「ダイビング業界の姿勢を国に見せたかった」器材メーカー・タバタの品質管理

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ダイビング器材における“安全の価値”について、器材メーカー・株式会社タバタの取り組みをもとに考えてみる短期連載。
前回の前編では、TUSAブランドで行っているレギュレーターやBCジャケットの品質検査について、お話をうかがいました。

今回は、経済産業省の「製品安全対策優良企業」に応募しようと思ったきっかけなどについて、タバタとしてのこだわりをご紹介します。

――

前回はレギュレーターやBCジャケットの品質検査についてうかがいました。

藤間

軽器材でも、例えばマスクなんかだと、自社開発した視界測定器を使って、どのくらいの視界があるのか測ったりしていますし、フィンの評価では、測定器であえて負荷をかけたり、ロボットにはかせて抵抗を測ったりしています。

――

むむ。そこまで徹底してやるんですね! 
何だか一ダイバーとしては嬉しいです。

と思う一方で、通常、製品を売る時、「安全のレギュレーションに従いつつも優位性を出す」ということになると思うのですが、あえてうがった見方をすれば、その安全のためのレギュレーションがダイビング業界にないのであれば、優位性や付加価値にコストをかけた方が効率的だとは思いませんか?

藤間

そこは、安全の部分を外してしまうとなし崩しになってしまいますからね。

ダイビング器材の安全は何よりも最優先するべきで、少しでも妥協してしまうと、長い目で見ると、ブランドも地に落ちていきます。

ですから、会社全体として品質を保つことに厳格であるべきだと思います。

また、品質を保つという意味では、市場に出た後、メンテナンスがしっかりできる態勢を整えていることも大事だと考えています。

手作業でメンテナンスをするチーム(撮影:寺山英樹)

茨城事業所には、手作業でメンテナンスをするチームが常駐し、あらゆる装置、道具がそろっている

残圧計に高圧をかけてチェックしている(撮影:寺山英樹)

残圧計に高圧をかけてチェックしている

冷水下の水中で呼吸をしている状況を再現できる装置(撮影:寺山英樹)

冷水下の水中で呼吸をしている状況を再現できる装置

山崎

安全性を優先した品質管理 はとてもコストのかかる部分ですが、一歩間違えると命にかかわる水中という特殊な環境で行なうダイビングにおいて、いわば器材は“命を”預ける大切なものです。

直射日光を浴び、非常に厳しい環境 にさらされるダイビング器材は、丁寧なテストが必要です。

“お客様の安全第一”は大前提ですし、モットーとしています。
やはり、ここは外してはいけないと思います。

今回、「製品安全対策優良企業」への応募をしたのも、ある意味、国に対して、ダイビング業界の安全対策の真摯な姿勢を知ってもらいたかった。

また、業界内にもシグナルを発信しようという意図もありました。

大手のメーカーや流通企業にとって「製品安全対策」にシビアな姿勢は当たり前のように備わっていますが、今回の表彰に関しては、ダイビング業界からは初めての受賞です。

もちろん、どのメーカーも安全が前提になっていると思いますが、安全第一と言うだけでなく、きちんと形にして示すことが大事だと思います。

――

やはり、アメリカ、オランダ、ヨーロッパ、台湾、日本と、ワールドワイドに市場を持つタバタとしては、おのずと、ワールドワイドな基準にシビアにならざるを得ないという面もあったのでしょうね。

藤間

そういう面はあるかもしれませんね。
ただ、いち早く、安全というダイバーにとって最も大事な取り組みをできたとポジティブにとらえています。

こうしたシビアな品質管理が、購入の際の隠れた効果、購買動機につながれば嬉しいですね。

山崎

世界と比べて、デザインの面ではまだまだかもしれませんが、 “安全性”は世界で通用する日本の武器。

日本から、こうしたダイビング器材の安全性を発信 できたらと思います。

タバタの茨城事業所の皆さん(撮影:寺山英樹)

茨城事業所の皆さん。彼らの細かい手作業により、制作から、管理、メンテナンスが守られている

この取り組みが、「購入の際の隠れた効果、購買動機につながれば嬉しいですね」とは控えめですが、胸を張って“安全のTUSA”とブランディングし、こうした取り組みが広く認められ、大きな効果を得ることは、ダイビング業界、ひいてはダイバーにとってもよいことではないでしょうか。

デザインや価格という誰にもでもわかりやすい要素や、性能や機能、付加価値や優位性はこれまでもメディアで伝えられてきましたが、「どう安全か」「どっちが安全か」はなかなか伝えづらい要素でした。

器材の詳細は素人がわかりづらい部分で、なかなか判断が難しいということもあったのですが、タバタは、各規格はもちろん、製品安全対策優良企業という形で、積極的に安全の根拠を示し、可視化したといえます。

メディアとしては、こうした価値を伝え、消費者としては、こうした取り組みをする器材メーカーを応援するのはひとつの健全な形かもしれません。

また、ダイバーが器材を購入する際に最も意見を参考にするインストラクターや販売スタッフにとっても、安全が形になったことにより、自信を持ってダイビング器材を勧められるのではないでしょうか。

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PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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