はじめてのショップツアー 【③移動編】
①ショップ選び編
②申し込み編
ドキウキドキウキドキウキドキウキドキウキドキウキ
遠足前のような緊張と楽しみでドキウキ気分。
なかなか寝付けずに少し寝不足のままいよいよ出発!
しかも、テンション上がり過ぎて水中コンデジを忘れ……。
とりあえずはバレないように変装。
嘘です。改めて出発。
駅から集合場所に向かって緊張しながら歩いていると、
それらしい荷物を持ったかわいい子発見!
が、ご両親も一緒の様子(笑)。
まあ、女子との出会いはさておき、
一緒に参加するわけだから声をかけて和めばいいのだろうが、
意味もなく緊張している僕は、声もかけらずにコンビニでひと休憩。
取材時はまったく緊張することなく
ダイバーさんにガンガン話しかけるのに、自分でも不思議だ。
気を取り直して集合場所へ行くとすでにショップの車が待機しており、
参加者も全員集合。
ふと窓越しに車の中を見ると、
一人の女性が明らかに僕を見て「え!」って顔をしている。
ヤ、ヤバイ。いきなりバレたのか?
しかし、もうこうなったら勢いで普通にショップダイバーで通すしかない。
イントラに促され乗車する。
参加者は、かわいい女子とその両親の家族3人組+
仲良しおばちゃん2人組+カップル2人+1人参加の奥様と、
僕を入れて9名。
割と大きなショップなので、僕の乗った車だけでなく、
ピックアップ場所の異なる3台の車が海で合流し、
現地でボートダイビングとボートスペシャリティ、
そして僕の参加する初級者ビーチダイビングの3班で目的別に分かれて潜るらしい。
さて、車内では参加者とコミュニケーションするぞ!
と思いきや、車が満席だったため、僕は助手席へ。
つまり、イントラの隣……。参加者とは話せない。
ショップツアーの醍醐味である“交流”でいきなりつまずく。
さて車内ではどう過ごそうかと思っているとイントラが衝撃のひと言。
「では、みんな自己紹介しましょ〜!」
な、なぬっ!
セミナーで何百人もの前で話したり、
ラジオやテレビでも問題なく話せたのに、思わぬ展開に緊張はピーク。
合コンでも形式ばって自己紹介タイムと言われると、途端に上がってしまう性格。
しかし、僕も編集者&和尚のはしくれ。
急きょ、頭でオチまで含めた文章を作れば、
あとは声を張って言うだけで、そこそこウケを取る自信はある。
むしろ、これはチャンス。よし、他の人が自己紹介しているうちに考えよう。
「じゃあ、寺山さんから」
イントラ、おいぃ〜。
助手席に座っているからって一番って安易過ぎるだろ、こら。
10分待ってくれれば、大爆笑だってのに。
しかし、振られたからにはやらななけらば。
「では、お名前とニックネーム、そしてツアーへの意気込みをひとつ」とイントラ。
緊張しながら答える僕。
「寺山英樹と申します。ニックネームは、みんなには、テ、テラとか呼ばれています。
テラ君とかテラさんとか呼んでいただければ。あ、テラって呼び捨てでもいいですよ。
あはっ……。今回参加したのは、あの、その、
来月遠くに潜りに行く的なことがあるかもしれないので、その前に、
練習というか水に慣れておこうかなと思いまして、あの、その、よろしくお願いします」
普通〜
残念なくらい普通。軽く死にたい。若干しどろもどろなのは、
今までは必ず宣伝のために『マリンダイビング』という単語を入れて話していたのに、
逆にそれを隠すという後ろめたさと、来月モルディブに行くが、
このショップのツアーではない後ろめたさというか、
あまりショップ以外で潜るスタイルのことを言ってはいけないのではないかとか、
短い間にいろいろ言葉を選んでいるから。
お情けの散漫な拍手をもらい、自己紹介タイムが終わると、
後ろの座席ではいろいろ話が盛り上がっている様子。
仲間に入れないのがちょっと残念だが、
聞き耳を立てていると、これはこれで新鮮でおもしろい。
「今日行く●●ってところは伊豆?」、
「船からは後ろにひっくりかえるのと飛び込むのがあるけどどっちが好き?」、
「ウエットスーツはシャワーがなくても着られるのかな?」などなど、
ショップダイバーのメンタリティや初心者の素朴な疑問が
たくさん垣間見られて聞いていて飽きない。
こういうことだけでも参加して良かったと思う。
中でも「今日は水深どれくらいですか?」という質問を皮切りに、
水深話が盛り上がっていて、
僕の中で10㍍も25㍍もあまり大差ないが、
初心者の中では水深はストレスや達成感の大きなファクターだと知り、
タメになった。
聞き耳を立てている僕は自分なりに楽しんでいたのだが、
イントラから見ればつまらなそうに黙っているように見えたらしく、
「今まではどこを多く潜っていたのですか?」などと
気をつかって話しかけてくれる。
しかし、話かけられるほど、
素性がバレやしないかと自意識過剰に緊張してしまい、うまく答えられい。
結果、イントラは何となく僕を扱いづらそう。
さらに、「こいつは一体何なんだろう。なんか、変だ」という空気が……。
これはマズイと、こちらからも無邪気に話しかけようと笑顔で質問。
「お店はコンプレッサー持っているんですか〜?」
って、何を聞いているんだ、俺。聞き方が無邪気でも、内容が全然無邪気じゃない。
取材では必ず聞くことだが、おそらく一般ダイバーは絶対に聞かない。
しかも、「持っていますけど……」とのイントラの返答に対して
「エアが一番利益率高いですもんね〜」って返しはあり得ない。
ダメだ。話すとボロが出るので、こうなりゃ寝ようと思い、寝るふりを
してダイバーさんたちの会話に聞き耳を立てているうちに、海に到着。
イントラの怪訝な眼差しと「え!」って顔をした奥様が気になるが、
初めて潜る海となんだかんだの仕事ではない開放感でウキウキモードに。
さあ、いよいよダイビングだ!
※長くなったので続く……。