花粉症でも快適にダイビングをするために知っておきたい5つのこと

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これから花粉症のシーズンがやって来ますが、苦しんでいるダイバーも少なくありません。
そこで、花粉症でも快適にダイビングができるよう、知っておきたい5つことをご紹介します!

セブのパンダノン島(撮影:越智隆治)

1.花粉症の重症度とトラブルを起こす確率は比例しない

スギ花粉症は日本特有の花粉症で、アレルギー性鼻炎の中で最も重症な鼻炎です。それは、原因となる花粉が大量に体内に入ってしまうからです。

アレルギー性鼻炎で鼻の粘膜が腫れることによって、サイナススクイーズ、サイナスリバースブロック、また耳管まで腫れてしまうと耳抜き不良を起こすこともあります。ただ、アレルギーの重症度とこれらのトラブルを起こす確率や程度が比例しないことがよくあります。要するに、重症の鼻炎でも何らダイビングで問題にならない人もいれば、軽い鼻炎なのに重症のサイナスや耳抜きのトラブルを起こす人もいるのです。

さらに、スギ気管支炎、スギ喘息になる方も年々増えていますが、どのような病気でも咳が出る状態でのダイビングは禁忌です。
水中での咳は、肺破裂から気胸、エアエンボリズムといった命に関わる潜水障害を起こすことがあるからです。

2.風邪やインフルエンザと花粉症の見分け方

スギ花粉症の症状には、目や鼻の症状だけでなく、ノドの痛みやかゆみ、咳、皮膚の発赤やかゆみ、下痢などの胃腸障害、発熱などを起こす人もいます。そういう意味では、確かに風邪やインフルエンザなどの感染症と区別が付きにくいときがあります。

アレルギーを専門とする耳鼻科医は、2年連続で同じ症状が3月頃に起きるかどうかで花粉症かどうかを診断します。そして、花粉飛散が多い年に症状が強く、花粉飛散が多い日に症状が強いかどうかで確定的になります。

アレルギー性鼻炎は、血液検査や皮膚検査などで検査が可能ですが、検査はかなり当てにならないものです。血液検査では、日本人の72%はスギが陽性に出ますが、実際に症状がある人は35%ぐらいで、残りの人たちは「予備軍」と言われています。いつか発症するかもしれないけれど、症状がない人はスギ花粉症ではありません。

逆に、毎年ほかのスギ患者さんと同時に目や鼻がやられるにもかかわらず、何の検査をしても陰性の人もいますが、それでもその方はスギ花粉症です。

検査はあくまでも目安です。毎年のように症状が出る方は、1月中に耳鼻科へ受診することをお勧めします。

3.ダイビング前に服用してよい薬

ダイビングのときに使用して良い抗アレルギー剤は、地上で飲んでみても、眠気の副作用がまったく出ないものであれば使用可能です。眠気の感じ方は人によって大きく異なるので、飲める薬剤も人によって異なるわけです。

地上で少しでも眠気を感じる薬は、水中で浅い深度にもかかわらず、記憶をなくす程の重症の窒素酔い(窒素ナルコーシス)を起こす事があるので危険です。窒素酔いは適正な判断ができずに異常な行動を取ってしまうことが危険な要素です。

4.“症状を治す”ためでなく、“症状が出にくくする”治療が大事

抗アレルギー剤の多くは100%の効果が出るのに1〜2週間ほどかかります。ですので、花粉症の症状を治すために内服するのではなく、症状が出にくいように、そして出ても軽症で済むように花粉飛散開始前から事前に内服をしていると、同じ種類と量の薬剤にもかかわらず約半分の重症度で済んでしまいます。これを「初期治療」と言います。

飛散時期は、地域により、年により異なりますが、関東では1月末か2月の初めから内服していると、症状はかなり軽く済みます。最新の治療として、昨年10月にスギ花粉症に対しての舌下免疫療法「シダトレン」が発売になりました。毎日、舌の裏側に4〜5年間スギエキスをなめ続けると、軽くなるか治ってしまう可能性があるという治療法です。

症状のひどい方は、将来に向けて花粉症を「治す」事を目指してはいかがでしょうか?5月から11月までの間で、治療開始ができます。

5.花粉症ダイバーにオススメのダイブサイト

花粉飛散量を見てみると、スギの木が多い地方の山間部が当然多いのですが、花粉症の症状の重症度を比べてみると、飛散量が何分の一しかない都会の人の方が、何倍も症状が強いものです。その理由は、都会での大気汚染、ストレスの多い生活、肉食中心の食生活などがあげられていますが、何と言ってもアスファルトが大きな要因です。

花粉は土に落下するとまた舞い上がることはほとんどありませんが、土がほとんどないアスファルトの多い都会では、一度降った花粉は何日間も、何回でも風や車の通過で舞い上がります。そして、花粉はそのうちに粉々になって細かくなり、本来の花粉の大きさでは到達できないはずの奥深い細い気管支まで到達できるようになり、スギ喘息を引き起こすことが分かっています。もちろん、海や湖に落下した花粉は二度と舞い上がりませんので、海岸線では花粉に暴露するリスクが低いことになり、「海の方が、花粉症が楽」になるのです。

スギ花粉は偏西風に乗って100キロ先まで飛んで行くと言われていますから、西〜北西側に、スギが多い山間部がないエリアがお勧めのダイブサイトといえるでしょう。日本海側や関東では西伊豆などがそれに当たります。

その他にも、ダイブサイトの海は田舎で空気が良い、海水による鼻の洗い流し効果なども、症状が軽くなる要因としてあげられます。

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PROFILE
医大生時代にダイビングと出会いのめり込み、ダイビングのために時間とお金を捻出するために、他の趣味をどんどんやめてしまう。
クリニック開業後、好きが高じてダイビングインストラクターになり、現在は、テクニカルダイバーとして、ケーブダイビング、リブリーザーダイビング(rEvo)、大深度ダイビング(-100m越え)などの潜水を行なっている。
また、全国から潜水医学の講演依頼があり、ダイバーおよび耳鼻咽喉科医へ正しい潜水医学の普及をすべく活動。
その後、58才で耳鼻科開業医を引退し、第2の人生でメキシコ移住。メキシコセノーテを潜り三昧の日々を送る。
 
潜水歴30年、潜水本数約3000本。
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