ハンマーズハイ!初心者向けから越智隆治の写真ノウハウまで。2014年神子元島特集(第5回)

神子元初心者がハンマーを楽しむために知っておいた方がいいこと

神子元島のハンマーヘッドシャークの群れ(撮影:越智隆治)

今回の神子元島でのロケで、ぼくは神子元リピーターチーム、ビギナーチーム、両方のチームに所属して潜りました。

両方のチームを見て今思うと、リピーターチームの皆さまは落ち着いていましたし、神子元でのダイビングを知っているのだな、という印象を受けました。

当たり前ですが、その場所でのダイビングのやり方を知っていると、そこに対するストレスがなく潜れて、ダイビングを全力で楽しめるようになると思います。

かく言うぼくも神子元ビギナーでありまして、実際に潜ってみるまでダイビングの内容がわからず若干の不安があった、というのが正直なところです。

と、いうわけで、今回「初めての神子元」を終えて「事前にこれを知っていたら不安が少なかったかもなぁ」という部分や、リピーターチーム・ビギナーチームを比較して「こうしたらよかったんじゃないかな」ということをお伝えしたいと思います。

ドリフトダイビングを怖がらなくていい?

事前に神子元島のダイビングについて勉強した時に、「ドリフトダイビングを怖がらなくていい」という話を聞くことはあるかと思います。

ただ、僕の場合ですが、実際に潜る前は強い潮に流されるドリフトダイビングのイメージに、多少の不安を抱きました。
実際普段と違う状況を強いられることは、多くの人にとってストレスになる要素だと思います。

ただ、ここでのドリフトダイビングは、ぶん流れの潮に流されるようなダイビングではありません。
流されると言うよりは、根の間を縫って泳ぐ、というイメージでしょうか。

潮当たりのいい神子元では、本当に流れの強いところに行ってしまうと、それこそ人間の力では逆らえないような潮につかまってしまいます。

それを避けるために、ガイドは船の上から潮の緩い場所を探してエントリーしてくれるのです。

時に強い流れに当たることもありますが、そういう時はガイドが根に掴まって移動するように指示を出してくれます(なので、グローブ必須ですよ)。

ちなみに、多くの時間は中層にいますが、基本的に根沿いを進み水底も見える状態であることが多く、これも安心できる要素でしょう。

「流れが速いところももちろんありましたけど、ずっと流されてるわけじゃなくて、安心しました。根を掴むこともできたので、思ってたより怖くなかったです」

「ずっと泳いでいて足がつかれちゃいました(笑)。でも、ずっと水底が見えていたっていうのもあって、すごく安心できましたよ」

とは、この日ご一緒させていただいた神子元ビギナーさんからのコメントです。

神子元島でのダイビング

自分で泳いだり根に掴まったりすることの多い神子元のドリフトダイビング。潮に流されるばかりじゃないんですよ

いつハンマーが出てもいいように心の準備をしておく

これも頭の隅に置いておいた方が良いことでしょう。
ハンマーの群れを見つけたらそこに接近していく、というのが神子元でのダイビングのスタイルなのですが、やっぱりこの初動がいかに素早くできるか、ということがビギナーにとっては特に大事になってくると思います。

例えば、周りの人が鳴り物を鳴らしたり、どこかを指さしたりと、チームの誰かがハンマーを見つけたら、何らかの反応を起こしてくれます。
それにどれだけ早く気付けるか、という部分はかなり大きなポイントです。

実際、神子元に潜り慣れているリピーターチームの皆さんはガイドの動きに対する反応が早かったです。
越智カメラマンもそれでハンマーのかなり近くに寄っていますから。

僕は初日の1本目を終えてそのことに気づいたので、2本目は周りの人の行動にも気を配るようにしていました。

そのダイビングで、ガイドがハンマーを見つけ鳴り物を鳴らしながら指をさしていることに、いち早く気付くことができました。

このとき僕はすぐ移動に移れたのでハンマーの全体を見ることができたのですが、少し遅れてしまった方の中には、ハンマーの尾びれしか見れなかった、もしくは全く見れなかった、なんて人も…。

ハンマーを全く見れなかった方は、
「他のところを見ていたら、ハンマーに気づくのが遅れてしまって…(笑)。自分の見ているところ以外にも注意を払えればよかったなと思います」
と、おっしゃっていました。

一緒のチームにいるのに、見れない人がいるなんて、なんて残酷なんでしょうか…。
また、こういういざという時の状況のために、いつでも素早い動きができるようエアを温存することも大切です。

神子元に行くときは、普段よりも周りに注意を払えるよう意識してダイビングするほうがいいのかもしれません。

神子元島のハンマーヘッドシャーク(撮影:越智隆治)

心の準備一つが、憧れのハンマーが見れるか見れないかの運命を決めるかも?今回ハンマーに出会えた興奮のダイビングの様子はこちらの記事でご覧いただけます

情報をあつめる

これが実はかなり大事なんですよ。
神子元のリピーターとビギナーの事前の準備の中では一番大きな違いだったかもしれません。

リピーターの多くは、よく事前に神子元のダイビングショップのHPでダイビングログをチェックしているそうです。

毎日ログをチェックしてハンマーの大爆発が起きていようものなら、その翌日にはもう神子元に行ってしまう、という物凄い瞬発力のリピーターもいるのだとか。

「いつも、今日のログはまだかまだかと待って、UPされた瞬間に見て、それでハンマーが出てたらすぐ神子元ハンマーズに電話するんです。『明日行けますか?』って(笑)」

こちらリピーターの女性の方の言葉ですが、そこまでするんですね(笑)。

出現情報、海況、気候を事前にチェックして、出そうなときを狙って行く!
これがリピーターがハンマーに会う確率を上げるために行っている技です。

この技は神子元ビギナーでも今すぐにでもできると思います。
是非神子元のリアルタイムの情報をキャッチして、自分の神子元ダイビングの質を上げてください!

ちなみに、こちらは神子元ハンマーズさんのダイビングログのページです。
神子元ハンマーズさんは平日であれば、前日であっても予約できたりするそうですよ!

神子元ハンマーズのボート

必要な情報を揃えて準備万端で当日を迎えましょう!

さて、ここまでは、神子元ビギナーのぼくが初めて神子元に潜って思った、「神子元ビギナーが神子元を楽しむために知っておくといいこと」です。

お次は百戦錬磨のカメラマン、越智さんが感じた
「神子元ビギナーでも神子元を楽しむことができるポイント、Aポイント」について、越智さんに記事を書いていただきました!

Aポイントとはどんなポイントで、どのような部分がビギナーにも楽しめるというのでしょうか??

以下、ご覧ください!

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ビギナーでも安心してハンマー群れが狙える!? 神子元のAポイントとは

神子元=激流、命がけというイメージは、一昔前の話

誤解を招かないように、ここで言う「ビギナー」とは、神子元島でのダイビングが認められている、最低経験本数30本以上のダイバーであるということ。
その事を念頭に置いて読んで下さい。

神子元のハンマー群れ狙いと言えば、一昔前までは、「激流やダウンカレントで危険、命がけのダイビング」という印象が強くて、大物好きの僕でさえ、憧れはあるけど、行くのを躊躇するような情報しか入ってきていなかった。

しかし、これは本当に一昔前の話だ。
この「一昔前のイメージ」を未だに持ち続けているダイバーも多いに違いない。

最近では、神子元を潜る各サービスも、安全対策を整えたりするだけでなく、実は、バリバリの激流中に突っ込むよりも、ハンマーは適度な流れを好んで回遊しているということまで、データの蓄積でわかってきている。

神子元だけでなく、世界中の流れが激しいと言われる多くのディスティネーション・ポイントで、こうしたリサーチや安全対策が進み、より確実にターゲットとなる大物が見られて、そしてより安全に潜ることができるようになっていると感じる。

神子元ハンマーズでお世話になり、自分自身、今回で3度目の取材。
運良く、3度とも、決して状況の良くないコンディションのときでも確実に群れに当り、神子元との相性は悪く無いと少し有頂天になりつつあるところだった。
結果的に、今回は3日間いて、群れを見れたのは初日だけという結果に終わったけど。

しかし、その3回のロケ中、僕がハンマーの群れに当たっているのは、常に中層を漂い、引き当てるギャンブル性の高いダイビングでの遭遇だけなのだ。

個人的には、そのギャンブル性の高い遭遇が好きだし、それはそれで面白いのだけど、やはり撮影となると、瞬時の判断や、群れに気づかれないように接近するダッシュ力、それなりの精神力と十分な知識と経験などなど、良い写真を撮影するためには、十分なスキルが要求されるとともに、また、若干ロストの危険も伴う可能性が無くはない(これは、あくまで取材レベルでの話だけど)。

ハンマーの群れが安全に見れるAポイントって何?

しかし、取材の度、常にガイドやハードリピーターさんたちから聞かされる「Aポイント」というハンマー群れポイント。

自分は、まだ、ここでハンマーの群れを見たことは一度も無いのだが、「Aポントに出ていると、経験少ない人でも簡単に見せられて、楽なんですけどね〜」と神子元ハンマーズのオーナーガイド、有松真さんが良く口にする。

Aポイント。
これがどんなポイントで、どんな条件が揃えば、「ビギナーからでも見せられる楽なポイントなのか?」

実際にここでハンマーを見た経験の無い僕には、「Aポイントのハンマー経験」を語れないので、インパクトに欠けるかもしれないが、真さんの話を総合するに、こんな感じだ。

まず、Aポイントというのは、神子元島の南にあるハンマーポイント、カメ根付近の神子元島寄りの海中。
神子元島から張り出した岩礁の岬になった先端部分がそのまま沖に向かって沈んでいく先に続く、いわゆる、海中にある岬の先端状のポイント。

神子元島の航空写真

航空写真:神子元島 – Wikipediaより

水深は、約15m程。
この海中の岬の先端状の岩礁を「アリーナ」と呼び、そこに着底して、目の前を回遊してくるハンマーの群れを観戦できる。
1ダイブ中ずっとそこに着底していて、ハンマーを見続ける事が可能な場合もあるという。

ここの最重要ポイントは、ほとんどドリフトすることなく、「着底している」だけで、ハンマーの大群をじっくり見れてしまうということだ。

神子元島のダイバー(撮影:越智隆治)

アリーナに着底して、ハンマーの出現を待つダイバーたち

神子元島に黒潮がかかり、常に下げ潮の状態を作り出す事で、Aポイントにハンマーの群れが回遊し易い条件が作り出されるのだという。

「おまけにこの状態のときは、エントリーポイントからAポイントまでは、この流れの陰になっているルートを移動していくので、本当にビギナーからでも、安心して潜れちゃうんですよ」と真さん。

神子元ダイビングを一変させた、革命的なAポイント発見!

今現在、神子元ハンマーズを含む4ショップが加盟している神子元ダイビング協議会の規定で、神子元島周辺ポイントでダイビングできるのは、ダイビング本数30本以上のダイバー限定となっているが、「正直、このAポイントだけで潜るなら、この30本以上限定ってのも、無くしてもいいんじゃないかな〜って思う事もあるくらい、楽にハンマーが見せれるし、見れちゃうんですよ!」。

では、そんなAポイントでハンマーを狙うには、どんな条件が必要なのか。
まずは、潮の流れが下げ潮の状況であること。
水温が24〜25度であること。

時期的には、7月から8月くらいが、このAポイント狙いの時期に当たるそうだ。

神子元島のハンマーヘッドシャークの群れ(撮影:大久保正昭)

大久保正昭さん提供 Aポイントに姿を見せたハンマーの群れ

神子元ハンマーズでは、毎日ダイビングのログを更新して、その日の状況をゲストに伝えている。
その情報などを参考に、「Aポイントでハンマー群れゲット!」みたいな書き込みがあったら即現地に足を運ぶ事が、ハンマーゲットの重要な要素だ。

このAポイントが発見され、注目され始めたのは、4年程前の事。
この発見とポイント開発は、神子元でのハンマー狙いのダイビングを大きく一変させた。

一部の特権階級だけが楽しめる嗜好品が、一般庶民でも簡単に手に入るようになっちゃった的な、ある意味革命的なポイントと言っても過言では無いのだ。

なんて贅沢、かつがっかりなポイントが開発されてしまったのか!
ドリフトしながら、ハンマーの群れをゲットする。当たるか、外れるかの大ばくち的なダイビングを好むハードリピーターや、僕のようなダイバーからすると、「誰でも簡単に見れてしまうその状況」に物足りなさを感じるかもしれない。

しかし、そうは言っても、100匹以上のハンマーの群れが着底している頭上をゆっくりと通過して行くこともあるそうで、「じっくり撮影したいのであれば、やっぱりAポイントですね」とのこと。

でも、「Aポイントだったら、プロが撮っても、素人が撮っても、同じようなすごい写真が撮れちゃうんだよね〜」と遠慮知らずのハードリピーターさんに言われると、「Aポイントじゃなくて、やっぱり中層で勝負したいぜ」と強がりを言ってしまうけど、本当は、早くAポイントでハンマーの群れをゲットして、楽に撮影がしたい!というのが本音だったりする。

ということで、僕も、神子元ハンマーズのダイビングログをブックマークして、日本にいて、伊豆に行ける可能性のある間は、毎日状況をチェックするのが、日課になってしまっている。

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さて、神子元ビギナーが神子元を楽しむために知っておくといい4つのこと、以上です!

これを読んで、不安が少しなくなった!心の準備ができた!神子元のダイビングが楽しみになった!
なんて、思っていただければ幸いです。

是非とも神子元のダイビングとハンマーの魅力を堪能してみてください!

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PROFILE
横浜在住のダイビング歴一年ちょっとの新米ダイバー。ハタチのお気楽大学生。
大学生ダイビングサークル、「Ocean KIDs」でダイビングに出会い、同サークルの現会長を務める。
これからの人生において自分は大好きなダイビングとどんな付き合い方をしていくか、ということを考える毎日。
実はダイビングと同じくらい音楽が好きだったりして、音楽雑誌「OTONARI」の刊行にも関わる。
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