“奇跡の海”に潜るということ~インドネシアの秘境・ラジャアンパッドで見た風景
オーシャナの皆様、はじめまして。井口仁と申します。
石垣島を拠点に世界各地の海を潜り、水中写真家としても活動をしています。
今回は、インドネシアはラジャアンパットに行ってきました。そう、奇跡の海です!
どんな海が、空が、陸が見られたのか、レポートをご紹介します。
奇跡の海・ラジャアンパッドを潜る
インドネシアのジャカルタからソロンへ国内線で移動。
空港に降り立つと、東南アジア特有の風が肌を湿らせ、「南国に来たなぁ」と実感する。
今回、ラジャアンパットを取材するにあたり、まだまだ日本での認知度が高いとは言えないラジャアンパッドの魅力を充分にお伝えすることができるだろうかと不安を感じていたが、そんな不安を一蹴するにこやかな現地スタッフの笑顔に迎えられた。
3月某日。現地の季節は雨期。
これも不安要素の一つであったが、現地のスタッフ曰く「ここ最近は乾期のような気候が続いていますよ」とのこと。
自然と対峙し、自然の魅力をありのまま伝えることが現地のスタッフとしても、もちろん取材に入る者の心構えでもあるのだが、やはり晴れを期待してしまう。
さて、ここからが本番だ。
今回お世話になったのはダイブドリームインドネシアさん。
“無駄に長いブリーフィング”で有名な唐澤さん率いるクルーズ船HATIKU号に乗り込み、愛機を組み立てながら、ワクワクと緊張の交差を楽しんだ。
まずは歴史のお勉強?
今回のラジャアンパッドクルーズでは、HATIKU号に乗り込んでから最初のダイビングまで、帆船のスピードでゆっくりと過ごす時間があった。
日本からの長旅の疲れ、固まった筋肉と緊張をほぐすには充分な時間だ。
そして、そんな時間も飽きさせない工夫と配慮が随所に見られた。
まずは馴染みの薄いインドネシアやラジャアンパッドの歴史的背景。“無駄に長いブリーフィング”唐澤氏の真骨頂だ。
内容はここでは割愛するが、大学の講義の一コマを超える時間を、参加者の皆さんと和気あいあいと過ごすことで、これから始まる1週間の船旅を快適なものにしてくれた。
1本目からラジャアンパッドの魅力に圧倒される
夕刻に近づいた時、今回のダイブクルーズの1本目「ヤムスロープ(YumSlope)」にエントリー。
各ポイントに適したレンズを選択できるように、ホワイトボードにはポイント名の後にⓌとⓂの印がつけられている。
カメラ派にはピンとくるⓌワイドとⓂマクロの印だ。
1本目はⓂマーク。
ラジャアンパッドの固有種や、日本にもいるお馴染みの生物が、これでもかと言わんばかりに溢れていた。
ラジャアンパッドを語るうえで、
やはりワイドな水中風景は欠かせない
朝、カランカランと鐘の音。
「アサゴハンデスヨー」
ここが船の中であることを忘れるほどの快適な空間で気持ちの良い朝を迎え、目の前に広がる“奇跡の海”にエントリーする。
ポイント名は、「ソリドウォール(SoridoWall)」。
なんという贅沢な時間だ。
ここではⓌマークの指示通り、16-35mmレンズを付けてファインダーを覗いた。
「・・・・・・・・・」
もう、言葉にはできない。
海全体が「これがラジャアンパッドです」と主張していた。
これがラジャアンパッドだ!
ラジャアンパッドの代表的なポイント「パッセージ(Passage)」は、とても遠いことから、近年では他の船はあまり行かなくなったとのこと。
しかしだ。
燃料代やクルーズ全体のタイムスケジュールなど、大人な事情を丸めてポイ。
それは、このHATIKU号の船員たちがプロフェッショナルであることを証明していた。
ブラックマンタ
「ラジャアンパッドで潜ってきましたよ」
これを言うためにはやはりブラックマンタをおさえなければならないのだが、洋の東西を問わず、過去・現在、そして未来もガイドたちが口にするであろう「自然なものですから……」
それはもちろんわかっているが、期待せずにはいられない。
ブラックマンタが出現するポイント「マンタサンディ(MantaSandy)」でひたすらピグミーシ―ホーズを観察し、空振り濃厚の中でエキジット時間が近づいてきた。
ラジャアンパッド全体がそうであるように、ここでも気持ちよくドリフトで流されてエキジットに備えた。
その時、黒いあいつが現れた。
戦闘機を連想させるフォルムと体色。
漫画で表現する「どん!!」でも「しゅん!!」でもなく、とても静かでとても滑らかに、僕らの上をくるっと回り、そしてまた濃いプランクトンの海に消えていった。
この海で見た、一生覚めない夢。
また来ることで夢の続きを楽しめる
日本を出国してから、機内泊を含めて8泊9日。今回のラジャアンパッドクルーズは6日間、ナイトダイブを含めて20本も潜ることができた。
世界のどんな海でも見ることができないラジャアンパッド特有の色をファインダー越しに覗き、そして身体全体でそれを吸収し、心地よい疲れと共に瞼を閉じる。
まるで夢の中でも潜っているような感覚で、カランカランという鐘の音で目覚めると、目の前には夢より美しい海が広がっている。
ラジャアンパッドで過ごした時間は、海の中はもちろんだが船の上での時間もまた特別なものだった。
船内にはゆっくりくつろげるスペースが確保され、クルーズを通じてまるで昔からの友人のように意気投合した仲間と歓談を楽しんだ。
誰ともなく、真っ赤に焼ける空に気づいてデッキに集まる。
果たして、自分がダイバーでなければインドネシアのこんな秘境に来ることが一生のうちであっただろうか。
これを読んでいる方もまたダイバー。世界中には、ダイバーでなければ見ることが出来ない景色がたくさんたくさんあるが、このラジャアンパッドはそんな中でも特別な魅力を持つ、まさに奇跡の海だった。
撮影/井口仁
※使用機材:
Canon5DmarkⅣ
Canon100mm F2.8L マクロIS USM
Canon EF16-35mm F2.8LⅢ USM
SEA&SEA MDX-5DmarkⅣ
SEA&SEA YS-D2
井口仁さんのプロフィール
元プロラグビー選手という異例の経歴を持ち、現在は水中写真家と並行し、石垣島でダイビングサービスOceanStudio(オーシャンスタジオ)を経営する。
カメラ派が過ごしやすい環境にこだわった施設内には、ダイビング専用プールやクラブハウス、そして石垣島の古民家風宿泊施設とレストランが併設され、自らが操船するボートで、その日最高のポイントを目指して今日も舵をとる。
▶OceanStudio(オーシャンスタジオ)
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