エア切れで緊急浮上!アクシデント映像から予防法を考察する
ウェブ上にはダイビングのアクシデント映像があふれています。
多くが英語圏のものなので日本人ダイバーはあまり見る機会がないのかもしれませんが、教訓になるものも多く、臨場感たっぷりなので身に沁みます。
そんなアクシデント映像の中で、ふと目にしたものをひとつご紹介します。
ご覧いただく前に簡単に内容を説明すると、ドリフトダイビングをするグループの、とある男性ダイバーが撮影した映像で、ご本人がアクシデントの当事者になってしまいます。
動画をスタートすると「A Dangerous Turtle」というタイトルが出てきますが、何も人を襲う危ないカメがいたのではなく、カメに気を取られてエア切れというお話。
映像の流れ
- ドリフトダイビング中、カメを見つける
- 強い流れに逆らって、一生懸命泳いでカメのもとへ
- しばしカメと戯れていると残圧チェックを忘れて……エアが渋い!
- 残圧を確認するとちょっとしかない
- ドリフトでどんどん進んでいく仲間たちに異変を知らせようとカメラで(たぶん)タンクをカンカン叩く
- 気づいてくれそうにないので緊急浮上(とんでもない浮上スピード。仕方ないけど)
- 水面に浮上したものの、岸まで500m
- ちょっと離れたところに船を発見。とりあえず、自分が無事ってことを伝えるために、マスクを外して首にかける
- 気づいてもらえるように、再び、カメラで音を出してみるも気づかれず
- ボートに気づいてもらえるようにフィンを振る
- 突然、船が現れたので、「ちょっと問題ありなんですけどー!」と叫ぶと寄ってくる
- ボート上の人が「あたなの船はどこ?」と聞くので、「それがわからないんです」と答えると「待ってろ」と
- どうやら自分の船はすぐ側にいたようで、ボートの人が何やら叫ぶと、自分の船が登場
- ふ~助かった。バディの娘も満面の笑み
ということで、実際の映像がこちら。
批判は簡単ですが、感触としては、誰にでも起こりそうな事態。
アップしてくれたことに感謝し、この映像から学べることを、当たり前のものも含めてまとめておきます。
“たられば”事故予防
- ドリフトダイビング中、カメを見つける
- 強い流れに逆らって、一生懸命泳いでカメのもとへ
→なるべく流れには逆らわない。逆らうのであれば、泳がずに水底をつかんで進む、呼吸を意識的に深くゆっくりする、などがオススメ - しばしカメと戯れていると残圧チェックを忘れて……エアが渋い!
- 残圧を確認するとちょっとしかない
→何かに夢中になるときこそ、意識して残圧とダイコン(水深やDECO)をチェック - ドリフトでどんどん進んでいく仲間たちに異変を知らせようとカメラで(たぶん)タンクをカンカン叩く
→緊急時は音が鳴るものがあるとよい。水中ブザーや指示棒など - 気づいてくれそうにないので緊急浮上(とんでもない浮上スピード。仕方ないけど)
→エア切れを起こすとどうしても浮上速度が速くなりエアエンボのリスクが上がる。なるべくゆっくり - 水面に浮上したものの、岸まで500m
- ちょっと離れたところに船を発見。とりあえず、自分が無事ってことを伝えるために、マスクを外して首にかける
- 気づいてもらえるように、再び、カメラで音を出してみるも気づかれず
- ボートに気づいてもらえるようにフィンを振る
→はぐれてしまう、最悪漂流、ということは誰にでもあり得ること。ドリフト時は特に、ホイッスルやミラー、シグナルフロートなど、エマージェンシーグッズの携帯を。何もないときにフィンを振るのは有効 - 突然、船が現れたので、「ちょっと問題ありなんですけどー!」と叫ぶと寄ってくる
- ボート上の人が「あたなの船はどこ?」と聞くので、「それがわからないんです」と答えると「待ってろ」と
- どうやら自分の船はすぐ側にいたようで、ボートの人が何やら叫ぶと、自分の船が登場
- ふ~助かった。バディの娘も満面の笑み
→全体としては、バディの問題。気に掛けるべきだし、もっと近くにいるべき
※
こうした映像を見て「ダイビングって恐ろしい!」と思うのは短絡的ですし、実際、ダイビングが危ないものとは思いませんが、たまにこうした映像を見て、少しキュッと気持ちを締めることは大事かもしれません。
おまけ
YouTubeの書き込みをざっと読むと、「タイトルに同意しかねる」とか「生物に触るな!」とか「バディは誰よ」みたいな、ヒステリックだったり、文脈とは異なる点を批判するような書き込みがちょくちょく見受けられます。
あらためて、こうしたアクシデントを公開することのリスクを感じます。
公開したことへの評価に目がいかず、「こうすりゃ良かったんだよ!」と高みから批判するだけだと、事故を隠す空気に加担してしまうことがわからないんですかね…。
同時に、バディだった娘さんが、感情的に反論せず、随時、「ありがとうございます」「確かにおっしゃる通りで…」「私たちはラッキーでした」と丁寧に返答し、「もっとバディを気にかけるべきだった」「浮上速度に気を付けます」「その後、エマージェンシーグッズ買いました」などと冷静に改善点を述べるというレスポンス力の高さを感じました。
このように、自分のアクシデントを公開したとき、「こうすりゃ、良かったんだよアフォ!」という反応が予想されますが、「だから反省してるっつてんだろボケェ!」と返しても意味がなく、何度でも失敗は認めて、冷静に改善点を述べることが次につながるのかもしれません。
つまり、特定の誰かにレスしているようで、読んでいる不特定多数の第三者を意識したレスが、こうしたアクシデント公開の時には重要なポイントなのでしょう。