海の星空に舞う蛍。流れる天の川~パプアニューギニア・ロロアタ~
海の中で蛍を見た。
パプアニューギニアは、タワリからロロアタに移動。
目的はフラッシュライト・フィッシュこと、ヒカリキンメ。
その名の通り、夜になると発光する魚として知られるが、ここロロアタではドラマチックなシーンを見られるとの噂を聞いていた。

日中のヒカリキンメ。目の下に発光するバクテリアを持つ。
写真はOcean’s Motionより
桟橋を17時半に出発して20分。
美しい夕陽を見ながら、エントリーより早めに到着。
暗くなると、大海原にポツリと浮かぶブイが見えなくなるからだ。
日没直前を狙って、18時半を過ぎたころ、沈船が眠る「パシフィックガス」へエントリー。
プランクトンの多いパプアの海では、夜光虫も多く、ダイバーが動くたびにフワッと光が浮き上がっては消えていく。
光の衣を身にまとったダイバーが潜降する様は、それはそれですでに幻想的。
潜降ロープを一気に降りると、七洋丸の船体が見える前に、ぼんやりと円形の窓の中で光が激しく動き回り、点滅しているのが見える。

水深20メートルの甲板に着底し、その窓らしきものに近付くと、窓の正体がハッチだとわかる。
直径1メートルにも満たないハッチに近づき中を覗き込むと、船内でヒカリキンメがとんでもない巨大な群れをしている。
これだけでも感動ものだが、ただ集まるだけの群れならば、見られる海は他にもある。
ロロアタの海では、ここからドラマチックなショーが始まるのだ。
ハッチからやや距離を置いて見守ることおよそ15分。
すっかり日が暮れ、海の中が月明かりだけになったころ、ハッチからひとつ、ふたつ、フアッと光が浮き上がったかと思うと、加速度的にその数は増え、四方に勢いよく飛び立っていく。
まるで、蛍が解き放たれたような光景は、幻想的で妖艶。

黒い部分が斜めに沈む船体で、中央の光が集まっているところがハッチ
四方に飛び立つ海の蛍はさらに数を増し、いよいよ勢いづいてくると、やがてひとつにまとまって、川のように一本の太い流れとなる。
夜光虫が無数に散らばる星空に煌めくその光の流れは、天の川そのもの。

ハッチを飛び出た天の川は船体を取り巻き、日中に船体に閉じ込められていた鬱憤を晴らすかのように、生き生きと光が踊っている。
幻想的というひと言ではすまされない、すごいものを見てしまった。
写真は伝わりにくいので、ぜひその目で見てほしい。
久しぶりに胸が熱くなる。
ダイビング歴は20年近くになるが、だからダイビングは止められない。
※SEA&SEAが撮影した動画。