【インタビュー】むらいさち写真集『しあわせのとき』が発売! 先行予約特典や写真展も同時開催!
2018年3月、リブロアルテから、写真集『しあわせのとき』が発売されます。
うみカメラマン・むらいさちさんが過去10年間で撮りためた、「幸せの瞬間」がつまった1冊。
制作の裏話や写真集に込めた思いをインタビューしました。
インタビュアー:寺山英樹
撮影・構成:菊地聡美
写真集『しあわせのとき』
作ろうと思ったきっかけ
寺山
まず、今回の写真集はいつから作ろうと思ってたのですか。
むらい
話は以前から出てたけど、正式に出版が決まったのは年末ですかね。
通常はもっと余裕をもって、半年くらいかけて作るんですが、せっかくなら顔見て直接渡すとこができるCP+に合わせたいなと思って、急ピッチで作りました。
寺山
自分でこのテーマでやろうと思ってたんですか?
それとも出版社からこういうテーマでという依頼が?
むらい
今回、リブロアルテという出版社で出したんですが、初めてのところで、自分で企画を持っていきました。
最初は自分の中に違うテーマがあって、いくつか企画を持って行ったんだけど、ちょっと弱いかなとなって……。
編集の方と話しているうちに、今まで撮りためた中でも、自分の好きなものだけを集めた本を作ろうとなりました。
眠っている大好きな作品にスポットライトを
写真集に込めた思い
寺山
今まで撮りためた中から選んだとのことですが、写真集のタイトルは、どうやって出てきてテーマになり、タイトルになったのですか。
むらい
僕が写真を撮るテーマが「幸せの瞬間」なんです。
被写体がいて幸せだなと感じてシャッターを押していて、それを見た他の人も幸せになってくれたら嬉しいなと思っています。
いつかベスト盤みたいなのを出したいと思っていて、タイトルは「しあわせのとき」と決めていて、しかも平仮名がいいなと考えていました。
寺山
この写真集は今までの総集編というか、ベスト盤ってことなんですね。
むらい
そうですね。
でもベスト盤というとちょっと安っぽかったり、使い回しのような意味合いに聞こえるから、他にいい言葉ないかなと思うんですが……。
寺山
なんだろう……。
集大成? むらいさち100%(笑)?
むらい
まあ確かにむらいさち100%かな(笑)。
作るにあたって、過去10年くらい撮ったものをさかのぼりました。
何万枚の中から600枚くらい選び出して、そこからさらに100枚ほどにして、そのあとは編集の方と話しながら絞り込みました。
むらい
でも今までの写真の使い回しとは全然違っていて。
写真集を作るときって、テーマがあるじゃないですか。
例えば、『きせきのしま』とか、『FantaSea』などは、その写真集を作るために撮っていて、でも、それ以外の写真ももちろん撮っています。
むしろ写真集で使っているのは、撮った作品のほんの1割くらいで、残りの9割が眠っているような状態。
その子たちにもスポットライトを当てたいっていうのが自分の中にずっとありました。
テーマがないと発表できなかったけど、テーマという枠を外すと見せたい写真がたくさんあったんです。
寺山
なにかに合わせて撮ったというよりは、これまで撮ったものの中から、自分が編集者じゃないけど、むらいさちが思う「しあわせなとき」をこの1冊に込めたと。
むらい
僕の好きなものしかここにはありません。
ずっと考えていたタイトルだし、自分の名刺代わりみたいな一冊になると思っています。
「むらいさちってこんな写真を撮る人です」っていうのを伝える時に、一番わかりやすいのがこの本を見せることかなと。
テーマがあると、それに沿って撮っているので100%自分の意思じゃない場合もあるけど、今回は自分の写真のテーマそのものなので。
寺山
自分が幸せだと思う瞬間を見て、撮るというのは、今回の写真集だけじゃなく、うみカメラマン・むらいさちの根底的テーマなんですね。
むらい
そうですね。
あまりリアルなものを撮らないというのはそういうところで。
ストレートに見せると迫力とか感動は伝わるけど、幸せな感じは伝わりづらいのかなと。
寺山
それは想像する余地を残すということですか?
むらい
はい。要は自分の気持ちを乗せているんです。
例えば、水中写真って結構リアルなものが多いじゃないですか。
生物の種類や生態だったり。
そういうことにはあまり興味がなくて、それよりも被写体に自分の気持ちを乗せて撮りたいと思っています。
寺山
なるほど。
「しあわせなとき」というと、抽象的で、瞬間という感じがするけど、そういうことでもないんですね。
手触りからも温もりを
写真以外のこだわり
寺山
いつも写真集のパッケージや紙にもこだわりがあるイメージですが、今回はなにか特徴はありますか?
むらい
実はすごくこだわっていて、表紙の紙がコットンでできています。
印刷屋さんもこれで印刷したことがないというくらい珍しいみたいです。
「手触りも気にしたい」とデザイナーさんと話していて、もともと3,000円で販売予定で発表していたのに、こだわりすぎて値段が500円上がっちゃいました……。すみません(笑)。
寺山
色の発色じゃなく、手触りにこだわったんですね。
むらい
コットンだと、発色は染みてしまうので悪くなってしまいます。
でも、一般的なツルツルの素材よりも、優しい感じがするんです。
寺山
なるほど。写真も合っている気がしますね。
むらい
温かい感じの写真集にしたかったから、こういった形でも表現したいと思いました。
あとはずっとやりたかった箔押しをやりました。
高いからなかなかできなくて(笑)。
今まではどちらかというと制作費は抑えて、部数を増やすとか値段を下げるという方向で作ってきたんですが、今回初めて自分が作りたいと思うものに近いものが出せました。
僕の本はイルカとかクジラとか、誰もが好きっていう写真集ではないから、部数を売る本じゃないと自分では思っています。
だったら好きなものを作りたいということで、今回はそういった部分にも結構こだわりました。
デザイナーさんもいろいろ考えて提案などしてくれたので、作っていく過程も楽しかったです。
海は自分のルーツ
むらいさちの考える「しあわせなとき」
寺山
これまでいろいろなテーマで写真集を作ってきたと思いますが、今回の作品は陸や海は関係なく入っているんでしょうか。
むらい
そうですね。
水中の写真はそこまで多くないかな……。
写真集『FantaSea』で、水中は自分のなかで一区切りしていたので。
寺山
陸や海関係なく、いろいろなものを含めて「しあわせのとき」だと思うのですが、その中でも水中は他と比べてどういう存在になるか、違いはありますか?
色的なのか意味的なのか分からないですが、青色が多い印象を受けます。
むらい
やっぱり海、青が好きなんだと思います。
自分の中で外せない色ですね。
海は自分のルーツだと思ってるので、根底にあるものですかね。
人類として海から上がってきたというのもありますし。
でも、本当にボーダーはなくて。
海も好きだし、オーロラ見ても感動するし、そこにはあまり分け隔てがない。
だから、私は水中写真家ですってあまり名乗らないのはそこに理由があります。
寺山
今回の作品は日常というよりも、どちらかというと旅先が多いんですか?
むらい
見てて楽しいものにしたいと思ったので、旅先のものを多くしました。
桜などの日本的な写真も混じっているし、ヨーロッパの写真などもあったりします。
世界中を旅しているような感じも味わえるんじゃないかな。
そのうち日常編みたいなものも出せたらいいななんて考えています。
寺山
どういう人に読んでほしいとかはありますか?
谷川俊太郎さんが著書だった『よるのこどもの あかるいゆめ』だと、子供とお母さん世代という話でしたが。
むらい
女性が多いかなとは思いますが、特にターゲットは決めていません。
自分の思う「しあわせなとき」を集めたという感覚なので。
寺山
表紙がきれいなので、インテリアにもいいですね。
むらい
そうですね。
サイズもA4の一回り小さいくらいで、あまり大きくしませんでした。
手元に置いてもらって、ふとした時に開いてもらえるような本になったら嬉しいです。
発売と合わせて、東京で写真展も同時開催し、トークショーも行うので、そちらにも足を運んでいただけると嬉しいです。
そのあとは細かく全国を回ろうかなと思ってます。
今回の出版社はアジアやパリでも出版しているので、アジアとかで個展やろうかみたいな話もあったりして。
近くで開催する際は、ぜひよろしくお願いします!
『しあわせのとき』
写真:むらいさち
デザイン:金晃平
192×264㎜
80ページ
定価:3,780円(税込)
「しあわせのとき」むらいさち写真展
■日時
2018年2月28日(水)~3月11日(日)
12:00~19:00
※3月4日 , 11日は18:00まで(月曜・火曜お休み)
■場所
キチジョウジギャラリー
東京都三鷹市井の頭3丁目32−16
<トークショー>
3月10日(土)13:00〜14:00
3月11日(日)13:00〜14:00
トークショーご参加には予約が必要です。
○お申し込み先
https://goo.gl/forms/yqTOu9ZZ6GUoc3b62
写真展の詳細はこちらからご覧ください。
Profile
うみカメラマン。沖縄でダイビングガイドを経て、写真の世界へ。現在は、水中からオーロラまで地球全体をフィールドに「しあせな瞬間」を求めて撮影している。著書に『FantaSea』(BUNKADO)、『きせきのしま』(小学館)、『よるのこどもの あかるいゆめ』(マイクロマガジン社)などがある。