「みんなで持続的にサンゴを守りたい」”サンゴに優しい日焼け止め”開発者インタビュー

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「市販の日焼け止めには、サンゴに有害な化学物質が含まれている」

その事実を知って、有害とされる物質を排除した”サンゴに優しい日焼け止め”を開発された方がいます。
それは、ジーエルイー代表の呉屋由希乃さん。

沖縄出身で海や自然が大好きな彼女に、開発するまでに至ったきっかけや、現状の問題、課題について詳しいお話を伺いました。

“サンゴに優しい日焼け止め”
開発のきっかけ

ーー

“サンゴに優しい日焼け止め”を開発されたとのことですが、作ろうと思ったきっかけは何ですか?

呉屋さん

私は沖縄出身で海が大好きで、毎日のように行ってました。
座間味の海に行ったとき、いつものようにビーチで日焼け止めを塗っていたら、近くにいたダイバーの方に「それ(日焼け止め)を塗ると、サンゴが死んじゃうんだよ」と言われたんです。
それに衝撃を受けて……。帰っていろいろ調べたら、市販の日焼け止めのほとんどに、サンゴに悪影響を与えるとされる成分が入っていることを知りました。これは何とかしなくてはと思ったのがきっかけです。

ーー

開発しようと思う行動力がすごいですね。それまでは何のお仕事を?

呉屋さん

アパレル関係やイベント業など、いろいろやっていました。
イベント業のおかげで、人を巻き込んで何かするというのは自分の得意なところでもあったんです。思いや熱は人に伝わる、ということも経験していました。
そうした中で先ほどのダイバーさんとの会話があって、「そうなんだ」で終わるのではなく「何かやらないと」って思ったんです。

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自分が開発する必要があるのか
開発、販売で苦労したこと

ーー

開発の際に苦労したことはありますか?

呉屋さん

私自身、過去に化粧品のプロダクトもやったことがあったので、ある程度知識はありました。でも、今回の場合は調査が大変でした。何がどういった理由でサンゴに悪いのか、優しいものはどういうものなか。科学的な論文をひらすら読み込みました。
最初の1年くらいはそれだけに時間を使いましたね。今聞かれたら何でも答えられます(笑)
次の1年くらいはクラウドファンディングの準備、実行をして、それを経て商品が完成し、発売して今年2年目ですね。

サンゴに有害とされる化学物質とは?

・サンゴの白化を促す一因となる成分として、現在問題視されているのが「オキシベンゾン」と「メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(オクチノキサート)」という成分。どちらも紫外線を吸収する役割を持っているため、日焼け止めに含まれていることが多い。

・「オキシベンゾン」については、2015年、「サンゴのDNAにダメージを与え、その幼生に『著しい奇形』を発生させ、さらに『最も憂慮すべきことに、外因性内分泌かく乱物質(通称、環境ホルモン)として作用する』」という研究結果が発表された。また、この作用により「サンゴは自身の外骨格に閉じ込められ、死に至る」ことを余儀なくされているという。(AFPBB Newsより)

・2018年7月には、ハワイでサンゴ礁に有害な化学物質を含む日焼け止めの販売を禁止する法案が成立、2021年より施行予定。パラオでも11月に法律が制定、2020年より施行予定となっている。(2018年11月27日現在)
ハワイの日焼け止め規制法が成立、サンゴ礁に有害な成分を禁止(CNN)
パラオ、有害成分含む日焼け止めを全面禁止 世界初(BBCニュース)

ーー

発売に至るまでに2年もの時間が……

呉屋さん

ある程度時間がかかるのは分かっていたんですけどね。
だからこそ開発前に考えたのは、自分が作るべきかどうかということ。

やっぱり自然に優しい成分となると原価が高くなるんです。あとは啓蒙しないといけないから休みがなくなる(笑)
でも調べれば調べるほど、やらない理由がなくなっちゃって。
海外に行くとオーガニック系の日焼け止めっていっぱいあるんですけど、日本はほとんどないんですよね。あっても値段が高いんです。
そのうえサンゴに優しいなんて謳ってるものは本当になくて。だから一目でわかって、さらに手に取りやすい価格帯のものを作りたいと思いました。

ただ、私は今も沖縄に住んでるんですが、一番広まってほしいマリンショップ系にあまり広まらなくて……。そこはだいぶ苦戦しています。

販売をしながら感じる
現在の課題や問題点

ーー

なぜマリンショップ系に広まらないのでしょう?

呉屋さん

実際に働いている方は、なかなかそこまで手が回らないんだと思います。
事前に成分について説明するのも手間ですし、お客さんもすでに日焼け止めをつけてきているからそこまでは関与できないとか……。
忙しくてスタッフへの教育まで及ばないということもあると思います。

ーー

そこで、一般の方に広く知ってもらおうと?

呉屋さん

そうですね。ダイバーの方はある程度知っている方が多いと思いますが、ノンダイバーの方はサンゴに対する知識がないことが多いです。私もダイバーの方から言われるまで知らなかったですし……。

そもそもサンゴの重要性を知らないので、蹴ったりしても”芝生踏んじゃった〜”みたいな感覚の人も多いと思います。サンゴを生き物だと思っていない人もいるかもしれません。それで遊びに行って、前もって「サンゴは踏んだり蹴ったりしないでね」って注意されてても、実際にきれいな海を目の前にするとそんなの吹き飛んじゃうんですよね。

なので、一般の方々にもより知ってもらって、サンゴを守ろう、日焼け止めの成分に気をつけよう、という意識を上げていただけたらなと思っています。

座間味の美しいサンゴ

座間味の美しいサンゴ

短期の旅行でも気軽に持てるように
商品化の際に工夫したこと

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商品化の際に工夫されたことはありますか?

呉屋さん

一番はパッケージですね。
2泊3日の沖縄旅行のためにだけに、普段使わない大きくて値段の高い日焼け止めなんて買わないと思ったんです。
だからそのときだけ使えるものがいいなと思って、試供品のような形のものを一番最初に作りました。
それによって価格も下げられるので、オーガニックでも低価格帯でなるべく手に取りやすいようにしました。

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呉屋さん

これ(写真右)だと2泊3日用で、15g入りが2パック入ってるんです。1パックで全身2回くらいは塗れる量です。
輪ゴムも一緒に入っているので、開封後はクルっと丸めて輪ゴムでとめてもらえれば保管できます。数回に分けて使えるし、使用後はコンパクトに捨てられるものにしました。

ーー

輪ゴムまでついていて親切!この気遣いはうれしいですね。

呉屋さん

ありがとうございます。
成分もしっかりこだわって、サンゴはもちろん、貝や魚にも優しい商品を目指して作りました。結果、人の肌にもとってもいいものができたんですよ!
特に冬の化粧下地に抜群にいい商品になりました。オーガニック関係のエキスポでもとても評判がよかったですね。

ーー

紫外線カットのほか、保湿にもいいということでしょうか?

呉屋さん

そうですね。自然の力で耐性を作ろうとすると、成分が植物油と蜜蝋とかなんです。それが70%も入ってる、つまり美容成分が70%入ってるってことになるんです。
なので化粧下地としても使いたいという声もあり、今年に入って大きめサイズのポンプチューブ式(写真左)も出しました。

「サンゴに優しい日焼け止め」の成分

<15g入り 成分>
3種の天然保湿成分(ヒマワリ種子油、ミツロウ、ホホバオイル)、酸化亜鉛、トコフェロール

<ポンプチューブ式 成分>
ヒマワリ種子油、酸化亜鉛(ノンナノ)、酸化チタン (ノンナノ)、ヤシ油(ココナッツ)、 ミツロウ、ホホバ種子 油、酢酸トコフェロール(ビタ ンE)、ゲットウ葉油
SPF30 UVA +++++ ULTRA

<特徴>
・ナノ成分不使用で自然界に優しい
・土壌や海を汚染しない(自然分解可能な自然成分のみ使用)
・植物オイル、ミツロウを高級クリームのように約70%贅沢配合
・耐水・高保湿・100%自然成分
・日焼け止めを買う人が自動的に自然を守る活動ができる

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なぜ、大きめサイズはポンプチューブ式なのですか?

呉屋さん

こういう商品ってどうしても分離してしまい、油分から出てくるものが多いんです。なので、使用前によく振ってから出せるポンプチューブ式にしました。

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呉屋さん

あとは”ツアーのときなどに持っていってみんなでつけてほしい”という思いから、7g×24個入りのものもあります。
それぞれの用途にあったものを選択できるように考えました。

私たち全員のプロジェクト
美しいサンゴを持続的に守っていきたい

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呉屋さん

商品名にもこだわり、そのままわかりやすいものにしました。
いろんな人から「こういうのは”海に優しい”とかじゃとないと売れないよ?」などと言われたのですが……。でもそれじゃだめなんです、”サンゴに優しい”っていうのがわからないと。
一目でわかりやすくする。そして関心や興味をもってもらい、みんなで持続的にサンゴを守れたらと思っています。

ーー

持続的にっていうのは大切ですね。

呉屋さん

SDGsの観点から見ても、3つクリアしてるんです。

SDGs(エスディージーズ)とは

「Sustainable Development Goals」の略称で、「持続可能な開発目標」という意味。2015年9月に国連で開かれたサミットの中で、世界のリーダーによって決められた、国際社会共通の目標である。
このサミットでは、2015年から2030年までの長期的な開発の指針として、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択された。この文書の中核を成す「持続可能な開発目標」をSDGsと呼んでおり、具体的に「17の目標」と「169のターゲット(具体目標)」でできている。詳しくはこちらから。

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呉屋さん

以下がその3つになりますね。

12:つくる責任つかう責任
14:海の豊かさを守ろう
17:パートナーシップで目標を達成しよう

特にショップや企業に対しては、ツアーで配ってもらったり会社のノベルティにつけてもらったりすると、17番に関しての目標を達成できるので「一緒にやりませんか?」とお話ししています。

時間がかかるというのは理解しているので、少ししずつでもしっかり伝えていきたいです。

▶︎サンゴに優しい日焼け止めオフィシャルサイト

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