鼻血の話から分かる、高血圧とダイビングの怖い関係
“ダイビング後に鼻血が出る”というお悩みのご相談はよく受けますが、今回ご紹介するのは、ダイビング前の鼻血に関するお悩みです。
Q:一週間に2回ぐらい鼻血が出ますがスキュバーダイビングは可能でしょうか?
おなじみ、三保耳鼻咽喉科院長の三保仁先生にお話をお聞きしました。
鼻血の主な原因
まず、鼻血が出る原因は、どのようなことが考えられるでしょうか?
頻繁に鼻血がでる原因には、アレルギー性鼻炎、高血圧症、血が止まりにくくなる薬の内服や血が止まりにくくなる病気などがあげられます。
年齢によって傾向があるのですが、ご質問を頂いた方の年齢が分からないので、すべてを解説しますね。
若者の鼻血の原因
若い方の鼻血はどういうことが原因なのでしょうか?
若い方でしたら、鼻血が頻繁にでる方のほとんどがアレルギー性鼻炎。
アレルギー性鼻炎では、粘膜が荒れて薄くなり、鼻の入り口付近にある「キーゼルバッハ」という部分の動脈吻合の細い血管がむき出しになるんです。
アレルギーコントロールが悪いので、頻繁に鼻をかんだり、かゆくて鼻をこすったりしがちで、その結果、この血管が傷ついて鼻血がでるんです。
細くても、動脈なのでダラダラたくさん出る。
この様な人がダイビングをしてもさして危険はないんですけれど、多分ダイビング中にたくさんの鼻血が出てしまうでしょう。
近くの耳鼻科でアレルギーの薬をもらって数週間コントロールを良くすれば、鼻血は出なくなるのが一般的です。
それでもおさまらないひどい場合には、出血部位を高周波凝固などで焼いてしまえば、しばらくは出血しなくなります。
鼻血がしばらく出なくなってから潜るのがお勧めです!
中年以降の鼻血の原因
中年以降の方だと、どのような原因が考えられるのでしょうか?
中年以降の方ですと、気づかないうちに高血圧症になっている方は珍しくないんです。
万一、高血圧の持病がある場合、鼻血は血圧のコントロール不良がほとんど。
常に、正常値である140/80mmHg以下でなくてはダイビングはしてはいけません。
ダイビング中の死亡事故の約80%が、脳卒中か心臓発作なんです。
緊張をしたり、水に入るとすぐに血圧は高くなるので、健康な人でも、エントリー前後には血圧が160~180mmHgになることが研究でわかっているんです。
DAN USAが発表した資料で、「ダイビング中に健康が原因で死亡した人」のうちの80%が脳卒中か心臓発作というデータがあります。
高血圧の人であれば、さらに血圧が高くなって脳血管が切れて脳出血に!
普段は高めだけれど140mmHgを越えていない人や、高血圧がある人がいつもは薬で正常血圧範囲内にコントロールできていても、鼻血が出ているときに計るとその時だけ180~200mmHgなど、とても血圧が上がっているという現象はありがちなこと。
年齢を問わず、鼻血が出ているときに血圧を測ってみて下さいね!
その他の原因とダイビングの可能性
その他の原因で考えらる原因とダイビングの可能性を教えてください。
滅多にないんですが、万一出血が止まりにくい病気がある場合は、重症度や程度にもよりますが、危険な病気が多いので、ダイビングはあまり望ましくないですね。
また、血が止まりにくくなる薬を飲んでいる場合、もとの病気によっては、ダイビングができません。
例えば狭心症があるけれどステントを入れていない場合、あるいは入れていても発作を起こす場合などは、ダイビングができませんね。
動脈塞栓症、脳梗塞の既往がある方や、不整脈のある方などが、血が止まりにくい薬を飲みながらダイビングすることは、耳抜き不良やサイナススクイーズを起こした場合に、薬を飲んでいない場合と比べれば、もちろん出血の度合いがひどくなって重症化します。
海岸で転んでケガをすることもあるかもしれません。
ですので、ダイビングは絶対禁止ではないものの、要注意!になるわけです。
鼻血の傾向として、若者はアレルギー性鼻炎、中年以降は高血圧のケースが多いとわかりました。
しかし、鼻血のお話から、高血圧とダイビングについて、驚くべきお話が出てきました。
高血圧とダイビングの関係
- ■ダイビング中の死亡事故の80%が脳卒中と心臓発作
- ■健康な人でもダイビングをすると血圧が高くなる
- ■鼻血が出ているときは血圧を測るべき
そして、なんといっても、最も留意すべき具体的なコメントはこちらでしょう。
「正常値である140/80mmHg以下でなくてはダイビングはしてはいけません」
血圧の高い方は、ご注意ください。