DANダイバーズ・デー、DAN Japanトレーニングディレクター野澤徹さんによるレポート

去る2012年11月3日、東京の医科歯科大学内で、国際DAN会議の日本開催にあわせて「DANダイバーズ・デー」が開催されました。

その時のご様子をDANJapanトレーニングディレクター・野澤徹さんにレポートしていただきます。
※内容の詳細については、DANジャパンの会報「Alert Diver」に掲載されるはずです。

DANダイバーズデーレポート

開催の挨拶をする東京医科歯科大学名誉教授の真野喜洋先生

(以下、野澤徹さんのレポートです)

国際DANは、日本をはじめ、アジア太平洋、アメリカ、ヨーロッパ、南アフリカの各地域をつなぐ組織で、ダイバーの安全を国際的にサポートしている組織だ。

毎年持ち回りでダイバーの安全に関する世界的な問題を話し合ってきているが、今年はその会議が日本で開催され、参加した各国代表がその地域のダイバーに対してさまざまなテーマで最新の話題を提供するのが「DANダイバーズ・デー」の主旨となっている。

発表は、US代表から、Dan OrrとNick Bird、ヨーロッパのAlessandro Marroni、アジアパシフィックのJohn Lippman、南アフリカのFrancois Burman、それに日本の真野喜洋先生で、DAN以外にフィンランドからFolk Lindが参加した(敬称略・順不同)。

DANダイバーズデーレポート

DAN Orr氏(DAN US代表)は、USの事故統計を使って、ダイビングの事故が小さな事件をきっかけに重大事故に陥っていくことを丁寧に説明してくれた。
既報のごとく、国際DANの代表は伊東でダイビングを楽しんだが、その際の写真を発表に取り入れ、「ガイドやプロと一緒のダイビング」では事故率が小さいといったことを指摘してくれた。
慣れてくると忘れがちな「ダイビングの安全に関する実線」(ダイビング前の点検やバディでのチェック、ダイビングサイトの情報など)がいかに大切かを再確認する発表であった。

Nick Bird氏(DAN US医学部門代表)は、ダイビングが遠隔地で行われることが多いことを踏まえて、緊急酸素、水分補給、搬送などについての考慮事項を重要度や安全性の分類をしながら説明してくれた。
さらに、水中での再圧(一般に行うべきではないとされている)にも触れてくれた。

John Lippman氏(DANアジアパシフィック代表)は、全体的なオーストラリアでの事故の概要に始まり、特にオーストラリアでの日本人スノーケラー、ダイバーの死亡事故について詳述し、さらに、事故の分析で、「引き金」「問題となった因子」「死因」を述べ、最後にこうした悲劇的結果を生まないために、ダイバーが身体的適性を持つこと、トレーニングをすること、十分な器材を持つこと、十分な準備をすること、それから健全な常識を持つことが重要であると指摘した。

DANダイバーズデーレポート

Francois Burman氏(DAN南アフリカ代表)は、国際DANが推進している再圧チェンバーの展開とその要員の育成について話してくれた。
再圧チェンバーが世界に展開されていれば、我々ダイバーはどこの海で潜っても(万一の時に)治療を受けられるので安心できる(もちろんだからといって無謀なダイビングはしてはならないが)。
その意味でも、国際DANのダイビングの安全に対す取り組みの一端を知ることが出来た意義は大きい。

ヨーロッパDANの代表、Alessandro Marroni氏は、ヨーロッパで行われている、ダイバー参加型の研究について発表してくれた。
ここで発表された研究は、気泡をできるだけ生成させずにダイビングする方法を生理的な見地から調べたものだ。
被験者は実際のダイバーである。

さまざまなダイビングで、水中エコグラフやヘマトクリット値を調べ、ドップラー検知法で静脈中の気泡を調べると、水分補給やディープストップ、ナイトロックスの使用などが気泡を生成させないこと、つまり、減圧症(DCS)の予防に有効なことが示されたという。

面白かったのは、ダイビング前のサウナ、ダイバーの身体を振動させること、チョコレートの摂取などが有効ではないかという指摘だった。
サウナや振動はダイビング前に簡単にできるものではなさそうだが、身体を温めてチョコレートを食べるくらいならできそうだ。
DAN・ジャパン会報に詳細が掲載されるのを楽しみに待つことにしよう。

フィンランドから、IDAN会議ではなく同時期に開催されたNew UJNR(日米潜水生理・技術・航空宇宙医学)に参加したFolk Lind氏の講演は、フィンランドの紹介から始まった。
それから、フィンランドでのダイビング(非常に冷たい海)と緊急搬送システム、ダイビング事故の実際の経験などと続き、自身もダイバー(但し暖かい海らしい)であり、高圧施設で実際の治療も担当するLind氏の経験を交えた興味深い話であった。

最後になったが(発表は、開会の挨拶と共に最初に行われた)、東京医科歯科大学名誉教授の真野先生が、我が国の減圧表(潜水士テキストに記載されている日本の減圧表)の改訂に関する話をされた。
現在、厚生労働省で新しい減圧表の改訂作業が進んでいて、近いうちに法律の改定がなされるという。
これもダイバーとしては興味津々の話題であった。

以上、ごく簡単にIDAN会議の内容を順不同で紹介した。
詳細は、今後DANジャパンの会報「Alert Diver」に順次掲載されるはずである。

DANダイバーズデーレポート
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PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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