初笑い……でいいのか?
地元の友人Sと久しぶりに会うが、何だか元気がない。
聞けば、愛犬のラッキーが死んでしまったらしい。
父親が散歩中、ラッキーがほんのちょっと大通りにハミ出してしまったところ、
歩道寄りに走っていた車が轢いてしまうという悲惨な事故。
手綱を握ったまま愛犬が轢かれてしまったSの父親のショックは想像を絶するが、
突然、愛犬を失ってしまったSの落胆も大きい。
気の毒過ぎて、慰める言葉もうまく見つからないし、
「正月早々、こんな話してゴメン」と無理やり話を変えたり、
明るくふるまおうとするSも逆に痛々しい。
そんなとき、遅れてやってきたTが空気を察して
「どうした、どうした」と会話に入ってくる。
ひとしきり話を聞いた”スーパーがさつ人間”の異名を持つTが、
難しい顔をしながら放ったひと言。
ってか、ラッキー、アンラッキーじゃね?
ちょ、おま、な、何を……。や、やばい笑いがこみ上げてくる。
お笑いでいうところのお手本のような”緊張と緩和”のシチュエーション。
真面目なSは「ホント、アンラッキーだったよ」と普通に返すのだが、
不意をつかれ完全にツボに入ってしまった僕は、
うつむいて小鼻をぷくっとさせながら肩を震わせ我慢。
しかし、頭の中は「ラッキーなのにアンラッキー」がリフレイン。
微妙な初笑いとなったのでした。
それにしても笑いと不謹慎の境界線は難しいものだが、
子供のころ、ご遺体の鼻に詰まった綿を指さして笑っていた感覚は
なるべく失わない方向ではいきたいと思う2011年の年始め。