスター・フリーダイバー・コース」ではこれらを身につけていくのだ。
マスター・フリーダイバー課題
これまでのコースと大きく違うと感じたのが、インストラクターと課題を設定し研究を行い、発表をする「マスター・フリーダイバー課題」。自らの興味がある分野を設定し、フリーダイビングとその分野の関連性などを研究、応用、そして共有する能力を伸ばすことを目的としている。
テーマは「フリーダイビング用ダイブコンピュータの比較」、「カウンター・バラスト・システムのデザインと作図」、「フリーダイビングの歴史」など上級レベルのフリーダイビングに関するものであればOK。私は「フリーダイビングと食生活」というテーマで、普段の自分の食生活の見直しを行い、フリーダイビングに適した食事のプランを作成した。
「マスター・フリーダイバー・コース」プール講習
プール講習の達成条件は、STAで3分30秒以上、DYNは70m以上。そしてDYFを実施すること、バディスキルおよびブラックアウトに対するレスキュースキルが基準に達していることの4つが設定されている。一日で達成できることもあれば、数日かかることもある。
普段から海でトレーニングをしている私、余裕だろうとたかを括っていたところ、STAで大苦戦。アドバンスコースの際に3分36秒を記録したため、できるはずと思い込んでいたので、できないとさらに焦る。
体力の消耗がまだないだろうと、一番初めにSTAを行ったが3回やってもまったく達成できず、仕方なく他の項目から行うことに。
DYN70mを達成しDYFを実施。レスキュースキル、サポートスキルも復習しながら実施し、クリア。レスキューではバディ曳航をして引き上げをしたあと、酸素の吸入まで行うのがアドバンスの時と異なった点。サポートではアドバンスと同様STAでの声掛けや、DYNをするバディの隣を泳いで安全管理を行った。
そして最後にまたSTA。どうしても1日でプール講習を終えたい…と焦る気持ちを抑えつつ再チャレンジ。
果たして結果は……。
達成しました!
3回目で(笑)!!
はい。つまり前半に実施した3回と合わせると計6回。場所を変えたり、考えることを変えたり…あの手この手を使って達成。むしろ疲れてできないんじゃないかというレベルだったのによくできたなと。これもひとえにサポートしてくれた瑞希さんのおかげでしょう…。本当は20秒くらいあるのに「あと10秒〜!9〜8〜」と、ゆっくりカウントダウンしてくれたので耐えられました(笑)。
「マスター・フリーダイバー・コース」海洋講習
海洋講習の達成条件はCWTもしくはCWTBで-32m。プールと同様バディスキルおよびブラックアウトに対するレスキュースキルが基準に達していることも必要だ。こちらもプール講習と同様にいきなり達成できるものではないので、トレーニングを重ねて-32mを目指そう。
私はというと、前年から繰り返し繰り返し水深32mへのCWTBをしていたため、不安はなかった。やはり反復練習が大事だ。
なお、「マスター・フリーダイバー・コース」ではお手本レベルの潜り込みと姿勢が求められる。なんと言っても、フリーダイバーコースの認定アシスタントができる一人前のフリーダイバーですからね…。この時の潜り込みが一番緊張したかもしれない(笑)。
一人前のフリーダイバーなので、準備や片付けも自分でできるように練習します。
一人前のフリーダイバーなので、バディのサポートやアドバイスもしっかりします。
レスキューは水深15mからの引き上げ。レスキュー呼吸をしながら曳航し、船に引き上げてから酸素吸入を行う。
学科で学んだ、マウスフィルやFRCも実践していく。
「マスター・フリーダイバー・コース」を受けてみて
コースを受けてみて一番自分が変わったと思うのが「意識」の部分。「一人前」ってなんなんだろう…と思いながらコースを受けていたが、それをずっと意識することで、周りのダイバーの行動を見て準備をしたり、バディの様子を見て声をかけたりと自然とするようになっていった気がする。思い返せば、確かに先輩たちはなんでこんなにアドバイスをくれるんだろうと思っていた。同じフリーダイビングをするもの同士、声を掛け合ったりアドバイスをしあうのは自然なことだし当たり前かもしれないが、改めてその意識を持つことや大切さに気づかせてくれるのが、このコースの良いところかもしれない。
また、当然だがコースを受けたからといっていきなり-50mとか-100mとかまで潜れるわけではない。あくまでもその方法や知識を得たというだけで、その先を目指すにはまだまだ課題が山積みだ。マスターフリーダイバーを取得できた達成感と、その先の奥深さに魅了され、まだまだのめり込んでいきそうだ…。