3万円の竿竹
エヌズの業務停止のニュースに対する反応で違和感を持ったのは、
「だまされる人がアホ」といった「自分はだまされないよ」視線。
http://diving-commu.jp/divingspirit/item_3039.html
これは「うつ病」に対する視線と似ていて、
本人の性格が云々、考え方が云々と言っていてもあまり意味はなく、
まず、〝病気〟だと認識することか出発点。
性格や思考はあくまで性質や傾向のような話なのだから、
責めてたり励ますより、病巣を取り除く治療が必要となる。
悪徳商法も被害者のパーソナリティがどうのこうのということより、
「10人いれば〝絶対〟に何人かはハマる」システムが病巣で、
個人への注意喚起(も大事だけど)より、
病巣を浮き彫りにして取り除かねばならない。
な〜んて言っているのは、
僕もまこ社長もそのハマる何人かになりそうな性質や経験があり、
自分たちを正当化したいという下心もある(笑)。
例えば僕。
何度もネタにしている体育会系ダイビングクラブ。
ダイビングを楽しみたい一心で入部したのに、器材を持って砂浜を走らせるは、
ラジオ体操で大声出さないとやり直しだは、
酒は一気飲みさせられるは……。
お金を払って辛いことばかり。
普通に考えれば辞めて当然。辞めるだけの理由は十分にあるし、
実際、僕らの代は12人中3人しか残らなかった。
残ったのはなぜか。よくわからない(笑)。
ただ、残った3人は、うぶで真面目で(自分で言うなって?)負けず嫌いで、
性善説な感じの人間だった。
夏合宿では、最終日になぜか「兄弟の杯」というお酒の入ったボールを持って、
感動して大泣きしていた(赤面)。
そう。
「隔離して」、「苦行を与え」、「解き放つ(認めてあげる)」という、
自己啓発、ひいては宗教の物理的・心理的メカニズムにハメれば、
人は一定の割合で必ずハマるって話。
まあ今となっちゃ貴重な体験だが、
あの頃の自分に「ダイビングがうまくなる壺」を売る自信はある(笑)。
Cカードはクラブに預けさせられていて、
1年経ってクラブに認められたときに渡されたがとても嬉しかった。
もちろん、ダイビングサービスでファンダイビングすることは許されない。
そんなもんだと思っていた。
何だかいろいろ、よろしくないショップの問題点とシンクロする。
例えばまこ社長。
彼の話は、気がついたら3万円の竿竹を手にしていた話。
この話を聞いたとき、僕らは「アホだアホだ」と笑っていたが、
彼はどちらかといえば疑い深いし、クレームをしっかりつけられる人間。
しかし、身構えていないときのヒザかっくんは効くのである。
竿竹売りのトラックのスピーカーから流れる「2本で3000円」の声。
引っ越したばかりでちょうど竿竹が欲しかったまこ社長は、
トラックに駆け寄り「竿竹ひとつ、くださいな」。
聞けば、もっといい竿竹があるという。
「こっちの方が丈夫で長持ちします。素材だって……」
といろいろ聞いているうちに、
そりゃ、もっといい竿竹、略してMISが欲しくなる。
もともと3000円が頭にあるので、MISの値段をきちんと確認せずに、
深く考えずに「じゃあ、そっちで」と。
それを聞いた竿竹屋。すぐにベランダに合わせて竿竹を切る。
そして……
「お会計は5万円です」。
青ざめるまこ社長。当然、文句を言うが後の祭り。
もちろん、戦う方法はあるのだろうが、最後には、怖さと面倒くささで、
「金で解決できるなら」と何とか値切って3万円。
そして、3万円の竿竹を握りしめ呆然とするまこ社長の姿がベランダにあった……。
何だかいろいろ、よろしくないショップの問題とシンクロする。
え? お前たちがやっぱりバカだって?
まあ、薄汚いおっさんに成りはてた今ではそう思うが、
当時二十歳前後の僕は、
やっぱりダイビングがうまくなる文珍を買ってしまうわけです。
なので、エヌズの相談者の平均年齢が20代前半ってのを見ると……。
また、普通の大人であるまこ社長でも、
タイミングと状況でハマることもあるわけです。
今日は、実際に200万の契約をしてしまった方の体験談やら
そうしたお店で働いていたイントラさんの話をたくさん読んでいたら、
つくづくそう思ったのでした。