やりたいと思ったら始めよう!障がいがある人のダイビングの始め方
先天的だろうと後天的だろうとハンディキャップを持ちながらダイビングは楽しめる。
「チャレンジしてみたいけど、どうすればいいの?」
そんな声にお応えし、世界最大の障がい者ダイビング指導団体HSA(Handicapped Scuba Association) の日本支部HSA JAPANで代表理事を務める太田樹男氏に、ハンディキャップダイビングの始め方や魅力までお伺いした。
ハンディキャップダイビングとは?
編集部(以下、—)
ハンディキャップダイビングについて教えてください。
太田氏
障がい者や高齢者、子ども達など様々な人が多様性も認めあい参加できるように修正されたダイビングプログラムの事です。
健常者の方と同じで、体験ダイビングコースとファンダイビングコースがあります。ファンダイビングをするならCカードコースの受講が必要です。
ただ、どのダイビングショップでもいいわけではありません。ハンディキャップダイバーの受け入れをしているショップを選ぶ必要があります。
HSAでは、ハンディキャップダイビングの専門的な医学的知識やダイビングの水中スキルを持ったインストラクターを数多く育ててきました。参加される人には、専門のインストラクターが所属するショップをご案内しています。
参加できるのはどんな人?参加までの流れは?
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ハンディキャップダイビングに参加できるのはどんな人ですか?
太田氏
ハンディキャップの状態によって参加できるか否かを判断しますので、まずはHSA本部にお問い合わせください。
参加に必要な診断書をお送りしたり、診断書のダウンロードページをご案内したりと状況に応じてご対応いたします。
医師(主治医)の診断書と障がいに関する自己申告書をご準備いただきます。
これはHSA本部のメディカルディレクターが確認します。主治医、メディカルディレクター双方の確認がとれた状態でひとまず参加の準備は完了です。
これから体験ダイビングへの参加およびCカードコース受講のトレーニングに参加する体勢を整えていきます。
トレーニングデバートメント(※)から、各インストラクターに具体的なフィードバック(参加者を案内するときの注意事項やアドバイス、レクチャー)を行います。
たとえば、脊髄や頸椎などに障害がある方の場合等では、どの部分が損傷しているのかで、体の動ける機能が変わってきますので、細かく正確に体の状態を把握していきます。
また、同じ部分を損傷していたとしても、人によって体力も状態も異なるのでトレーニングの種類も変わります。
マニュアル一辺倒な対応ではなく、ご本人との綿密なコミュニケーションを行いながら、アセスメントシート(カルテのようなもの)を作成していきます。
各インストラクターはアセスメントシートをもとに、参加者とダイビングの日程を決めていき、参加に至ります。
ちなみに、上肢や下肢の欠損といった外傷のケースでは、健常者ダイバーと同じ健康診断書で事足りる場合もあります。
※トレーニングデパートメント:障がいに関する潜水技術を所持し、ハンディキャップダイバーにダイビングを指導した経験とノウハウを持ち合わせたポジション。
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いくつものプロセスを経てダイビングの準備を整えるのですね。体験ダイビングコースとCカードコースなら、体験ダイビングコースからチャレンジしていったほうがいいですか?
太田氏
どちらからチャレンジして頂いても問題ないです。ただ実際のところ、体験ダイビングからスタートするパターンは、あまりないかもしれません。
というのも、体験ダイビングもCカードも、アセスメントシートを作成するまでは同じ過程なんですね。
それだけの時間と手間が掛かることを考えると「だったら遊びの幅も広がるCカードコースの受講を!」と選ばれる方が多いです。
ハンディキャップダイビングの魅力について
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ハンディキャップダイビングをするメリットや魅力を教えてください。
太田氏
メリットや魅力の部分は、参加される人たちの背景によって様々です。
確かなことは、「チャレンジしたい!」という気持ちさえあれば「自分にもできた!」という喜びが待っているということです。
他にもいえるとしたら、旅行の楽しみが増えることです。ダイビングを通じて国内外へ旅行に行く機会が増えたというダイバーも多いです。
ただ、旅行先に介助者やハンディキャップダイバーを受け入れてくれるダイビングショップは必須です。少しずつ増えてきてはいますが、満足にはないのが現状です。
HSAでは、より多くのダイバーが気軽にダイビングを楽しめるように、リゾート地の受け入れ態勢とハンディキャップダイビングの専門知識をもったインストラクターやダイブバディ(※)への教育も進めています。
現在、奄美大島をはじめ、与論島、西表島、沖縄本島に体勢が整いつつあります。関東では、東伊豆の伊東エリアです。
とくに伊東ダイビングサービスさんには毎年実施するHSA主催のイベントや日常的に大変理解、ご協力をいただいております。こうした現地サービスさまのご理解、ご協力が障がい者ダイビングを普及する上でも必要不可欠です。
みなさんの温かいご支援に感謝しながら、これからも精力的に拠点を増やしていく予定です。
※ハンディキャップを持ったダイバーのサポーターであり、バディのこと。ハンディキャップダイバーを引率するインストラクターのバディをこなすことも。
ハンディキャップダイビングを始めるには、どうすればいいの?
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いざ、ハンディキャップダイビングを始めたいとなったらどうすればいいですか?
太田氏
ハンディキャップダイバーを受け入れているダイビングショップをご存じであれば、そちらに問い合わせてみるのもいいかと思います。
ただ、問い合わせたインストラクターに、ハンディキャップダイバーの受け入れ経験がない場合は、慣れていないため、手続きに時間がかかってしまうのは致しかたないことです。そういったことを考えると、一旦HSA本部に問い合わせしていただけるのが確実でしょう。
hsa本部の問い合わせ先はこちら
profile:太田樹男氏
ダイビング指導員歴30年目に突入。自身もハンディキャップである事から障がい者ダイビングをライフワークに世界最大の障がい者ダイビング指導団体HSAJAPANのコミッショナーを務める。東日本大震災を機に潜水捜索救難協会を発足。代表理事としても活動。要請があれば日本中の行方不明者の潜水捜索を行っている. 最近の活動は遊びと学びを融合させた子供たちの支援活動や心理カウンセラーとしても活動している。
保有資格: NAUI コースディレクター/HSAコースディレクター/DANインストラクタートレーナー/NCFAインストラクタートレーナー/潜水士/1級小型船舶操縦士/認定心理士/上級カウンセラー
ダイビングショップ「シーメイド」:https://seamaid.co.jp/
HSA(Handicapped Scuba Association)について
1975年にカリフォルニア大学アーバイン校(UCI)で創設。障がいを持つ人々にスキューバダイビング教育を行うスポーツダイビング指導団体として、現在は世界30カ国以上に支部や拠点を持つ世界最大の障がい者団体。海外でも認められた障がい者専用のCカ―ドを発行できるのは、日本国内ではHSA JAPAN のインストラクターのみ。
HSA JAPAN:https://hsajapan.net/