奄美大島が世界自然遺産に登録された理由とエリアを簡単解説!

(c)HikariKadowaki

今年7月に見事、世界自然遺産に登録された「奄美大島・徳之島・沖縄北部及び西表島」がコロナ禍とはいえ注目を集めている。日本の自然遺産といえば、樹齢数千年以上を誇る縄文杉で有名な屋久島や、ボニンブルーと称されるほど美しい海が広がる小笠原諸島が思い浮かぶはず。しかし、両者とも自然が豊かな場所だというぼんやりとした認識できてるものの、ハッキリとした理由を答えられる人は少ないはず。

今回新たに登録された地域もまた、同じことが言えるのではないだろうか。このままでは日本の生態系が次世代の受け継ぐべき遺産として世界に認められたのにもかかわらず、話題性のあるトピックにうなずくだけのミーハーで終わってしまう。恥ずかしながら筆者自身も、現在奄美大島に滞在しているというのにもかかわらずこの企画に携わるまではぼんやりとしか認識していなかった。

そこで本記事では、筆者とともに脱ミーハーを目指し、奄美大島・徳之島・沖縄北部及び西表島の中でも特に「奄美大島」にフォーカスし、一体何が世界に認められたというのか、解いていきたいと思う。世界遺産は飽くまでも人為的な分類に過ぎないという論点は省き、簡単に説明していくので安心して完読いただきたい。

そもそも世界遺産って何?

はじめに、世界遺産を正しく認識している人はどれほどいるのか。なんとなく綺麗な建物だったり、美しい自然だったりを想像するかと思うが、あながち間違いではない。これまで世界遺産に登録された歴史的建造物や自然は、どれも美しいと感じる物ばかりだ。しかし世界遺産には、きちんと定義があることも知っておいて損はないはず。

世界遺産とはズバリ、人類共通の宝として次世代に残していくべき遺産のことを指す。さらに深堀りをすれば、地球の生成と人類の歴史によって生み出され、過去から現代まで受け継がれ、さらに世界遺産条約といった国際条約で世界的に守られているのだ。

そして世界遺産は、次の3つの項目に分けられる。

自然遺産…地球が作り出した自然や地形のこと。顕著な普遍的価値を有する、地形や地質、生態系、絶滅のおそれのある動植物の生息・生育地など。

文化遺産…人間の手によって作られた建築物・遺跡のこと。顕著な普遍的価値を有する、記念物、建造物群、遺跡、文化的景観など。

複合遺産…文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えているもの。

世界遺産に登録されるためには世界遺産リストの評価基準を一つ以上クリアするとともに、真実性や完全性の条件を満たし、世界遺産登録後も遺産を維持できる環境が整っていなければならないという。

奄美大島・徳之島・沖縄北部及び西表島ってどこにあるの?

そもそも、今回登録された「奄美大島・徳之島・沖縄北部及び西表島」が日本のどの場所に位置するのかご存知だろうか。「南の島」という認識はセーフだとしても、「沖縄」だと思っている方はこの機会に情報をアップデートしていただきたい。以下の画像をご覧あれ。

確かに4つの地域は連なっているが、厳密に言えば奄美大島・徳之島は鹿児島県、沖縄島北部・西表島は沖縄県に値するのだ。

そして、画像からもお分かりいただけるように今回世界自然遺産登録に認められているのは各島の黄色に塗られている部分のみとなる。暖かい地域で先ほど記述したように「南の島」といったイメージもあるので、海が世界遺産なのかと思われがちであるが、実は陸の自然が豊かであることから今回の登録に至っているのだ。

奄美大島が世界自然遺産に選ばれた理由って?

①ユニークな生態系が魅力!

今回奄美大島が世界自然遺産に登録された理由は「生物多様性」だ。アマミノクロウサギやルリカケスなどといった数多くの固有種や稀少生物が今も生息しており、類を見ないユニークな生態系が評価されている。

ここで気になるのが「生物多様性」についてだろう。生物多様性とは文字通り、生態系、生物群系または地球全体といった場所に、多様な生物が存在していることを指す。難しい言葉を並べたが、ここで分かりすく生物多様性をマンションにたとえる。一概にマンションといってもその規模はさまざまであるが、5部屋よりも50部屋以上ある建物であれば、一人暮らしや同性カップル、家族など、分類は同じ人間だとしても多種多様な人が暮らしていると考えられる。

もちろん設備や場所、値段により、住人も異なってくるだろう。広い土地であれば生物がいろんな種類の生き物が生息することは予想ができるが、「奄美大島・徳之島・沖縄北部及び西表島」では、先述したように小規模な地域であるのにもかかわらず、50部屋以上もあるマンション並の多種多様な生き物が暮らしているということになるのだ。

②特殊な生態系の謎は地殻変動にある?

ではなぜ、世界に認めらるほどの生物多様性を有しているのか。その謎を解く鍵はこの地形の成り立ちに深く関係している。「奄美大島・徳之島・沖縄北部及び西表島」を含む、奄美・琉球は、はるか昔海の底が隆起したことが始まりだ。ユーラシア大陸とも繋がっていたが、海面上昇などの地殻変動を繰り返し、大陸とくっついたり離れたりを繰り返していたという。そして、現在の形になり島に残った生物たちが各々で進化をとげた。

アマミノクロウサギもその一種で、彼らの祖先は元々大陸に生息しており、陸続きであった時代に奄美大島や徳之島に移動してきたと言われている。やがて、大陸のアマミノクロウサギの祖先は絶滅し、外敵のいなかった奄美大島、徳之島で生き延びることができたという。アマミノクロウサギが徳之島にも生息しているのはこのためだろう。

参考:奄美ガイドブック2014 「もっとわかる奄美大島」

③珍しい場所に位置する奄美大島

奄美大島が位置する場所は、生物の生息地を地理的に分けている境界線「渡瀬線」が位置しており、生物生息域の北限と南限、両方の境目となる。これによって多種多様な生物が共存する貴重な島となっており、国土の面積の0.2%に満たない奄美大島において、国内全体の生物種の約13%が確認されているという。また、南から流れてくる黒潮と暖かい亜熱帯性高気圧の恩恵をおおいに受けているため、暖かくて湿度が高い亜熱帯性気候であり、主に常緑広葉樹多雨林に覆われているのもポイント。

参考:のんびり奄美

アマミホシゾラフグは入っていない!?

アマミホシゾラフグ

奄美大島の固有種と聞きダイバーであれば、真っ先に思い浮かぶのが「アマミホシゾラフグ」ではないだろうか。オスが子孫存続のために、ミステリーサークルと呼ばれる産卵巣を作成することで人気を集めるフグだ。しかし、残念ながら今回登録されたのは陸地に限られるため、海域は含まれていない。透明に近い美しい青が広がる海域で、美しいサンゴ礁や熱帯魚たちがダイバーを魅了するのは事実であるが、やはり海洋ゴミ問題と大量発生しているオニヒトデなどの問題は簡単に解決できるはずもなく、今回の世界自然遺産登録では除外されている。

奄美大島の結局どこが世界自然遺産?

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これまでの説明で生物多様性が世界に認められたものの、海は除外されていることが分かったはず。それでは奄美大島の一体どこが世界の遺産だというのかを見ていこう。

まるでジュラシックパークの世界が味わえる金作原原生林

奄美大島の山々の中でも、天然の亜熱帯広葉樹が多数残っている金作原きんさくばる。今にも恐竜が現れそうな雰囲気で、己の葉を広く伸ばし生き生きと育つ緑が魅力的だ。国指定天然記念物のルリカケスやキノボリトカゲなど、稀少な生物も生息してるそう。かつては映画「ゴジラ」シリーズのロケ地としても採用されていたとのこと。しかし現在は、認定エコツアーガイドの同行が必須となるのでご注意いただきたい。

奄美発祥の地との伝説もある湯湾岳

宇検村うけんそん大和村やまとそんの間にそびえ立ち、奄美群島最高峰の湯湾岳ゆわんだけ(694m)。神の住む島とも言われ数多くのパワースポットが点在する奄美大島であるが、この湯湾岳こそ島建の神がこの地に降り立ったと言い伝えられている。途中神社もあるため、頂上を目指しながら奄美の神に参拝するのもいいだろう。

「生命のゆりかご」マングローブ原生林

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マングローブとは熱帯や亜熱帯などの暖かい地域に育ち、海水と淡水が入り混じる河口に見られる木々の総称。世界中では約100種類もの植物がマングローブと呼ばれており、日本だと主にヒルギ科、シクンシ科、クマツヅラ科、センダン科などの植物からなる。マングローブ林は汽水域に育成することから独特の生物多様性にあふれ「生命のゆりかご」とも呼ばれている。潮の満ち引きによっては観察できる生物も異なるからおもしろい。カヌーに揺られながらユニークな生態系を感じるのも良いかも。夏の日中は暑いので、サンセットカヌーがおすすめだ。

他にも油井岳ゆいだけ(483m)、烏帽子山えぼしやま、ヤクガチョボシ岳、フナンギョの滝がある。住用マングローブ林やマテリアの滝は緩衝地帯に帰属している。

参考:Wikipedia

簡単ではあるが奄美大島の世界自然遺産の理由とエリアについてまとめてみた。一度は潜ってみたいと思うほどの魅力的な海が広がる奄美大島ですら、海域が除外されているという事実を、一体どれだけの人が知っていただろうか。その背景には、今や深刻化している海洋ゴミ問題も深く関係している。

また、今回の登録についても賛否両論もあるだろう。先述したように世界遺産というのは、これまでに受け継がれた地球の宝を今後も残していこうという取り組みだ。世界に認められた今、生態系を次世代に残していくためにも他種との共存を永遠のテーマとし、これから先も地球と共に生きていきたい。

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PROFILE
静岡県西伊豆町出身。

ドルフィントレーナー専門学校を卒業後、ダイビングインストラクターや操舵手といった海に関わる職歴を持つ。

現在は、ライターとして「地球に暮らす全ての生き物がHAPPYな未来を」と願い、記事を書く。