光って、鳴って、震えて大騒ぎ!?〜ダイブコンピューターの未来〜

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以前、リブリーザーを一般ダイバーが使える時代が来るなんてことを何度か書きました。
またダイブコンピューターの方から、「空気がない」、「無減圧リミットだから浮上しろ」なんて騒ぎ立てるようになる、何てことも申し上げてきました。

こんなふうに書くと、当然のように、「それじゃダイバーはコンピューターの奴隷、よくて召使いではないか」というご指摘がございます。
まったくそのとおりであります。

しかし、見方を変えれば、ダイビングというのは、最初から、ダイブテーブルの掌で遊ばせていただくというのが鉄則であります。

それが計算を勝手にするダイブコンピューターに変わっても、この鉄則は変わるわけもなく、現実にはダイブコンピューターが全盛であります。

もちろん、ダイブコンピューターは深くて短いダイブも、浅くて長いダイブも同じように評価してしまいます。
つまり安全率を加味できないという、デメリットはあるのですが。
この話は長くなるのでいずれの機会に。

ダイブブコンピューターを使うということは、ダイビングコンピューターを信じて、ダイビングの減圧管理をお任せするということですな。
となれば、今度はあのちっぽけな画面をわざわざ覗き込まなくとも(最近は液晶画面が大きくなりましたが)、コンピューターから、ダイバーに警告する機能へとすぐ進化するはずなのに、これまでは、画面の中で、「浮上スピードが速すぎるよ」、あるいは「減圧停止をしなさいな」と、数字やちっちゃな警告ランプが光って知らせるぐらいでありました。
その面のイノヴェーションは、世の中コンピューター支配の時代に、思いのほか遅いのでありました。

減圧管理だけじゃありません。
タンクとつなげばタンクの残量、残りダイビング可能時間、 浮上による可能時間の変更など、圧力センサーと時計を内蔵しているのですから、警告機能を組み込むのは、理屈の上では、ごく簡単ことです。
そのダイブの最大深度をセットしておけば、誤って深すぎるダイビングをせずにすみます。

そうやって計算したいろいろな情報を、今度はどうやって気づかせるかが、ダイブコンピューターの最大の問題であり、その使命でもあります。

視、聴、触、嗅、味の感覚を合わせて5感ですが、このうちの視覚、聴覚、触覚に訴えようというダイブコンピューターがそろそろ登場です。

つまり警告ランプが強い光で点滅、モニターを見るのを促し、モニター画面も必要な情報も点滅、くわえたレギュレーターが振動し、警告音を発して情報をダイバーに伝え、緊急時にはバディにもイマージェンシー状態であることを合図してくれる、というコンピューターがあることはあるのです。

スウェーデンのポセイドン社が発表したマークⅥディスカバリーというレクリエーションダイビング目的のリブリーザーは、ダイビング中の呼吸装置のガスの管理をコンピューターが行いますが、それだけでなく、先ほどの深度に応じた減圧管理、ガス残量、潜水可能時間などを、リブリーザーに内蔵されたコンピューターが、やってしまうのです。

スウェーデンポセイドン社・マークⅥディスカバリー

リブリーザーの回路のガス管理をコンピューターが行うのと、そのダイバーが無減圧のダイビングをコンピューターを使ってするのは、本来別のことという考えが一般的でした。

ところがこのポセイドン・マークⅥディスカバリーというリブリーザーは、コンピューターが呼吸装置、つまり「機械とダイバーの両方を同時に支配する」しかけであります。

このレクリエーションにリブリーザーを使おうという革新的な考え方は、ずいぶん昔からあるのですが、操作上のエラーを克服する方法があまりに複雑になってしまうので、レクリエーションダイビングには、不向きと考えられていたのですね。

その複雑な操作手順をできるだけコンピューターに任せて、ヒューマンエラーを減らそうというのが、リクリエーション用のリブリーザーの考え方です。
言い換えればレクリエーションダイビング用のリブリーザーを実用化するには、コンピューターコントロールが不可欠と言う考え方です。

コンピューター化したからすべてのヒューマンエラーが回避できるわけではないという理由で、リクリエーションダイビングのリブリーザーに異論を投げかけるグループをおられるようです。

しかし、今、注目しなくてはいけないのは、3つの感覚に訴えて、減圧情報の管理をするところが大事なのですな。
それだけではありません。
いくらすばらしい性能のコンピューターでも、モニターを見なければ始まりません。
光って、鳴って、いわば噛み付いて、つまり大騒ぎをしてヒューマンエラーを減らそうってことであります。
つまり警告はコンピューターにしかできない機能なのであるし、コンピューターの最大の将来性なのであります。

実際にこの3感覚に訴える警告機能を、メーカーサイドに要求したのは、リブリーザーダイビングに踏み出したPADIだと聞いております。

今日のお話はリブリーザー内臓のダイブコンピューターの警告機能ですが、本来なら、ダイビング全体をダイブコンピューターがコントロールする、いわばダイバー支配型のダイブコンピューターがとうの昔に登場してなければおかしいのですな。
  
その意味ではこのポセイドン・マークⅥディスカバリー(Mk6)に内蔵されたタイプのコンピューターは、ダイブコンピューター単体で、近いうちに続々市場に登場するでしょう。
 
そりゃそうでしょう、鳴って、光って、振動して、モニターを見せる、現在の大画面のスマートフォンの機能を考えれば、ダイブコンピューターなど、使われる環境が変わっているだけで、はるかにローテクでしょう。
もっともこんなダイブコンピューターが発表されたら、おそらく現在のすべてのダイブコンピューターは、たちまちに姿を消すことになります。
 
でもこのポセイドンのレク用のリブリーザーは一見の価値ありますぞ。
ハンドリングマニュアルは このヤドカリ爺が翻訳させていただいので、間違いございません。

ポセイドン社・ディスカバリー

画像元ページ:http://www.loco.jp/2012/03/post-481.html

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PROFILE
1964年にダイビングを始め、インストラクター制度の導入に務めるなど、PADIナンバー“伝説の2桁”を誇るダイビング界の生き字引。
インストラクターをやめ、マスコミを定年退職した今は、ギターとB級グルメが楽しみの日々。
つねづね自由に住居を脱ぎかえるヤドカリの地味・自由さにあこがれる。
ダイコンよりテーブル、マンタよりホンダワラの中のメバルが好き。
本名の唐沢嘉昭で、ダイビングマニュアルをはじめ、ダイビング関連の訳書多数。
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