「東北の海のためにダイバーができること」三陸ボランティアダイバーズ特集
第6回:現地から見たメディア報道の在り方
スマトラ沖地震でのメディア報道による影響
くまちゃんらは、2004年のスマトラ沖地震では“被災者”としての体験をしている(第1回:スマトラ島沖地震の経験参照)。
その時の経験を生かしているのが、この三陸ボランティアダイバーズの一つの大きな特徴だ。
特に彼らが身に染みて実感したのが、震災によるメディア報道の在り方。
スマトラ沖地震でも、今回の東日本大震災でも、「こんな酷い状況になっている」という写真は世に多く出ている。
だがそれらの写真は、非被災地の人々の心を震わせることはできても、現地の復興を目指すという観点では悪影響の方がずっと多い。
それら写真や報道はメディアや写真家のエゴではないだろうか、ということをくまちゃんらは2004年のタイで痛いほど痛感させられた。
「こんなに酷い」という写真を見た観光客は、しばらく現地に来てはくれず、現地で落としてもらえるお金は一向に増えない。
義援金や寄付金というのは震災の直後には爆発的に伸びるものの、数ヶ月も経つと引き潮のようにすーっとなくなる。
すると、数ヵ月後には復興の手がかりが極めて少ない状況に陥ってしまう。
結局、くまちゃんらがいたタイのダイビングショップに元の客足が戻るには、3年がかかった。
お店などの施設面はとっくに元通りになっていたにも関わらず、だ。
「復旧」してから「復興」するまでの道のりがとても遠くなってしまったのだ。
被災地の復興のために本当に必要な報道とはなにか
今回の東日本大震災でも、くまちゃんらが6,7年前にタイで感じたのと全く同じことを地元の漁師たちが感じている。
現地で復興を目指して頑張っている自分たちを差し置いて、被災地の悲惨な状況ばかりが写された報道を見ると、彼らが「そんなんばかり出すな」と文句を言いたくなるのは自然なことである。
彼ら現地の漁師たちにとって救いなのは、三陸ボランティアダイバーズがその気持ちを“当事者”として理解できる人間で構成されていることだろう。
実際、東京でメディア対応の窓口となっている早乙女は、取材依頼をしてくるメディアに対して一つの条件を提示している。
「被害の激しさ・酷さを報道するのではなく、現地で頑張っている人たち・漁師さんたちをクローズアップして前向きな報道をしてほしい」
三陸ボランティアダイバーズは、「いかに地元の漁業の復興につながるか」を最優先に考えて全ての活動を行っている。
そしてそれをメディアに流されることなく一貫して主張できているのは、広告代理店に勤務してメディアとのコミュニケーションに知見のある早乙女の働きが欠かせない。
ショッキングな言葉や写真が並ぶ報道というのは、新聞・雑誌の販売部数やウェブサイトのPVが伸びるため、メディア側としてはどうしてもそちらに流されてしまいがちにもなる。
ただ、「被災地の復興のために本当に必要な報道とはなにか」を真摯に考えることもまた、メディアの責務ではないだろうか。
三陸ボランティアダイバーズからメディア側が学ぶべきことも、また多い。