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「減圧障害に再圧治療の必要がない」という仮説の行方 ~「第52回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会」レポート~閲覧無制限

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2017年11月10日・11日に沖縄 琉球大学で日本高気圧環境・潜水医学会学術総会が開催されました。

昨年は、第1種装置(再圧治療に使用する1人用装置)の有効利用、ダイバーの健康診断を含む複数のシンポジウム、ワークショップなどの学術的な討論がありましたが、今年はそのかわりに潜水関連の教育セミナーなどが複数実施されました。

学術総会での潜水関連トピックは?

「減圧障害」「高気圧作業と労働衛生」「圧気工法」「作業潜水」「ダイビングと救命・救難」「ダイビングと酸素供給法」、そして、セミナーの演者の中から4名が出席した「酸素講習の普及について」というディスカッションが行われました。

セミナーでは、ダイバーへの酸素供給についてのトピックがありました。
緊急時の応急手当としての酸素使用については、2016年5月の文書が記憶に新しいところです。

この文書により、ダイビング現場での酸素使用が改めて認識されました。

文書中では、「応急手当をする者が酸素供給に関した教育と訓練を受講していること」「使用される酸素は“医療用酸素”であること」という条件などが強く推奨されており、酸素を使用する際のより明確な基準が示されています。

教育セミナーや「酸素講習の普及について」というディスカッション形式の発表では、酸素を取り巻く状況などについて問題が提起され、特に沖縄地域での酸素供給の環境について発表が行われました。
沖縄の離島地域では医療用酸素を入手するのが困難な地域があり、酸素普及の妨げになっていることが指摘されました。

「教育と訓練」について、酸素を使用する際に、安全性を担保することは極めて重要です。このため、酸素取り扱いの知識やスキルは必要不可欠となります。

現在、緊急時の酸素利用(応急手当)についてはDAN JAPANの「潜水事故における酸素供給法」をはじめとした既存の講習があるものの、高圧則の改訂によって可能となった潜水・圧気作業時の酸素使用に関する講習が必要(取り扱い全般:運搬、貯蔵を含む)との見解が示されました。

減圧障害に再圧治療を必要としない!?
減圧障害治療はどうなる?

学会期間中に、再圧治療(チャンバーを使用した減圧障害の治療)実施の必要性について、新たな意見が発表されていました。

昨年の学術総会でも発表され、議論を呼んだ治療方針に関するトピックです。
従来の減圧障害治療の第一選択肢である再圧治療実施に対し、「減圧障害に再圧治療が必要なく、大気圧下での酸素投与が治療である」とした仮説は、学会の中でも意見の分かれるところでしょう。

日本高気圧環境・潜水医学会による「高気圧酸素治療の適応疾患」には、現在「ガス塞栓症または減圧症(=減圧障害)」がリストされています。
上記の意見は現時点においては国内や海外でも新しく、リストを変更するに至るほど多くのエビデンスは集まっていないようです。

今後十分な数の症例が集まり、新たなエビデンスが構築されれば別でしょうが、現状、減圧障害における治療の第一選択肢は引き続き再圧治療となりそうです。

この点について、今後の学会の動きに注目が必要でしょう。

「大気圧下の酸素供給」は
減圧障害の“治療”でなく“応急手当”

では、「大気圧下の酸素供給」とはいったい何でしょうか?

DAN JAPANの「潜水事故における酸素供給法」プロバイダーワークブックには、コースの目的として以下のように説明されています。

「救急車等の緊急医療サービスが到着するまで、または近くの医療機関へ搬送されるまでの間に、潜水に起因する傷害の症状を認識し、酸素による応急手当を施すことを目的としています。」(DAN JAPAN)

大気圧下での酸素投与は、症状の緩和や重症化を防ぐことが期待されます。
軽症の減圧症の場合には症状が消滅することもありますが、本人に自覚のない症状があるかもしれないので、医療機関にかかることが強く推奨されています。

つまり、ダイバーにとって減圧障害が疑われる場合の応急手当として大変有用ですが、現時点で「治療」ではあるというコンセンサスはないので、慎重に考える必要がありそうです。

まずは、「酸素講習の普及について」というセッションがあったように、再圧治療施設から遠く離れた場所で潜る際には、応急処置として、ダイバー自身の知識とスキルを高めることが重要でしょう。

来年(2018年)の日本高気圧環境・潜水医学会学術総会は旭川で開催されます。

最新の潜水医学に触れるチャンスなので、お近くの方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

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