パラオ ジェリーフィッシュレイクから姿を消したクラゲたち

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パラオに到着早々、デイドリームのスタッフと、こんな話題になった。

「そういえば、今ジェリーフィッシュレイクのクラゲ、全然いなくなっちゃって、ツアー催行してないんですよ〜」

「え?なんでですか?観光客に食べられちゃたんですか〜?」

「ではなくて、水不足が原因みたいです」

水不足が原因?ジェリーフィッシュの水温が上昇しすぎて、クラゲが死滅してしまったのか。ということで、この件に関して、色々聞いていたら、少し前にこんなエージェントリリースが出されていたとコピーを渡された。

以下、ジェリーフィッシュレイクツアーを催行している現地会社から、2016年5月10日付けで、パラオの各旅行会社へ出されたリリースから抜粋。

「パラオは、エルニーニョの影響で2016年年明けより気象観測開始以来の記録的な少雨に見舞われました。この気象現象は、ジェリーフィッシュレイクの水温や塩分濃度など水中の環境や生態系に変化をもたらし、湖に生息するクラゲの数の急激な減少という影響を与えました。コロール州は、専門家を含めた調査を実施、その結果、現状を異常事態としてはとらえず、エコシステムの一環としてとらえています。

現在いなくなったと思われているクラゲは、その成長過程の一つであるポリプ(イソギンチャクの様な形をして岩などに接着して生息する、クラゲの幼生)が湖に生息しているため、今後、湖の環境が回復すれば、再びクラゲが見られるとのこと。ただし、専門家は同時にポリプが成体のクラゲに成長するには、最低でも6〜8ヶ月かかると進言しています・・・・」という内容。

以上のような理由から、現在ジェリーフィッシュレイクへのツアーは当分見合わされているとのこと。現在は、湖の状況を定期的にモニタリングして、ツアー催行が可能となった時点で催行を再開する予定だそうだ。

ジェリーフィッシュレイクには、タコクラゲとミズクラゲの2種類が生息していて、いわゆるゴールデンジェリーフィッシュと言われているのは、タコクラゲの方。外洋にいるタコクラゲは毒性があるが、閉鎖された湖の空間にいる間に外敵がいないために、その毒性が失われたと考えられていて、毒のある触手が退化し、写真のように身体中をクラゲたちに覆われてもまったく人体に害はない。

パラオ・ジェリーフィッシュレイク

ジェリーフィッシュに囲まれるスノーケラー

ところが、最近では、退化したはずの毒のある触手が伸びてきているという報告もある。水温や塩分濃度の変化が原因で、毒性が復活している可能性も考えられるのだという。

中には、心ない観光客がジェリーフィッシュを引きちぎったり、放り投げて遊んだるすることで、クラゲの間で危機感が伝達されて、毒性が復活したのでは?と自論を述べる人も。

1997年にも、エルニーニョ現象の翌年のラニーニャ現象で水温が異常に上昇してジェリーフィッシュレイクのクラゲたちが死滅して、3年ほど閉鎖された過去がある。それにしても驚くべきことは、環境が悪化しても、環境が回復するまでポリプへと形を変えて、生き続ける生命力だ。

幻想的な水中シーンが人気のジェリーフィッシュレイク。しばらくは見に行くことができないようだが、時間はかかっても、以前のような異空間を作り出す不思議なシーンをまた見せてくれることを期待している。そのときには、もう、引きちぎったり、放り投げたりなんてことは、絶対しないようにして欲しい。

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PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。
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