奄美で多発する密猟。捕獲禁止地区と生き物を簡単解説!弁護士の見解も

先日、世界自然遺産として登録された奄美大島。世界遺産とは、本来、人類共通の宝として次世代に残していくべき遺産である。ところが、環境省によると世界自然遺産の島として注目を集めて以降、徳之島や奄美大島で昆虫捕獲用のわな設置が急増しているという。

奄美大島では自然や生物多様性を維持するために、奄美群島国立公園の一部を特別保護地区に指定していたり、条例で捕獲を禁止している生き物が多いのに関わらず、近年この特別保護地区内での昆虫捕獲や、条例に違反して動植物を採取している事件が後を絶たない。

下図は世界遺産に登録された奄美大島・徳之島を含む奄美群島。

希少種の昆虫が密猟されている

奄美群島ではバナナを入れたストッキングでつくった罠が数m間隔で樹木に仕掛けられ、捕獲が禁止されている徳之島固有種のヤマトサビクワガタなど約10匹がへばり付く現場が発見されている。虫取り網を持った男性にパトロール員が「生態系を守るためにも島の宝を捕らないで」と声をかけるも、男性は「自分たちが採取した程度で生態系が壊れるとは思えない」聞く耳を持たなかったという事例もあるほど。

希少な昆虫はネットオークションで取引されており、奄美大島・徳之島の固有種で捕獲が禁止されているアマミマルバネクワガタなどは1匹2万6500円の高値落札されている。昆虫ほど多くないものの、希少なランなど植物の盗掘も絶えない。7月上旬には奄美空港で、200匹近いシリケンイモリを機内へ持ち込もうとした乗客がいたという。

環境省奄美野生生物保護センターの職員は「捕獲が禁じられていないエリアでも一度に大量の生物がいなくなれば生態系が崩れる」と指摘。「このまま島外への持ち出しや密猟が続けば、より厳しい規制が必要になる」と警告している。(Yahoo!ニュースより)

奄美群島国立公園とは

奄美群島国立公園は、鹿児島県の最南部に位置し、平成29年3月7日に34番目の国立公園として指定された。奄美群島の島々には、豊かで多様な自然環境と固有で希少な動植物からなる生態系、そして人と自然のかかわりから生まれた文化景観が残されている。

奄美群島国立公園の特別保護地区とは

奄美群島国立公園地図 出典:環境省ホームページ

奄美群島国立公園地図 出典:環境省ホームページ

特別保護地区(オレンジ色のエリア)での捕獲・採取等は、すべての動植物において禁止されている。トラップ設置の有無や動植物の種類に関係なく、すべての動植物の捕獲・採取、卵の採取、落葉落枝の採取には事前の許可が必要となる。

特別地域内(紫色、ピンク色、黄緑色)では、昆虫採集のためのトラップなどを設置するのには、事前の許可が必要。トラップを木に結んだり、地面に固定するなどといったトラップなどの工作物も規制対象になる。※手掴みや虫取り網での捕獲には規制なし。

条例で捕獲を禁止された生き物とは

国立公園区域の内外に関わらず、絶滅のおそれがある野生動植物の種の保存に関する法律と条令で指定されている以下の希少種や天然記念物を捕獲・採取等するには、事前に許可が必要となる。(平成31年3月現在)

哺乳類:アマミノクロウサギ、ケネガネズミ、アマミトゲネズミ、トクノシマトゲネズミ、リュウキュウテングコウモリ、ヤンバルホオヒゲコウモリ鳥類:アマミウアマシギ、オーストンオオアカゲラ、アカヒゲ、オオトラツグミ
爬虫類:オビトカゲモドキ
両生類:イボイモリ、アマミイシカワガエル、オットンガエル
昆虫類:フチトリゲンゴロウ、ウケジママルバネクワガタ、ハネナガチョウトンボ
植物:アマミデンダ、ヤドリコケモモ、コゴメキノエラン、ウスイロホウビロシダ、コモチナナバケシダ、トクノシマテンナンショウ

そのほかにも「鹿児島県希少種野生動植物の保護に関する条例(鹿児島県)」や「徳之島3町希少野生動植物の保護に関する条例(各町)」などで多くの動植物の捕獲が禁止されている。これらの条例には覚え切れないほどの動植物が掲載されているので、奄美群島に生息するすべての生き物を個人使用のために採取しないことが最善策と言えるだろう。

違反すると…

特別保護地区の動植物の捕獲や、条例で捕獲を禁止された動植物を捕獲した場合、どのような罰則があるのか弁護士の新居裕登先生にお話を伺った。

「特別保護地区内で動植物を捕獲したり、条例で希少種として指定された動植物を採取すると、最高で1年以下の懲役又は50万円以下の罰金の刑罰が科せられます(鳥獣保護法第84条1項5号,鹿児島県希少野生動植物の保護に関する条例第32条1項等)。もし違法行為が発覚して警察に逮捕・勾留された場合には、最大で23日間、留置場に収容されることを覚悟する必要があります。さらに裁判の結果、懲役刑となれば当然刑務所に入ることになりますし、罰金刑となったとしても前科がつくため、罰則としては重い部類といえます。」

ダイビング中に海の生き物を触ってはいけないのと同じように、野生の生き物に触り、ましては捕獲するようなことは避けたい。人類共通の宝として、生物多様性を損なうことなく、次世代に残していこう。

■問い合わせ先
沖縄奄美自然環境事務所
奄美群島国立公園管理事務所(奄美野生生物保護センター事務所)(電話:0997-55-8620)
徳之島管理官事務所(電話:0997-85-2919)
*文化財保護法及び各種条例についてのご質問や事前許可申請については、所管する県・市町村にお問い合わせください。

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PROFILE
0歳~22歳まで水泳に没頭し、日本選手権入賞や国際大会出場。新卒で電子部品メーカー(広報室)に入社。同時にダイビングも始める。次第に海やダイビングに対しての想いが強くなりすぎたため、2021年にオーシャナに転職。ライターとして、全国各地の海へ取材に行く傍ら、フリーダイビングにゼロから挑戦。1年で日本代表となり世界選手権に出場。現在はスキンダイビングインストラクターとしてマリンアクティビティツアーやスキンダイビングレッスンを開催。
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