桜島ダイビングレポート[前編] 錦江湾の火山灰エリアは不気味でカラフル!?

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桜島と言えば、鹿児島の活火山!その麓に広がる錦江湾は火山の大噴火によってできたカルデラ湾で、海水が外洋の水と循環するには30年ほどかかるといわれている。閉鎖された海は決して透明度が良いとは言えないが、見方を変えれば独特な景観を有しているとも言える。特に春から秋にかけて、桜島からたっぷりと流れ込んだ植物プランクトンの色とも言われる緑色が印象的な海なのだ。

2年ほど前にオーシャナでも水中カメラマンの越智さんが取材で訪れており、緑の海を乱舞するアカオビハナダイやタコクラゲの群れなど、その独特な景観に目を奪われ、いつか潜りたいと思っていた場所。

▶︎ワイドで魅せる錦江湾の魅力

9月末、もともと福岡で玄界灘を潜る予定だったのだが、海況が悪くリクエストしていたポイントに行けなくなってしまったため、兼ねてから行きたいと思っていた鹿児島へ急遽行き先を変更。思いがけず、その緑の海を潜れることになったのだ。

今回は取材ではなく、実はプライベート。2日間にわたり桜島の麓に広がる錦江湾を、堪能させていただいたので、もう勝手に前後編に分けてレポートを書いちゃいます(笑)。

火山灰が広がるポイント「第5避難港」

桜島

桜島へは鹿児島都市部の港からフェリーで15分ほど。なんとこのフェリーは24時間運航しているとのこと。車ごと乗り入れて、短い15分の間に車を降りてデッキに上がる。

桜島を見たことはあるが、上陸するのは初めて。火山口から水蒸気が上がる桜島を眺めながら、セックスマシンガンズの「桜島」を「ドカンドカン♪」と口ずさんでいたら、あっという間に到着のアナウンスが流れ、急いで車に戻る。着岸してゲートが開くと「待ってました」と言わんばかりにフェリーから車が流れ出る。

道路脇の溶岩や、見慣れない火山灰回収の袋を横目に15分ほど車で走ると「第5避難港」に着く。

回収してくれるらしい

「避難港」とは暴風雨やしけが発生した際に、航行中の小型船舶が避難するための港だ。今回はここからエントリー。

まるで宇宙旅行!?不気味な海で出合う
色とりどりの生き物たち

階段から海に入り、浅瀬のゴツゴツとした岩のエリアを2〜3分ほど進むと、そこには火山灰が海底に沈殿し、不気味な雰囲気を醸し出す緑色の海が。所々に生えるムチカラマツ、そして無造作に転がる火成岩と思われる岩など見慣ぬ光景が広がる。海底は水平ではなく沖に向かって傾斜しており、覗き込むとその深みに吸い込まれそうだ。錦江湾は内湾でありながら深海を持つ珍しい場所で、その深さは200m以上にも及ぶという。

ふと岩に目を移すと蛍光オレンジの「エントウキサンゴ」が。このポイントを潜ってる最中、私はずっと手塚治虫の漫画「火の鳥 未来編」のシーンを思い出していた。核に汚染されて建物も植物もない荒廃した地球。人間は地下に都市を作って生活しているのだが、ある日戦争が起き5つの都市が一斉に爆発する。その瞬間、それぞれの入り口となる、地上に突き出た穴からキノコ雲が上がる。それを地上のシェルターから眺める登場人物たち。私はまさにその一員になった気分で、暗い緑色の海に突然現れた鮮やかなエントウキサンゴを眺めていた。越智さんのレポートにも書かれていたが「地獄絵図」とはよく言ったものだ。

それにしても火山灰に覆われた海底では、色鮮やかな生物たちの存在感がより増しているように思える。最近、沖縄の青い海で「サンゴキラキラ〜!」とか言いながら潜っていたので、全く違う光景に宇宙旅行にでもきたような気分だった。

真っ白なフウセンカンザシゴカイが岩に咲く


ピンク色のアカオビハナダイとその幼魚


イルミネーションのようなウミシダから青いナガサキスズメダイの幼魚が顔を出す


宇宙空間を漂っているようなビシャモンエビ

そしてこの火山灰の砂地に住む錦江湾のアイドルといえば「サクランボウ」。通常の「ネジリンボウ」よりも色が赤く、桜島の麓で見られることからそう呼ばれている。急に近づくと驚いて穴に引っ込んでしまうため、慎重に近づく。この個体は目の当たりが赤っぽくなっているだけだが、普段は体全体が赤くなったサクランボウがよく見られるという。

カラフルなマメスナギンチャクにどハマり

錦江湾で一番印象的、というかどハマりしてしまったのがマメスナギンチャク類。事前にガイドのメイさんから「色んな色があって綺麗ですよ〜」と言われていたのだが、正直「イソギンチャク?ふーん」くらいにしか思っていなかった。しかし所々に岩に張り付くマメスナギンチャク類をよく見ると、思った以上に色鮮やか。紫やオレンジ、緑、中にはお花のような模様のものも。

シダの向こうに見えるマメスナギンチャク

何もなさそうな不気味な雰囲気の中で見つけたので余計に感動したのかもしれない。エントリー口の階段横にも壁いっぱいにカラフルなマメスナギンチャクが張り付いており、シュノーケリングでもいいからずっと写真を撮っていたいほどだった。その日ダイビングを終えてみると、私のカメラの半分以上はマメスナギンチャクで埋め尽くされていた(笑)。私があまりにも「マメスナマメスナ」連呼するものだから、一緒に潜りに行ったダイバーたちには「なぜマメスナギンチャク!?」と驚かれたが、いいじゃない、可愛いんだから。布の柄にしたい。

帰りはフェリーでうどんチャレンジ

2本のダイビングを終え桜島内の温泉で温まり、またフェリーで戻る。フェリーの中にはうどん屋さんがあり、ダイビング後に食べて帰る方が多いそう。しかしフェリーの乗船時間は15分ほど。車への移動も考えると10分程度で注文して完食しなければならない。慌ただしそうだが「これはチャレンジしないと!」ということでうどん屋へ。前職、時間のない営業マン時代に培った立ち食いそば屋での実力…見せてやるぜ。

うどん屋では前に2人注文している人がいて思わぬタイムロス。注文してから出てくるまでも思っていたより時間がかかる。そして出てきたうどんは容赦ない熱さ。

まじでアッツアツ

急いで食べようとするも熱くてなかなか進まない。しかもダイビング後の疲れた体に汁物は染みる…と営業マン時代を忘れ、思わずゆっくり味わっていると到着のアナウンスが。「ここでしか食べられない」と思い、必死ですすりなんとか完食。ドヤ顔で食器を返しに行くと、壁のポスターに「天文館で桜島フェリー名物のあの味が楽しめる」の文字が。…どうやら鹿児島の繁華街、天文館でも同じうどんは食べられるらしい。

とはいえタイムリミットがあるこの緊張感はフェリー内でしか味わえないので、桜島に行った際にはぜひうどんチャレンジをして欲しい。

不気味だがそれが魅力。そして芽生えるマメスナ愛

さて、初めての錦江湾ダイビングの感想を一言で言えば、「不気味」であったが的確なのかもしれない(笑)。だからこそ想像力が非常に掻き立てられ、潜っている間中ワクワクドキドキしていた。見たことがある生物でも、他にはない雰囲気からか新鮮に感じられ、ガンガゼにすらもギリギリまで近づいて眺めていた。実際はほとんどマメスナに時間を費やしていたのだが(愛を込めてマメスナと呼ばせていただく)。

2日目には、錦江湾で一番見たかったアカオビハナダイの群れに出合い、そして天然の溶岩でできた港まで潜りに行ったので、後編もぜひお楽しみに!

後編はコチラ>>>桜島ダイビングレポート[後編] !海なのに雪景色!?な溶岩の港

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PROFILE
IT企業でSaaS営業、導入コンサル、マーケティングのキャリアを積む。その一方、趣味だったダイビングの楽しみ方を広げる仕組みが作れないかと、オーシャナに自己PR文を送り付けたところ、現社長と当時の編集長からお声がけいただき、2018年に異業種から華麗に転職。
営業として全国を飛び回り、現在は自身で執筆も行う。2020年6月より地域おこし企業人として沖縄県・恩納村役場へ駐在。環境に優しいダイビングの国際基準「Green Fins」の導入推進を担当している。休みの日もスキューバダイビングやスキンダイビングに時間を費やす海狂い。
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