ドリフトダイビングの海で神子元ハンマーズがとっている安全対策とは
神子元島だけに限った話ではないのですが、ドリフトダイビングには、ある程度の危険が伴います。
黒潮が当たる神子元島の海域は、場所によっては人間では逆らえないほどの潮流が生まれることもしばしばだとか…。
もちろん、ガイドはそんな危険な場所を避けてくれますが、万が一の事態も起こり得るのがダイビング。
やはり、安心して安全にダイビングを楽しむための備えは必要です。
今回は、神子元島でのダイビングを専門にしているダイビングショップ、神子元ハンマーズが行っている安全対策を紹介します。
後半には、神子元ハンマーズのオーナーガイドの有松さんにもインタビューを掲載しています。
11分のVTRブリーフィング
神子元ハンマーズのブリーフィングは、ショップ内のラウンジでVTRを使って行われます。
神子元特有のローカルルールの説明や緊急時の対処方法など、限られた時間の中でお客さんに伝えなければいけないことはたくさんあります。
そこでブリーフィングをよりわかりやすくするために、VTRを使って視覚的にも情報を伝えているんですね。
ぼくも先日初めて神子元で潜りましたが、エントリーまでの手順やトラブルへの対処が映像で説明されるため現場の様子が事前に想像できたので、安心してダイビングに臨めました。
また、 最後まで集中してVTRを観てもらうために、11分という長すぎず短すぎない時間に編集されています。
もちろん大事な話は全て抑えている優れものです。
レベル別の細かなチーム分け
中層を流す、というダイビングの性質上、お客さんにもスムーズな潜降や安定した中性浮力、それを維持した上での広い視野を持つこと、などのスキルが求められるのが実際のところ。
逆に言えば、そういったスキルがないと楽しめるものも楽しめなくなってしまいます。
従って、神子元を潜る全てのショップに、ゲストの経験本数30本以上という条件が義務付けられています。
神子元ハンマーズではその上で、経験本数によってゲストを細かくチーム分けします。
比較的ベテランのお客さんが多い神子元ハンマーズではありますが、ゲストのスキル別にチーム分けをすることで、安全という面でも、楽しさという面でも、チームごとに細やかな対応ができるようになっているんです。
携帯電話
神子元ハンマーズのガイドは皆携帯電話を装備してダイビングに臨んでいます。
海の上でも電波が入るので、万が一の事態において船と連絡をとるためです。
浮上したら船が見当たらなかった、というパターンのことを想定すると、携帯電話一つが事故を防ぐことは大いにあり得るでしょう。
ドリフトダイビングをするにあたって、持っているとかなり安心なツールですね。
この他にもボートには常時、ボート用無線・AED(自動体外式除細動器)・純酸素・セーフティーキッド・水が備えてあります。
ガイドも万が一に備え、緊急用グッズとして、ナイフ・フラッシュライト・緊急用フロート・ミラー・ダイブマーカー・ダイブアラートなど、常に万全の装備でダイビングに臨んでいます。
さて、ここまで、神子元ハンマーズのダイビング時の装備などハード面の紹介をさせていただきました。
では、スタッフの皆さんはどんなことを考えて普段ガイドをされているのでしょうか。
神子元ハンマーズのオーナーガイドの有松さんにお話を伺いました。
有松
神子元ハンマーズではブリーフィング時に、緊急事態への対応をかなりしっかりと説明します。
初来店のゲストの中にはびっくりされる方もいらっしゃるくらいです。
でももちろんそれでお客さんの心配を煽りたいのではなく、そのことを頭に留めておいてもらうことが一番の安全対策にもなるんですよ。
――
VTRを使ったブリーフィングもそのための工夫なんですよね。
有松
そうですね。言い忘れとかも絶対にないですし。
VTRで視覚的に伝えることでイメージも持ってもらえますから、初めてのゲストのストレスも減らせるんじゃないかなと思います。
――
ぼくも今回初めて神子元で潜りましたが、VTRのブリーフィングのおかげでかなり安心してダイビングに臨めました。
では、実際ガイドされるときに特に気をつけていることって何ですか?
有松
私たちがガイドをする上で一番気をつけるのは、ロストや漂流だったりするんですど、ロストが起こりやすいタイミングって、実はハンマーが出たときなんですよね。
やっぱりハンマーが出るとハンマーだけを見てしまい、視野が狭くなってしまう、ということもありますので。
なので、ハンマーが出たらゲストにも特に注意を払うようにはしていますね。
危ないな、って思ったらすぐに水中ブザーも鳴らします。
――
ハンマーが出ると、どうしても周りが見えなくなることってありますよね。
昨日ぼくも初めてハンマーを見れたので、気持ちはわかります。
有松
そうなんですよね。だから、ロストが起きる前の素早い対応ができるように気を付けています。
それと他のダイビング船や漁船の間での連絡もとっており、あそこの根に○○が出たらしい、みたいなホットないい情報の共有もしています。
ハンマーズでは、もし万が一はぐれてしまったとき1分間待たずに浮上して海面に出る、というルールを設けているんですよ。
そのときに船同士の連絡が密に取れていると、他のショップと連携して、重大な事故になる前にゲストをピックアップできるので。
――
なるほど。情報の共有ができていると、もしものときの対応が早そうですね
有松
そうですね。船同士で潮の流れも共有したりしますよ。例えば、事前にガイドと船長が、予定のコースの打ち合わせをするんですよ。
でも、潮の流れによってはどうしてもそのコース通りに行けないことがあるんです。
そのときに船間で潮流の変化が共有できていれば、エントリー後でも船長が対応できますから。
――
そして、そんな時でもガイドは携帯電話をもっていますからね。
有松
そうですね。船から離れて浮上してしまったら、すぐに携帯で連絡をとれるようにしていたりと、予定外の事態が起こっても対応は十二分にできるようにはしています。
神子元のローカルルールで潜水時間は35分と決まっていて、これは、それ以上海の中にいると、浮上予定の地点より離れすぎちゃうことがあるからなんですよ。
もし40分以上、チームが上がってこなかったら、その時は海上保安庁に連絡することにもなっています。
――
なるほど。
有松
それと、ダイコンとフロートは神子元のローカルルールで持たなくちゃいけないということになっているんですが、それに加えてゲストにも海面着色剤やミラーなど、その他のセーフティグッズを携帯していただくことをおすすめしています。
やっぱり、安全のこと考えると気をつけたり工夫する部分は多いですね。お客さんには安全なダイビングを楽しんでほしいですから。
インタビューは以上です!
ありがとうございました!
神子元でのダイビングは楽しいものですが、ドリフトダイビングならではの危険も伴ってしまうことも事実。
そういった危険や起こり得る事故に対して、神子元ハンマーズが真摯に考え、対応しているということが有松さんの話す様子からも伝わってきました。
スタッフ間の仲の良いハンマーズですが、安全に関する情報や対応の共有も行き届いています。
安全に対して最大限気を配りながら楽しむことが、ドリフトダイビングをする上で最も大切なのでしょう。
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