バショウカジキと泳ぐために必要なこと ~カリブ海からレポート~
2014年~2015年の年末年始にかけて、バショウカジキスイム2015のweek1に参加してきましたのでレポートします!
今年のバショウカジキスイムの乗船方法は、フルトリップ(6日間乗船)とエコノミートリップ(3日間乗船)の2種類あり、全部で8人のゲストに参加していただきました。
オーシャナ代表で水中カメラマン越智隆治主催のバショウカジキスイムは、1回の乗船人数が基本的にゲスト4人まで。
少人数制の中、実際に経験することでさらにわかった、“バショウカジキに会うために必要なこと(必要と感じたこと)”をレポートします。
少人数の理由1
海がかなり荒れても船は出ます
自然相手のバショウカジキスイム。
私が乗船した日々は、今までに味わったことがないような荒れた海となりました。
前後左右お構いなしに揺れまくり、見える水平線は右に60度、左に60度の繰り返し。
海上では基本的に立って歩くことは困難で、這いつくばって移動します。
それでも滑って、人に体当たりしてしまうこともあるくらい。
一日中(約8~9時間)出ている外洋には、まったく島がないので、島陰に隠れる波の少ないエリアに移動するなどということはできません。
アトラクションに乗っているかのごとく揺れ続けるので、船に弱い人は完全にダウンしてしまう場合もありますが、そんな時に横になって寝て行けるのがこの人数なのです。
36フィートの船に基本的にはゲスト4人なので、全員が横になれ、セミドライのエリアには厚いマットが敷いてあるので背中も痛くありません。
「そんなに全員が全員寝ることなんてあるのかな」と思っていたのですが、本当に全員寝ている日も何日かあり、限られたコンディションの中でもベストの体制でバショウカジキに会うためには、船の快適さは譲れないものがあるように思いました。
少人数の理由2
バショウカジキがいつも大群とは限らない
2年程前から、バショウカジキの数が激減しているとのこと。
原因は諸説ありますが、今年の場合は水温が27度と高いことが原因の1つにもなっているようです。
例年の水温は25度くらいで、3mmのウエットスーツでも寒いようですが、week1の最終日はラッシュガード1枚で海に入れるほど暖かく、越智さんも「今年は水温が高すぎる、普段ならラッシュで泳ぐとか無理だからね」と信じられないといった様子。
バショウカジキは、1個体見せられるか、見せられないかといった状況の年末年始でした。
そんな状況の中、カジキが水面に現れたとして、その1匹のカジキの前に人間が10人も20人もドボンと飛び込んだとしたら、その後のことは想像に難くないと思います。
少人数であることは、見られる可能性を最大限引き上げると実感しました。
フィッシングボートの理由
魚探でカジキをリサーチ
お世話になっている船は、アメリカ人のアンソニーがオーナーを務めるLILLY Mというフィッシングボート。
船尾には釣竿4本、左右には、デコイ(ゴムで作られた偽の魚)をぶら下げたり、他の釣り糸が何本も仕掛けられるようになっています。
また、この船には魚探もついていて、海底深くに潜むバショウカジキも探すことができます。
海底にいるバショウカジキを発見した際には、その周りで疑似餌によるおびき寄せ作戦を長時間できるメリットがあり、これらがダイビングボートと大きく異なる点で、今年の年末年始には大活躍でした。
水温が高いことも関係して、2014年の年末の時点では、まだバショウカジキが出ていないという情報は入っていたので、デコイでおびき寄せて、興味を持って水面に上がってきたカジキを見るという方法を用意してくれていました。
この方法ができるのはフィッシングボートを持っているアンソニーの会社だけ。
LILLY Mの他にも何隻かボートを所有しているので、フィッシングでバショウカジキを釣り上げた際には、こちらの船に連絡して、釣り上げる前に一緒に泳がせてほしいとお願いし、毎日海に出ていました。
※こちらのフィッシングでは、釣り上げたバショウカジキを、基本的にはリリースします。
「デコイに興味を持って水面に来たバショウカジキと泳いだことはあるけど、フックでつられているのとは泳いだことない。でも今回はそういう方法を他の船にも頼むしかない」と越智さんも言い、実際、年末年始にバショウカジキと泳げたのはLILLY Mだけだったとの情報が入るほどまでに、私たちがいた1週間は厳しいものでした。
キャプテンは元漁師のロヘリオ
船だけ素晴らしくても、バショウカジキを探すことはできません。
LILLY Mキャプテンのロヘリオは腕の立つ元漁師で、このあたりの海の事を熟知しています。
バショウカジキの探し方は、イワシを捕食するために海上を飛ぶグンカンドリの山を探して、その下に居るイワシを捕食しに上がってきたバショウカジキと泳ぐというのが、通常の流れ(イワシからしてみれば、上からも下からも食べられるわけですね(笑))
ただ、過去にキャプテンのロヘリオは、たとえ鳥山があったとしてもそこには行かず、まったく鳥のいないエリアに船を走らせたこともあったそう。
さすがは元漁師で海の事を熟知しているだけあり、さらには先ほどの魚探も手伝って、バシッとバショウカジキの場所を当てることも多いのだとか。
今回は、鳥山を探す係には、ウアンという男性が付き、彼もまたフィッシングには長けていて、疑似餌をいろいろと変え、その形にも工夫し、バショウカジキだけでなく、私たちの船上でのおやつにもなったマヒマヒや、夕飯になったキングフィッシュも大量に釣ってくれました。
感動的な最終日
少人数でのフィッシングボートチャーター、魚探、キャプテン。
すべては、バショウカジキを見せるため。
今年の年末年始は過去最悪の状況でも、ゲスト8名全員がなんとかバショウカジキを水中で確認することができましたが、願わくばイワシを捕食しているバショウカジキを見たいもの。
「バショウカジキは見せられる確率が低いので、できれば5日間くらいは乗船してほしいし、やはり2月がシーズンなので、そこに来てもらえれば」と越智さん。
そんな話をしていたところ、「来年2月にもう一度来ます」と何人か言ってくれました。
一度見てしまうと癖になる、バショウカジキ。
私もイワシを追いかけまわすバショウカジキを、次回はこの目で確認したいと思います。
今年の年末年始のバショウカジキスイムの結果は、初日は何も見られず、水にも入らずで帰ってきたものの、2日目からはフックにかかったバショウカジキや、デコイに連れられて船の後ろについたバショウカジキと泳げたり、他にもミナミハンドウイルカ、マヒマヒ、マダラトビエイ、シルキーシャークと泳いだりすることができました。
最終日には、それまで1日に2個体が最高だったのに、7個体のバショウカジキと遭遇!
ロヘリオとウアンが突然、「セールフィッシュ!!セールフィッシュ!!!」と叫ぶので、「1個体かな、せめて写真の1カットに2個体入れば……」なんて思いながら急いで海へ飛び込むと、目の前には1列に整列した4体のバショウカジキの姿が―――!
しかもフックなし!
奇跡が起きたと思いました。
いや、見せてくださいという想いが海に通じたという感じでした。
その後もマヒマヒ、マダラトビエイ、シルキーシャークがカジキとコラボするシーンにも遭遇でき、テレビの編集でもしたかのような感動的な最終日を迎えました。
Week1は6日間中4日間バショウカジキと泳ぐことができ、確率は6割強。
week2は1月下旬から。
この2週間で北風が吹いて水温が下がることを、まずは願うばかりです。