水中写真家・茂野優太、北極ダイビングへのチャレンジ

北極の海に潜ることを想像したことがあるだろうか。

極寒の空気、広大な氷原、そしてその下に広がる未知の世界。ダイビングポイントとしての情報が圧倒的に少ない北極は、日本人ダイバーにとって未踏の地に近い存在だ。その極寒の海に今回飛び込むのが、水中写真家・茂野優太さんだ。彼はこれまで流氷ダイビングの経験を積み、さらなる挑戦として北極での撮影に挑む。今回は、旅立ちを目前に控えた彼に、北極への思いと準備の裏側について聞いた。

北極ダイビングに挑戦する理由
「知床の、その先が見たくなった」

スイカ

北極に挑戦しようと思った理由を教えてください。

今、知床の流氷ダイビングを案内し始めて4年になります。寒冷地で、かつ頭上閉鎖環境という特殊な環境で、せっかくここまでやってきたのだから、もっと先の世界を見てみたいという気持ちが強くなっていったのが一つの理由です。

スイカ

もっと北に行きたいと。

そうですね。知床の海が北極圏の海より劣っているというわけではなくて、もっとその先の広がりを見てみたい、という思いが強くなっていったんです。知床の流氷ダイビングをどんどん突き詰めていくうちに、「次に挑むべき場所はどこだろう?」と考えるようになりました。調べてみたら、それが北極だったんですよね。

スイカ

知床で潜るようになったきっかけは何だったんですか?

もともとは海外で潜ることが多かったんですが、コロナの影響で海外に行けなくなったときに、アクエリアスダイバースの衣さんが日本に戻ってきて、「私、流氷ダイビング行くんだけど、行かない?」って誘ってくれたんです。でも、結局スケジュールが合わなくて、一緒には行けなかったんですよね。「じゃあ僕も別で行ってみます!」って流れで、初めて知床の海に行くことになりました。

スイカ

それまで流氷ダイビングの経験は?

まったくなかったです。だから最初は「何もできない!」っていう感じでした。グローブもマスクもつけてもらわなきゃいけないし、ダイビング後に器材を外したら「鼻水ついてるよ」って言われたり(笑)。でも、そのとき撮った写真がすごく良くて、今でもお気に入りなんです。

初めて知床で撮影した写真

初めて知床で撮影した写真

スイカ

それだけ良い写真が撮れたなら、満足だったのでは?

いや、それが逆で。「これは自分の力で撮った写真なのか?」って疑問が湧いたんです。モデルも配置も全部ガイドの方に助けてもらって、僕はただシャッターを切っただけ。写真家として、自分で潜って、自分の目で見たものを撮りたいという気持ちが強くなりました。

スイカ

そこから知床に通うようになったんですね。

当時まだ29歳くらいだったので、「今から10年かけて鍛えれば、40歳までには北の海でしっかりやれるダイバーになれるな」と考えました。やっぱり写真家である前に、まずはちゃんとしたダイバーでありたいんですよ。

スイカ

でも、最初の頃は流氷ダイビングを続けるとは思われていなかったみたいですね(笑)。

そうみたいです(笑)。知床で流氷ダイビングを案内されているロビンソンダイビングサービスの西村さんには、最初はチャラいカメラマンと見られていたみたいですね。実際、僕も最初のシーズンにインナーを忘れるという大失態をやらかしてましたし(笑)。

スイカ

そんなスタートだったんですね。

そうなんですよ。でも、そこからのめり込んでしまって、気づけば毎年知床に通うようになりました。

>>>次ページ:あえて極寒の冬の北極を選んだのは?

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PROFILE
IT企業でSaaS営業、導入コンサル、マーケティングのキャリアを積む。その一方、趣味だったダイビングの楽しみ方を広げる仕組みが作れないかと、オーシャナに自己PR文を送り付けたところ、現社長と当時の編集長からお声がけいただき、2018年に異業種から華麗に転職。
営業として全国を飛び回り、現在は自身で執筆も行う。2020年6月より地域おこし企業人として沖縄県・恩納村役場へ駐在。環境に優しいダイビングの国際基準「Green Fins」の導入推進を担当している。休みの日もスキューバダイビングやスキンダイビングに時間を費やす海狂い。
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