ダイビングの3大死亡原因

〜やどかり仙人の炬燵話〜

仏の顔も三度とやらもうします。

すでに2度DANアメリカの死亡事故ワークショップについてお話したのですが、
死亡事故率ばかりを取り上げて、死亡事故の原因が分からんのではと、
モヒカン頭から湯気を出してるテラ編集長ににらまれて、ダイビングの3大死亡原因のお話しです。

あくまでも、これはDANアメリカが開催した
ダイビング死亡事故ワークショップの会議録からのデータであります。
そのままずばりと日本のダイビング事情に合うとは限りませんが、
ダイビングの安全のヒントが隠れていると思っとります。

DANアメリカとDANヨーロッパのレポートによると、3大死亡原因は以下の通り。

■DANアメリカメンバー
 1. 溺れ(70%) 2.AGE(エアエンボリズム14%) 3.心臓病(14%)
■DANヨーロッパ
 1. 溺れ(70%) 2.心臓病(13%) 3.AGE(12%

どちらも大変よく似たデータが提出されております。
この3大原因で事故の95-98%を占めております。

溺れが圧倒的に多いのですが、溺れは原因であるというよりも、
いろいろな原因から起きた結果というべきでありまして、
当然、心臓病やAGEの事故者も重複して入っている可能性もあります。

ヤドカリ爺は老人であるので、心臓病という原因が気にかかります。
AGEは高圧空気を使用するスクーバ国有のトラブルですが、
心臓病はダイビングの事故そのものというより、ダイビング中の病気というべきでしょう。

なぜこれほど心臓病が目立つのでありましょうや。
DANアメリカのもう1つ興味深いデータがあります。

1992年から2003年までの10年間で、
メンバーの平均年齢が3歳ほど上がって40歳を越しております。
アメリカのダイバーの平均年齢はかなり高いようであります。

それだけでは高齢化社会の昨今当然でありますが、
1992年ではメンバーの平均年齢と死亡事故者の平均年齢の差は約2年。
ところが2003年では5歳の年齢と差が開いております。

どうもこれも、ダイバー人口の高年齢化と関係してようです。
そして、高年齢化する以上に、その年齢がもたらす体調が、
さらに大きくリスクを広げているといえそうです。

ではどれぐらいの年齢層がダイビング中の心臓の病気で亡くなったかというと、
35-39歳以下の年齢層では死亡事故者の5%ぐらいなのに、
50-59歳の年齢層以上になると30%にもなっております。
6倍にも跳ね上がるということであります。

また死亡しなくても障害が残るような、心臓病関連のトラブルのリスクを見ると、
49歳以上の年齢層はそれより若い年齢層のなんと12.9倍になるのだとか。
こうなるとダイビングの死亡事故の原因のかなりの部分が、
年齢に起因する体調のせいだと統計はいっております。

ダイビングはライフタイムスポーツといわれてはおります。
またベビーブーマーが支えたレジャーともいわれております。
ぜひ、この世代には引き続きダイビングを楽しんでほしいとヤドカリ爺は願うのですが、
年齢とともに心臓病のリスクが大きくなるのは、
ダイビングのことだけではなく、すべてのスポーツで言えるのでしょう。

登山中の心臓発作は、処置しだいで病気ですむわけなのですが、
水中環境ではどうしても死亡事故につながってしまうという、
悲しい宿命的なリスクを背負っております。

しかし、見方を変えれば、死亡事故の原因の13-14%を占めている心臓病をどうにかすれば、ダイビングの相対的な事故率が下がるともいえるわけです。
だからといって、もともと心臓病の因子を持っている人には、
ダイビングをご遠慮いただこうなんて差別的極論も困ります。

心臓病といった病気は年齢ともかかわっております。
ダイビング事故に占めるダイビング中の病気、実に頭の痛い話しではあります。
それが理由でダイビングを引退したヤドカリ爺には他人事ではございません。

どうもつらいお話しになっちまいました。きょうのところはこのへんで。

 

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PROFILE
1964年にダイビングを始め、インストラクター制度の導入に務めるなど、PADIナンバー“伝説の2桁”を誇るダイビング界の生き字引。
インストラクターをやめ、マスコミを定年退職した今は、ギターとB級グルメが楽しみの日々。
つねづね自由に住居を脱ぎかえるヤドカリの地味・自由さにあこがれる。
ダイコンよりテーブル、マンタよりホンダワラの中のメバルが好き。
本名の唐沢嘉昭で、ダイビングマニュアルをはじめ、ダイビング関連の訳書多数。
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