スリランカ、眼前にまで迫ったマッコウクジラとの遭遇
スリランカ北東岸へリサーチに出かけた大きな理由が二つあった。
一つは、シロナガスクジラに遭遇できるチャンスがあるということ。
実際には、同国南岸の海域で、このシロナガスクジラを見るホエールウォッチングが盛んに行なわれているのだけど、ボートの数が多く、一頭のクジラに数隻の船が付いてしまう事も多いと聞いていた。
いずれにしても、年内に再度そちらにもリサーチに出向くつもりだが、できれば船の少ない海域で見れるのであれば、そちらの方がいいと判断して、今回は北東岸海域での可能性を探った。
結果的には、数日間、シロナガスクジラを目撃した。
しかし、前回紹介したニタリクジラ同様に、今回は透明度の悪い海域で目撃することが多く、水中での撮影には至らなかった。
船上から撮影したシロナガスクジラの背中の写真がこれ。
噴気口から背びれまでの距離の長さが、次の写真のニタリクジラのそれとは、明らかに違う事が良くわかってもらえると思う。
この他にも、ジャンプするユメゴンドウ(Pygmy killer whale 学名:Feresa attenuata)、スジイルカ(学名:Stenella coeruleoalba)などの撮影に成功した。
ユメゴンドウは、以前に数回パラオの北西の外洋で確認した事がある。
このときも透明度が悪く、海に入ってもなかなか近よらせてもらえなかった。
今回は水中での撮影を試みたが、うっすらと見える程度で撮影には至らなかった。
スジイルカを目撃したのは、個人的には今回が初めての事。
ハシナガイルカ同様に、漁師たちがイルカについて、カツオやキハダマグロなどを釣る目印になっているようだった。
そして、今回スリランカ北東岸にリサーチに出かけたもう一つの理由が、スリランカでも最もマッコウクジラに遭遇しやすい海域でもあると聞いていたので、この群れとの遭遇確率の可能性を探った。
ある日、深海でのダイオウイカ捕食を終えて、海面に浮上してきたマッコウクジラたちのブローがあちこちで見られた。
エントリーし易そうな個体の前にまわりこみ、船から静かに下ろしてもらい、彼女たちが近づいて来るのを待つ。
まるで僕の身体にまとわりついて、その身体ごととろけていきそうな美しい青をたたえる海中に、クリック音が響き渡り、数頭のマッコウクジラが海中に姿を現した。
動かずにじっとしていると、「何やら前にいる」事をすでにソナーで気づいていながらも、その中の一頭は避ける事もせずに,真っ直ぐに僕に近づいて来た。
フィッシュアイレンズを付けたカメラの構図いっぱいいっぱいにマッコウクジラが入る距離、そして、入り切らない距離にまで近づいて来た。
僕はただ、一カットでも構図を崩さないようにシャッターを切り続けた。
僕の目の前を通過すると、テールを上げ、糞をまき散らしながら、潜行を開始した。
多くの場合が、このように通過して泳ぎ去って行くだけだった。
警戒心が強い個体であれば、そんな風に静かに待っていても、直前でテールを上げて潜っていってしまうか、方向転換して、泳ぎ去って行くことの方が多かった。
彼女らが泳ぎ去った後にも、面白いものを見つけた。
彼女らの身体からはがれ落ちた大きな体皮や、深海からに追い立てられたと思われる、原型を留めたイカの死骸。
体皮も、イカも持ち帰った。
体皮は、ガイドのメナカがコレクションにすると言っていたが、イカの方は、グリルして食べてみることになった。
「何だかわからない得体の知れないイカ、普通ここで、食べるか?」と思ったけど、知的好奇心が先に立ち、僕も食べてみた。
火を通すと、体中の水分が蒸発して、あっと言う間に小さくなっていった。
あまりに酸味が強過ぎて、まともに食べれる感じではなかった。
グリルされたイカは、最終的には犬の餌になってしまっていた。
今回の滞在で、どのような状況でクジラと会える可能性が上がるのか、または会えなくなる原因が何であるのかを実感することができた。
この海域でのリサーチも、今後数回行って行こうと考えている。
今はまだ具体的には、お伝えできないが、今後数回に及ぶリサーチへの参加に興味があり、参加したい方は、こちらからお問い合わせ下さい。