ハンマーズハイ!初心者向けから越智隆治の写真ノウハウまで。2014年神子元島特集(第4回)

神子元で水中写真を撮る時に気をつけたい6つのポイント

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神子元で水中写真を撮影する時のアドバイス part1

神子元島のハンマーヘッドシャークの群れ(撮影:越智隆治)

今回のロケで、神子元ハンマーズのオーナーガイド・有松真さんから、「ゲストの方たちから、どうやったら上手に写真が撮れるんですか?的な質問を良くもらうんですよ。だから今回、越智さんから神子元での撮影のアドバイスになるような事を一つ書いてもらえれば…」と言われて、「自分、人に物教えるの苦手なんだよね」と即答した。

「え〜〜〜!そんな〜」と真さんにのけぞられたのだけど、事実だからしょうがない。

とは言いつつも、取材現場で直接ゲストの方に質問されれば、自分のわかる範囲で教えてあげる事はある。
ここで前置きしておきたいのは、プロのカメラマンだからって何でも知っているかと言えば、そんな事は無いということです。

自分が使っている機材に関しては、それは当然普通の人が知っている以上に機材に関して詳しいけど、使っていない機材に関しては、正直、よくわからない事は多々あります。
そんな時は「説明書良く読んで下さい」って事になったり、その人と同じ機材を使っている、写真が上手そうで人に物を教えるのが得意そうな人にゆだねたりします。

実際、その方が的確な回答を得られるから。

なので、この不定期コーナー(次神子元行ったときにPart2を書くので相当不定期ですけど)では、あくまで自分の使っている機材を中心として、他のカメラでも対応できるであろうことを書いて行くことにします。

自然光で大物撮影をする場合のシャッタースピード

今回、取材期間中にミラーレス一眼を持ったゲストの人に、「写真がぶれる事が多いのですけど、シャッタースピードとかどうすればいいですか?」という質問をされました。

その人は、60分の1で設定していました。
このシャッタースピードでは、ハンマー狙いの場合、写真がブレてしまう可能瀬が高くなります。

神子元でハンマー狙い、あるいは、僕のように素潜りでイルカやクジラ、バショウカジキやタイガーシャークなどなど、ストロボを使わずに自然光だけで撮影を行う場合、その光源は、そのときの海の明るさ、太陽の位置に左右されます。

あまり多くを語ると混乱するので、簡潔に説明すると、シャッタースピードは、数字が大きくなれば大きくなるほど、ぶれません。
数字が少なくなればなるほど、ブレが大きくなります。

例を上げると、イルカの撮影の時、自分はフィッシュアイのレンズを多く使用します。
で、シャッタースピードは、最低でも250分の1以上切るように心がけます。

バハマのドルフィンクルーズのイルカ(撮影:越智隆治)

それが、バショウカジキの群れの場合、400分の1以上を切るように心がけて設定を調整しています。

メキシコ、ムヘーレス島のバショウカジキ(撮影:越智隆治)

これは、イルカの泳ぐスピードよりバショウカジキが補食時に取る行動がより激しいから、極力ブレないように素潜りで撮影するために選択しているシャッタースピードです。

もちろん、実際には、どんな写真を撮影したいか、そのときの海の状況とかで、シャッタースピードも変えていますけど。

じゃあ、神子元で撮影する場合はどうなのか。

神子元でハンマー撮影の場合は、まずダイビングであって、素潜りではない。
これだけでも、身体が安定できる重要なポイントなんです。

それでも、Aポイントという動かないでハンマーが見られるポイントで着底して撮影ができるか、あるいは、中層で群れを見つけて、激しく追跡しながら泳いで撮影するかで、身体の安定(固定)状況はまったく違って来ます。

ブレずに撮影をする最大重要ポイントは、シャッタースピードを上げると同時に、いかに、身体を固定して撮影できるかにあります。
陸の撮影で、三脚を設定して撮影するのは、カメラを固定し、ブレをなくすためです。

しかし、水中では三脚は使えない。
そうなると、カメラを持った自分自身が三脚の役目を果たさなければいけないわけです。

だからと言って、まったく動かないでいられるわけではないので、これはあくまでその動いている状況にありながら、いかにカメラを固定して泳げるかにかかって来ます。

僕は、まだAポイントで動かないでハンマーの群れを見れていないので、どういう設定がベストかはなんとも言えませんが、ゆっくりでも動いている被写体なので、できれば125分の1以上で撮影するのが好ましいと思います。
願わくば、250分の1以上。

また、中層などでダッシュしながらの場合は、250分の1以上。
これをキープすることで、激しく泳いでいてカメラを持った手先が上下していたとしても、なんとか手ぶれや被写体ブレが起きないシャッタースピードなのではないかと思います。

神子元島のハンマーヘッドシャークの群れ(撮影:越智隆治)

これでもブレてしまう人は、相当激しく追跡するためにカメラをしっかり固定できず、かつシャッターを切るときに、強く押し過ぎてカメラをずらしてしまっているのではないかと思いますので、心当たりがある人は、その点に十分注意して撮影に望んで下さい。
とは言っても、遭遇した興奮で忘れちゃうだろうけど。

話を戻して、このシャッタースピードを選択するには、ISO感度、絞り値をどう設定するかという話になってきます。
しかし、おそらく、こういう設定をすでに理解している人は、特に説明しなくても、もう写真撮影に関しての知識は十分持っている人だと思うので、今回は省きます。

神子元で撮影する上で自分が最適と思われる設定は、「S」シャッタースピード優先モード

「S」シャッター優先モード、これは、まずシャッタースピードを125分の1〜400分の1にセットして固定した場合、その適正露出を得るために、絞り値はカメラが自動的に選択してくれる撮影になります。
そうすれば、慌てて全ての設定を変えるなどしなくても、スローシャッターにならずに、撮影時にブレ無い撮影が可能になります。

「P」プログラムや「A」絞り優先オート、などを選択すると、シャッタースピードが適正露出に合わせてスローになってしまうので、ここでは使わない方がいいと思います。

「S」で撮影する場合、適正の露出を得るに当たりもう一つ重要なのが、ISO感度の設定です。
これも、海の明るさに左右されます。

明るければ明るいほど、ISO感度は少ない数字で、速いシャッタースピードが切れます。
暗ければ暗いほど、ISO感度を上げなければ、撮影したいシャッタースピードを維持できなくなって来ます。

なので、例えば、200分の1に設定して、「S」モードで露出をチェックした場合に、絞り値が、開放値(一番数字の少ない値)よりもさらに低い数値をカメラが要求している場合には、このISO感度を上げて調整していく必要があります。

上記の事から、当然、快晴で太陽光が差し込み透明度抜群の日中の海よりも、今回潜った、透明度最悪で深度を取ると暗〜くなってしまう海の方が、ISO感度を上げていかなければ、希望のシャッタースピードで撮影することができなくなります。

神子元ではレア?なストロボを使った撮影

今回、透視度5mと本当に悪く、かなり接近できなければ、ハンマーが探せない状況が多くありました。
なので、初日にハンマーが僕たちの存在に気づかずにギリギリまで接近できて撮影できたことは、なかなか珍しい状況のようで、「群れの写真は群れの写真で凄いけど、神子元では見慣れてきていて、ああいうサメ肌がわかっちゃうくらい肉薄した写真は、単体でもインパクトありますよね」と何名かのゲストの方に言ってもらえた事が、今回のロケでの唯一の慰めではあった。

神子元島のハンマーヘッドシャーク(撮影:越智隆治)

これぐらいの透視度があれば、まあ、まだ「ハンマー狙おう」って気になるのですが、今回のようにあまりにも悪い場合、ゲストはハンマー狙いたいかもしれないけど、ロケとして絵数を増やさなければいけない立場としては、ハンマー狙いをすっぱり切り捨てる判断も必要です。

だからと言って、じゃあ他の魚の群れ狙いで良い写真が撮影できるかと言えば、ベストコンディションであった方が良いに決まっています。

でも、「何か撮影しなければいけない」という状況で、マクロ撮影がきるかと言えば、そこまでハンマーとの遭遇を切り捨てきれないジレンマがあります。

そんな中で選択したのが、外付けのストロボを装着して、魚の群れを撮影する事。

これって、他の海では普通の事なんですけど、ここ神子元では、ダッシュでハンマーを追いかける上で、そのダッシュ力を維持するために、カメラ機材は極力シンプルに。
必要の無いストロボは、外して潜る事が最優先となります。

なので、このストロボを装着することで、ハンマーを追いかける機動力は当然下がるわけです。

それでも、そのスタイルを選択しなければいけないくらい透視度悪かったのですが、おかげで前々から撮影してみたいと思っていた魚の群れに1ダイブだけとは言え、ゆっくり対峙できました。

早く「今日はコンディション良いし、魚の群れ多いから、そちら狙いで」って言える程に、ハンマーの写真を沢山撮影してストックしておきたいですね。

今回の撮影時に、わざと連射にして、1カットはストロボ発光された写真、もう一カットはストロボ発光されていない写真を同時に撮影してみました。

神子元島のタカベの群れ(撮影:越智隆治) 神子元島のタカベの群れ(撮影:越智隆治)

一目瞭然で、ストロボ発光した写真の方が、魚の群れそのものの色も出て、奇麗に撮影できていますね。

まあ、水は緑色ですけど。あとはどちらが好きかは、好みの問題です。

構図重視!あとは、撮影後の補正の仕方を学ぶこと

自然光だけだと、どうしてもそのときの透視度や明るさなどで、なかなか思うような写真が撮影できない事は僕たちプロでも多い。

そんなとき、撮影後に画像処理ソフトで写真を奇麗に処理する方法を知っているかいないかで、写真への向き合い方も違って来ます。
自分では「いまいちだな〜」と思う写真も、「お、こんなに良い感じに仕上がるのか」と驚く人もいるかもしれません。

事実、昔フィルムを使っていた頃には、現像したフィルムをプリント焼きするための、暗室作業というものがありました。
その作業によって、写真を作り上げていくわけです。

それが今では、画像処理ソフトで、一般の人でも簡単にできるようになった。
これを邪道と思うか、活用するかで、まったく違った世界を体験できる事もあります。

この話も、語ると長くなってしまうので、今回は、「パソコンでの画像処理方法を覚えた方が、より写真撮影が楽しくなりますよ」ということだけお伝えしておきます。

で、そこで重要になってくるのが、「構図」です。
これも、トリミングすればって意見もあるとは思うけど、自分が撮影する上で一番こだわるのは、やはりノートリミングで、自分の納得の行く構図で撮影できること。

この構図に関しても話が長くなるのでまた今度ということで。

ということで、今回の神子元での撮影ポイントは、

  • 1.シャッター速度は250分の1以上に合わせる
  • 2.撮影モードは「S」シャッター優先モードを選択
  • 3.ISO感度は、しぼり値が開放値よりも、絞り込める明るさに設定
  • 4.ストロボを使った撮影
  • 5.画像処理方法を学ぶべき
  • 6.構図重視!

という内容でした。

これだけでもこんなに長くなるので、なかなか大変なのですが、もしこの記事を読んで「神子元での撮影で、もっと他の事が知りたい」というお問い合わせがあれば、また次回、パート2でお話したいと思います。

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PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。
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