レギュレーターが水没する意外な原因と現地での対処法 

セブ島のダイバーのシルエット(撮影:越智隆治)

ダストキャップを付けずにレギュレーターを水槽に浸けてしまった。

こんな水没処置の依頼を受けることがあります。
特に夏場は、その数も増えます。

久しぶりに器材を使ったために扱い方を忘れてしまっていたり、ダイビング後に疲れていてうっかりやってしまった、ということは珍しくありません。

そこで今回は、水没の原因(予防)と、万一レギュレーターを水没させてしまったときに現地でできる応急処置の方法をご紹介したいと思います。

レギュレーターが水没する意外な(!?)原因

ライセンス(Cカード)講習時、ダイビング後、器材を水洗いする際に“やってはいけいない”こととして習う、基本中の基本といえば……。

■ダストキャップを付けずに洗う、水槽に浸ける。
■タンクからはずした空気圧のかかっていない状態で、セカンドステージやオクトパスのパージボタンを押す。

ここまでは気を付けているダイバーも多いと思うのですが、そうならないためにも気をつけていただきたい“やってはいけない”こと。
それは……。

■混雑期に、現地の洗い場の水槽にレギュレーターを浸けっぱなしにしておく。

オーバーホールのときにファーストステージを分解したら水没跡があり、そのことをご報告してお話をうかがうと、きちんとした洗い方をされている。
それなのに水没してしまっているなんてショックですよね。

では、なぜ水没してしまったのか。

混雑期はたくさんの器材が水槽に入ることになります。
自分がレギュを入れた後、後から来た人がレギュを水槽に浸けます。

混雑している時は次から次へとその数が増え、ゲージの角やファーストステージなど、他人の器材によって自分のレギュレーターのパージボタンが押されることがあるのです。

結果、自身が気づかぬうちにレギュレーターが水没してしまっているということが……。

現地では長く浸け置きすることはせず、浸けこみは自宅に帰ってからしていただく事をお勧めします。
たくさんの器材が入ればそれだけ水槽内の水も汚れますので、その方がいいと思います。

現場でできる応急処置の方法

ダストキャップを付けずに、または空気圧をかけていない状態でパージボタンを押してしまった! と、明らかにご自身でレギュレーターを水没させてしまったという場合。
可能であれば、現地で以下のことを行ってください。

最も大切なことは、高圧側に水気が流れないようにすること。

まずは、ゲージのホースをファーストステージから取り外ししてください。
高圧ホース内に水気が入って残圧計に湿気が到達することを防ぐためです。

次に、ファーストステージをタンクに接続した状態で、セカンド・オクトのパージボタンを押しながらしばらくエアーを流し続けてください。
これは水気をできるだけ外に出す試みです。

以上のことを行った後、ダイビングから戻られましたら速やかに点検・処置に出してください。

器材を水没させたらどうなるか? 

よくない事だけはわかるけれど、いまいちピンとこないかもしれません。
そこで実際に水没させて放置した器材の一例をご覧ください。

水没したファーストステージ(撮影:高尾)

こちらはダイアフラムタイプのファーストステージですが、ダイアフラムというゴムの膜を外したファーストステージ・ボディ内部の画像です。

本来エアーしか入らない部分ですが、水没により中に水気が浸入し、その後に処置を施さず放置していたらこのようになりました。

金属が腐食し、緑錆がでているのがわかりますでしょうか?

洗浄したらこのようになりました。
水没したファーストステージ(撮影:高尾)

メッキが剥がれてしまっています。

エアーの通り道となる金属部品がメッキ剥がれを起こすと、剥がれた鉄粉がエアーに混入。 
呼吸して肺に吸い込むと非常に危険です。
こうなると部品交換を必要とします。

ファーストステージのボディを始め、金属部品は高額なものが多いです。
水没したまま器材を放置させると、余分な部品代がかかる傾向にありますのでご注意ください。

まずは予防、そして、万一水没させてしまったら応急処置を頭の片隅に置いておいて現地でお役立てくださいね。

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PROFILE
大学在学中、グアムで体験ダイビングをしたのを機にライセンスを取り、卒業と同時にダイビングの会社に就職。
その後、数店舗の都市型ダイビングショップで、スクールや器材販売、ツアーの企画・引率をし、2000年にインストラクターに。

数メーカーのメンテナンス講習を受けた後、ダイビング器材オーバーホール専門店「アイバディ」に10年間勤務。
現在はフリーインストラクターとして活動する傍ら、ダイビング器材・オーバーホールについて執筆活動中。

「器材の中身は見えない。だから伝えねばならない」がモットー。

ダイビング器材の中身は見えない。だから伝えねばならない~オーバーホールの現場から~ | オーシャナ
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