海牛杯開催中!オーシャナ編集部が挑戦してみたらこんなにたくさんのウミウシが…!
身も凍る寒さの中、ダイバーの間では「海牛杯(ウミウシカップ)&フォトコンテスト」という名の熱い戦いが行われているのをご存知だろうか。全国8つのダイビングショップのウミウシマスター(ガイド)たちと、約2ヶ月半の期間内で、ウミウシをいくつ見つけられたか競うもの。同時開催で、Instagramでのウミウシフォトコンテストも開催中。そんな海牛杯への参加に名乗りを上げたオーシャナ編集部・セリーナの挑戦レポートをお届け!
海牛杯のルール概要
まずは海牛杯のルールをおさらいから。2022年1月8日〜3月21日の期間内、全国8箇所の対象ショップで1日のダイビングの中で撮影したウミウシの体色と数で合計ポイントを競うショップ対抗戦。体色ごとにポイントが決まっており、黒色は3ポイント、ピンク色は2ポイント、赤色は1ポイントだ。2月21日から後半戦ということで新たにオレンジ色が5ポイントで加わった。2これらの体色をしたウミウシの数×ポイントで得点を加算していき、最高得点のショップには賞金5万円が贈られる。
また、ウミウシのフォトコンテストも同時開催中。海牛杯参加のショップで撮影したウミウシの写真をInstagramに指定のハッシュタグをつけて投稿するというもの。審査員は写真家のむらいさち氏で、グランプリには賞金5万円+記念品が贈られる。
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ダイビングショップに到着!挑戦の舞台は静岡県(富戸)の海
今回編集部が全国8箇所の対象ショップの中から選んだのは都内から車で約2時間40分ほどで行ける静岡県(富戸)のClover Diving Service。到着すると、オーナーの木部悟氏が笑顔でお出迎え。早速、海牛杯の目的や富戸の海の特徴を伺ってみた。
海牛杯は2年前、ダイビングショップSB(鹿児島県)のガイド・松田氏が発起人となりスタート。開催の目的は、生物の探索や撮影に競技性を持たせることで、お客様により楽しんでいただくこと。また、どこのエリアにどのようなウミウシがどのくらい生息しているかを集計、さらには新種発見など、学術的な観点での目的もあるそう。初年度は、ダイビングショップSB、ダイビングショップNANA(神奈川県)、マリンステージ串本(和歌山県)の3店舗が参加したという。
「富戸の海は正直、ウミウシが多いわけではないんです。けど冬の時期に足を運んでくださるお客様にはやっぱり、冬ならではのウミウシを観て、楽しんでほしいなと思って、海牛杯に参加しています。昨年から海牛杯には参加したのですが、探してみると意外といました(笑)。ウミウシが生息の場として好む暗い洞窟が多い静岡県(西伊豆)の雲見などには流石にかないませんが、それでも昨年の海牛杯では合計100種類見つけました。ちなみに現時点では90種類見つけていて、今年の目標は150種類です!」。
雲見は2ダイブで50〜70種類ものウミウシを見つける強敵だそうだ。他にも三重県や和歌山県も手強いという。
「海牛杯で1位を目指すのはなかなか難しいですが、お客さまがフォトコンテストに応募できるようないい写真を撮れるようにお手伝いすることを一番の目標にしています」。
海に移動し、海牛探しの作戦会議(ブリーフィング)
富戸には「ヨコバマ」と「脇の浜」という2つのビーチポイントがあり、歩いて5分ほどの距離なのに観られるウミウシの種類が異なるそうだ。
「富戸の砂地は細かく白いのが特徴です。ウミウシ以外にもダイバーに人気のあるネジリンボウなどハゼの仲間もいます。ウミウシを探すときはウミウシのエサであるコケのような動物「コケムシ」を探したり、ウミウシが好む岩の裏や水中ロープの影といった薄暗いところを調べたりしていきます。浅場は7mで、深場は23〜24mになります。流れもないのでゆっくり行きましょう!」。
こんなにウミウシオンリーなダイビングは初めてなので、ある意味ワクワクする。作戦会議をしただけで、ウミウシにちょこっと詳しくなったような気がした。
ウミウシ撮影のコツを伝授
今回私は「オリンパス デジカメ TG-4」を持参し、撮影に挑む。今までカメラの設定は水中モードで、設定もよくわからず、平凡に撮影してきた私に、木部氏がウミウシ撮影のコツを伝授してくださった。
「設定は、顕微鏡モードで。ググッと近寄って撮ってください。フラッシュは自動発光か強制発光を選べますが、基本的には強制発光にしましょう。だけど、ウミウシは水中ライトでの撮影の方が色味はきれいにでるので、水中ライトのほうが適している気がします。水中ライトのアシストがあるときは発光をオフに切り替えてくださいね。
被写体の明るさを測る「測光」のモードは、「スポット測光」でいきましょう。これは、画面中央の狭い範囲を測光してくれて、ウミウシのような真ん中にピンポイントで被写体を写すような撮影には適しています。初期設定の「デジタルESP測光」だと49分割された画面の中で、それぞれの輝度を考慮して調整されるので、たとえば白色や黒色のウミウシように被写体と背景の露出に極度な差がある場合だと、カメラが明るさをどこに合わせればいいのか迷ってしまい、輝度がうまく調整されにくくなってしまいます。
あとは、撮るときの姿勢。カメラを岩や水底に付けて安定させてブレないようにしてください。カメラを持っていないもう片方の手は岩などを持って固定しましょう。
4倍ズームも上手く使って臨場感を出してくださいね。ただし、4倍以上ズームすると画質が悪くなってしまうので注意です」。
・設定は顕微鏡モード
・フラッシュか水中ライトのどちらかを必ず使う(水中ライトのほうがおすすめ)
・「測光」のモードは「スポット測光」
・4倍ズームを駆使する
覚えることはとりあえず4つ。なんとかいけそうだ。
気合十分!いよいよ海へ!
作戦と撮影のコツを頭に入れ、海へ!1ダイブ目は「ヨコバマ」へ。
天候は晴れ、気温は9度、海面は穏やか。エントリー口にはスロープが用意され、ビギナーにも安心だ。
秋から冬にかけてが最も透明度が高い時期らしく、この日は18mだった。太陽の光も差し込み非常に明るい。水温は15度と、人間にとっては凍える寒さだがウミウシにとっては過ごしやすい環境だ。
エントリー後、5分もたたないうちにまずは1匹目発見!幸先のいいスタートに、ますますテンションが上がる。
水底に這いつくばり、木部氏に水中ライトを照らしてもらい、カメラの画面を覗き込む。傍から見たらシュールな光景だ。その後も順調にウミウシを見つけていき、1ダイブ目のウミウシ探しは約60分で終了。果たして何匹見つけられたのか。
結果は、9種類のウミウシを発見(すべて木部氏が見つけたもの)!アオウミウシ以外、初めて見た!! しかも、ひとつのダイビングポイントにこんなにたくさんの種類がいるんだ!改めてウミウシのカラフルさに驚かされる。
テンポ良く2ダイブ目に出発!
2ダイブ目は「脇の浜」へ。1ダイブ目のいい流れのまま、行きたいところだ。
2ダイブ目も終了。結果は…
7種類(こちらもすべて木部さんが見つけたもの)!
さあ、ラスト3ダイブ目!
最後なだけあって、これでもかと水底に近づきウミウシを探す。水中ロープの影や岩の裏といった薄暗いところ、海藻の裏側など隈なくチェック。結果は…
4種類(もうお分かりだろうが…、すべて木部さんが見つけたもの)!
ダイビングショップに戻り、集計タイム!
1日で3本潜り、合計21種類のウミウシを見つけることができた!私が見つけたのはクロヘリアメフラシたった2匹だけ…。必死に探したのだが、やはりこの広い海で1cmにも満たない生き物を見つけるのは大変だ…。改めてガイドさんのすごさを実感した。
最後はダイビングショップに戻り、集計。海牛杯の規定のフォーマットに見つけたウミウシを入力していく。今回獲得したポイントは19ポイントだった。今年の海牛杯期間中まだ見つけたことのなかった種類のウミウシも3種類見つけることができた。
海牛杯に参加してみて
今まで私はウミウシを主役にしたダイビングはしたことがなく、ダイビング中に見つけることができたらラッキー程度だった。だが今回参加してみて、ウミウシにハマる気持ちがわかったような気がした。多種多様な美しい色と形で、次はどんなウミウシを見られるのかワクワクする。動きがゆっくりなので、じっくり撮影することができるのもまた楽しい。
あとは、海牛杯と同時開催されているフォトコンテストにも応募しなくては!応募方法は指定のハッシュタグ「#海牛杯2022photocon」と「#参加店舗名」の2つをつけて投稿するだけ。なんの写真を投稿しようかな〜。
皆さまもぜひ参加してみてはいかがだろうか。
「海牛杯&フォトコンテスト」結果発表について
2022年「海牛杯&フォトコンテスト」の結果発表は、Facebookのイベントページ、および各参加ショップのブログやホームページ、SNSによって発表される。ちなみにイベントページには昨年の結果やフォトコンテストの入賞作品、全日本ウミウシ連絡協議会(通称:全ウ連)の理事長・中野理枝氏による講評も観ることができる。
2月20日に発表された中間発表は下記となる(2月15日までの分)。
1位 Collins DC(静岡県・雲見)合計1,436点(208種)
2位 マリンステージ串本(和歌山県)合計1,201点(169種)
3位 ダイビングショップNANA(神奈川県)合計739点(104種)
4位 ブルーアース21長崎(長崎県)合計636点(64種)
5位 ダイビングショップSB(鹿児島県)合計337点(105種)
6位 Clover Diving Service(静岡県・富戸)合計330点(102種)
7位 アリストダイバーズ(三重県)合計278点(72種)
8位 糸島ダイブベース(福岡県)合計151点(20種)
そして、2月21日発表された追加のポイント加算の色は「オレンジ」!後半戦もたくさんのウミウシを探していこう!
【おまけ】その他、見られた生き物
撮影協力:Clover Diving Service
初心者大歓迎。器材フルレンタル無料!ドライスーツも無料。なんとTG-4〜6のレンタルまで無料で、カメラを持っていない人でも、海牛杯に挑戦できる!Clover Diving Serviceの由来は、C(sea) – 「海」、Lover – 「愛する人」、で「海を愛する人」。東伊豆の富戸がホームポイントで、その他にも海洋公園や西伊豆の大瀬崎、雲見、そして南伊豆の神子元島までガイドをする。
木部氏は東伊豆の伊東出身。地元の海を知り尽くしたガイドはもちろん、ハンマーヘッドシャークを追い求め、昨年の夏だけで150本も神子元島に潜りに行った、サメガイドでもある。3mmのウミウシから、3mのサメまで、幅広くガイドをする。木部氏とともに伊豆の海を紹介するのは22歳の若手、河合さん。可愛らしい笑顔で迎えてくれる。
Clover Diving Serviceホームページ
〒413-0232 静岡県伊東市八幡野1418-11
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