【ダイビング×環境教育】発見を学びへ!米発プロジェクト・ワイルドを紹介

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ダイビングは、楽しみながら環境活動・環境教育ができる最高のアクティビティである。海に潜ることで新たな発見があり、それらが学習につながる瞬間に出会う。

今回紹介するプロジェクト・ワイルドは「気づきから理解へ、理解から責任ある行動へ」をスローガンに掲げたアメリカの環境教育プログラム。自然や生き物に触れてみたり、身体を動かしたりするなかで、「イルカって触るとツルツルしているんだ!」「タコはなんで吸盤があるの?」といった気づきや疑問が生まれ、解決することで学びへとつながる。
プロジェクト・ワイルドの教材には、子供たちの「考える力」が引き出されやすい内容のアクティビティが詰め込まれており、活用方法が多種多様。学校だけでなく企業や水族館、動物園といった様々な施設がプロジェクト・ワイルドを導入しはじめている。こういった環境教育プログラムを参考に、ご自身のダイビングスキルをアップデートするきっかけになれば幸いだ。

地球のためにアクションを起こそう!

アメリカで生まれた環境教育プログラム、プロジェクト・ワイルドとは?


プロジェクト・ワイルドとは、子どもたちの発見を学びにつなげるアメリカの環境教育プログラム。自然や環境のために行動できる人」の育成を目的としており、実際に体験しながら「考える力」を引き出すアクティブラーニングといった指導方法を活用している。

アメリカでは1980年以来開発が続けられており、ここ日本では、1999年に一般財団法人公園財団がはじめて導入。環境省、国土交通省から環境教育推進法における人材認定など、2006年より教育事業として登録されている。また、地域活動や学童保育、動物園や水族館、企業のCSR活動などといった場面でプロジェクトワイルドを導入する事例も増加傾向にあるとのこと。

5つの分野に分かれた環境教育プログラム

教材には子どもたちが夢中になる楽しさが盛り込まれた約200のアクティビティがある。5つの分野に分けられているため、年齢や場面に適した学習を選択し、より理解を深めることができるだろう。

・本編
陸上動物の生息地や生態系も含めて、自然環境保全の大切さを学ぶプログラム
・水辺編
海・川・湖沼など、水域を生活圏としている水棲動物を通して、自然環境保全の大切さを学ぶプログラム
・鳥編
日本の野鳥を題材とし、アメリカのアイデアを導入し作成したテキスト。身近でありながら意外と知らない事が多い鳥について、学びを深めていくプログラム
・Growing Up WILD(幼児向け編)
生き物を通して、自然の中で子どもたちの素晴らしい感性を引き出していくプログラム
・サイエンス&シビックス編
野生生物に対する人間活動の影響について調査研究し、地域社会の仕組みを知ることを通して、持続可能な環境保全について学びを深めていくプログラム

アクティビティを活用するには?


プロジェクト・ワイルドでは、環境教育プログラムをアクティビティと称し、それらを指導するためにはプロジェクト・ワイルド・エデュケーターと呼ばれる資格が必要とされている。取得後は、教材に記載されたアクティビティを用いてさまざまな場面で活用することができるようになる。
最近では学校だけではなく、動物園や水族館、企業などでも取り入れられている。18才以上の人なら1~2日の講習会を受講することで取得が可能なので、環境教育に興味のある人には特におすすめ。以下のアクティビティ事例を参考に、環境教育プログラムのイメージを膨らませていただきたい。

・水辺編 みんなのトンボ池 

人間によるあらゆる土地利用は、生きものの生息地に対して良し悪しに関わらず影響を与える。
紙にトンボ池を描き、人間が暮らすために必要な施設、住居、お店、公園などを配置。生物と人間の共生をどのように成り立たせるか、話し合いながら街を作っていく。

・水辺編 魚を作ろう 

水棲生物は、長い時間をかけて適応するための進化を繰り返して生まれた生き物。子どもたちに魚の口や体の形、色、繁殖方法などが描かれたカードを配り、それぞれの特徴について話し合いを行いオリジナルの魚をデザインしてもらう。自分の作成した魚の性質や環境への適応能力の内容などを発表する。

・鳥編 大空のオリンピック 

鳥たちのさまざまな運動能力をオリンピック種目のように見立て、子どもたちに体を動かして挑戦してもらう。「鳥のように食べてみよう」、「はばたき回数」など運動を通して鳥たちの卓越した能力に気づくとともに、自分と鳥の記録を比較することから、算数の要素も含まれている。

プロジェクト・ワイルド活動報告

実際にプロジェクト・ワイルドのアクティビティがどんな場面で活用されているかを紹介する。

・一般社団法人 スピリットオブセイラーズ
地球環境を考えるプログラムとして、アクティビティを活用。YouTubeにて「人間が地球にある水をあとどれくらい使えるのか」や「海のプラスチックゴミ」を学ぶアクティビティを発信している。
https://www.projectwild.jp/cases/tabataeri/

・東京eco動物海洋専門学校講師 木村幸一郎さん
動物園や水族館での使用を想定し、工夫を加えたアクティビティを作成。来園者の方々に「楽しく、分かりやすく、無理なく」森林(PLT)(※1)、海洋(project WET)(※2)、動物について学んでもらうこと、人も動物も同じ地球に生きる一員であることに気づいてもらうことが目的。また、学生たちの進路選択にも役立つと大いに期待している。
https://www.projectwild.jp/cases/kimura/

(※1)PLT :http://eric-net.org/plt02.html
(※2)project WET:https://www.kasen.or.jp/wet/tabid121.html

一般財団法人公園財団 プロジェクトワイルド事務局

〒112-0014
東京都文京区関口1-47-12 江戸川橋ビル2階
Tel:03-6674-1190
https://www.projectwild.jp/

観察できた魚を図鑑で調べることや独特な地形の背景など、潜ることは自分次第で学びに結びつけられる。
知識が増え、楽しみの幅も広がれば水中世界が一層有意義な時間になるだろう。
ダイビングを環境教育の一環として考え、楽しみながら地球のために行動できるダイバーを心がけていきたい。

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PROFILE
静岡県西伊豆町出身。

ドルフィントレーナー専門学校を卒業後、ダイビングインストラクターや操舵手といった海に関わる職歴を持つ。

現在は、ライターとして「地球に暮らす全ての生き物がHAPPYな未来を」と願い、記事を書く。
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