サンゴについて総まとめ!どれだけ知ってる?種類やその特徴、現状

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シュノーケリングやダイビングで海の中を覗くと、多様な魚類や甲殻類が棲みつく、美しいサンゴを見ることができる。よく見かける一方で、そもそもサンゴって一体何?サンゴってどんな種類があるの?、という疑問にすぐ答えられる方は意外と少ないかもしれない。そこで、本記事ではダイバーなら最低限知っておきたい種類やサンゴを見るのがもっと楽しくなる基本的な生態までを詳しくご紹介。

そもそもサンゴって何?

サンゴは、主に温暖な海洋環境に存在している刺胞(しほう)動物に属する生物。クラゲやイソギンチャクなどもこの刺胞動物に分類され、触手に毒のある微小な針の出る刺胞細胞を持っている。サンゴはその形状や構造、生息する場所の水深・光の強さ・水質・水流・水温などによって大きく形を変え、それぞれが独自の生態系を形成している。

サンゴの基本的な特徴

イソギンチャクのような見た目のポリプ

イソギンチャクのような見た目のポリプ

サンゴは、石灰質(炭酸カルシウム)の骨格とポリプと呼ばれる個体が基本的な構成要素。骨格はウニの殻や貝殻と同じ成分でできており、これがサンゴの土台となる。その表面にあるポリプは、イソギンチャクのような見た目をしたものが多く、中央に口があり、その周りには触手がある。このポリプが分裂して群体をつくるものもあり、ひとつの群体には数百~数万の個体(クローン)が集まっている。その触手を広げてプランクトンなどを捕食する種類もいれば、体内に褐虫藻という小さな藻類を住まわせて、それらが光合成することで得るエネルギーを使って生きている種類もある。

「サンゴ」と「サンゴ礁」

巨大な地形と化したサンゴ礁

巨大な地形と化したサンゴ礁

「サンゴ」というと動物1匹1匹のことを表す。それに対して「サンゴ礁」は、主にハードコーラル(造礁サンゴ)が自らの石灰質な骨格を長い時間かけて積み重ねて形成される巨大な岩礁地形で、その構造があらゆる海洋生物にとっての栄養源としてや隠れ家となっている。サンゴ礁はサンゴ特有のさまざまな形によって隙間などが多くできるため、周囲にはおおよそ9万種にも上るといわれる多様な魚類、甲殻類などが数多く生息し、「海のゆりかご」などとも表現されるほど。サンゴ礁はその周囲の生態系維持に大きく寄与しており、地域の漁業にとっても極めて重要な存在となっている。

サンゴの分布と生息地


サンゴは主に熱帯および亜熱帯地域の浅い海に広がっている。水温が18度から30度くらいまでの暖かい海がもっとも生息に適していると言われており、逆にそれよりを水温が低い海にはサンゴはあまり分布していない。サンゴの種類数は約800種以上で特にグレートバリアリーフやカリブ海、インド洋と太平洋の熱帯地帯に多く生息。日本にも約400種のサンゴが生息しており、特に沖縄や奄美諸島の近海には世界的に見ても数多くの種が生息している。これらの地域では、サンゴ礁が広大な海洋生態系の中核をなし、多くの海洋生物の生息地として機能している。

サンゴの主な種類は3つ

前述にもあるよう、800種以上とサンゴには数多くの種類が存在し、それぞれが独自の形態や機能を持つことで特定の海洋環境に適応している。サンゴの分類は一般的に硬い骨格を持つ「ハードコーラル(造礁サンゴ)」と柔らかい石灰質の骨格を持つ「ソフトコーラル」に大きく分けられる。

ハードコーラル(造礁サンゴ)の種類

緑色をした種類が多く見られるが、ピンクや青、紫といったさまざまな色のものが存在するミドリイシ科に属するウスエダミドリイシ

緑色をした種類が多く見られるが、ピンクや青、紫といったさまざまな色のものが存在するミドリイシ科に属するウスエダミドリイシ

その球状からドーム状の形が特徴で、頑丈な単体または群体を形成するハマサンゴ科に属するコブハマサンゴ

その球状からドーム状の形が特徴で、頑丈な単体または群体を形成するハマサンゴ科に属するコブハマサンゴ

水深10m前後のサンゴ礁や内湾に生息する、サザナミサンゴ科に属するキッカサンゴ

水深10m前後のサンゴ礁や内湾に生息する、サザナミサンゴ科に属するキッカサンゴ

ヘラジカの角のような強固な枝が張りだした形状のハナヤサイサンゴ科に属するヘラジカハナヤサイサンゴ

ヘラジカの角のような強固な枝が張りだした形状のハナヤサイサンゴ科に属するヘラジカハナヤサイサンゴ

ハードコーラルは、その名の通り硬い炭酸カルシウムの骨格を形成するサンゴで、主にサンゴ礁を構築する種類。ハードコーラルの中でも特に有名なのは、ミドリイシ科。ダイビングをしているときにもよく見かける木の枝のように生えているエダサンゴや食卓のテーブルのように丸く平べったく広がったテーブルサンゴといわれるサンゴはすべてミドリイシ科のもので、とても種類や色が多く、見分けがつかないものも多い。また、一見すると見た目が柔らかそうな種でも縮んだ状態で硬い骨格が見えればハードコーラルに分類される。

ソフトコーラルの種類

色鮮やかで水中で美しく揺れる様子がフォトジェニックなウミトサカ目の仲間

色鮮やかで水中で美しく揺れる様子がフォトジェニックなウミトサカ目の仲間

細かく枝わかれしたうちわ状に広がるヤギ目イソバナ科に属するリュウキュウイソバナ

細かく枝わかれしたうちわ状に広がるヤギ目イソバナ科に属するリュウキュウイソバナ

体の補強のため体壁などに砂を埋め込むのが特徴のスナギンチャク目のタマイワスナギンチャク

体の補強のため体壁などに砂を埋め込むのが特徴のスナギンチャク目のタマイワスナギンチャク

ソフトコーラルは細かい石灰質の骨格(骨片)を体の中にバラバラな状態で保持しており、見た目はしなやかで、海の中では波の動きに合わせて揺らめく姿が見られる。サンゴといえばハードコーラルを想像する方も多いが、これもサンゴの一種。伊豆半島でダイビングをする方なら一度はみたことがあるだろうウミトサカやウミアザミなどが代表的な種類。

宝石サンゴ

鮮やかなアカサンゴ

鮮やかなアカサンゴ

宝石サンゴは、ハードコーラルやソフトコーラルとは別物。主に水深100m以上の太陽の光が届かない冷たい深海に生息する硬質のサンゴで、数百ミクロン程度の微細な浮遊物などを捕食して、ゆっくりと成長する。その骨格は、人の歯と同じくらい硬く、磨くと美しい光沢を放つことから、宝飾品として愛されてきた。日本におけるサンゴ漁は高知県が発祥地であり、国内で産出される宝石サンゴの原木の入札は全て高知県で行なわれている(高知市公式ホームページより)。

サンゴ礁が栄える条件と脅威

白化が進むサンゴ

白化が進むサンゴ

サンゴ礁の環境への貢献は計り知れない。サンゴ礁は、海洋生物が生息する住処となるだけでなく、沿岸地域を嵐や津波から守る天然の防波堤としての役割も果たしている。また、地元経済にとっても重要であり、漁業資源の豊富な産地であると同時に、ダイビングやシュノーケリングなどの観光活動によって多くの収入をもたらしている。このため、サンゴとその生態系を守ることは、美しい海の景観を保つだけでなく、生物多様性の保護、経済的利益の確保、自然災害からの防御といった複数の利点を持続可能な方法で確保することを意味しているのだ。

しかし、現代では気候変動による海水温の上昇、海洋酸性化、サンゴを食すオニヒトデの大量発生、過度の漁業、生活排水による水質汚染、沿岸開発による土砂の流出など、多くの脅威にさらされ、世界的に危機に瀕しており、多くの場所でサンゴの白化現象や死滅が報告されている。

サンゴ礁が増えるためには、特定の環境条件が必要だ。適度な水温、汚染されていない栄養素のバランスが取れた水、適切な光量など、一定の条件が整うことでサンゴは健康を維持し、繁殖することができる。サンゴの美しさとその生態系への貢献を理解し、これを保護し維持することが、私たちの未来にとって極めて重要なのだ。

サンゴを守るための取り組み

サンゴ礁の保護は、地球の生物多様性を維持し、海洋環境の健全性を保つために不可欠。これを実現するためには、政策立案者、科学者、地域コミュニティ、そして個々の市民が共同で行動を起こす必要がある。

サンゴ礁保護の現状と課題

現在、サンゴ礁の保護にはさまざまなアプローチが採られている。国際的な取り組みとしては、地球温暖化の影響を軽減するためのパリ協定のような合意がある。地域レベルでは、特定の海域を保護区に指定し、漁業制限やダイビング活動の規制を行っている。しかし、これらの取り組みが十分に実施されている地域はまだ限られており、保護されていないサンゴ礁の多くが依然として脅威にさらされているのも事実だ。

個人での保護活動とその重要性

個人レベルでの取り組みも、サンゴ礁保護において非常に重要。環境に優しい日用品の選択、持続可能な魚介類の消費、また地元や海外のサンゴ礁保護団体への寄付やボランティア活動への参加など、私たち一人ひとりの選択がサンゴ礁の未来に大きな影響を与えているのだ。加えて、サンゴ礁に関する知識を広めることで、より多くの人々がサンゴ礁の価値と保護の必要性について意識を高めることへとつながっていく。

まとめ

サンゴは海洋生態系において重要な役割を担っている。しかしながら、サンゴ礁は気候変動、汚染、物理的破壊という脅威に晒されているのが現状。その脅威を少しでも減らそうとダイビング市場では、「Green Fins」というサンゴに優しいダイビングのガイドラインが日本で導入されて始めている。一人ひとりがサンゴに対する理解を深めて、サンゴの価値を未来の世代へ伝えていこう。

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PROFILE
0歳~22歳まで水泳に没頭し、日本選手権入賞や国際大会出場。新卒で電子部品メーカー(広報室)に入社。同時にダイビングも始める。次第に海やダイビングに対しての想いが強くなりすぎたため、2021年にオーシャナに転職。ライターとして、全国各地の海へ取材に行く傍ら、フリーダイビングにゼロから挑戦。1年で日本代表となり世界選手権に出場。現在はスキンダイビングインストラクターとしてマリンアクティビティツアーやスキンダイビングレッスンを開催。
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