「安全なダイビングツアーの新ブランド」こう考える~H.I.S.の新ブランド @グアム 後編~

前編はこちらから。

H.I.S.の安全ダイビングツアー

H.I.S.のダイビング安全基準がダイビング業界の統一基準になることが良いことかどうかはなかなか難しい問題です。

というのも、H.I.S.は何もダイビング業界の安全統一基準を作ろうと息巻いているわけでなく、「より安全に、より快適なツアーをお届けしたい」との思いでブランドを立ち上げたまでです。

管理者責任が強く問われる昨今、また、実際の事故を受けて、「業界にないなら、独自で作るしかない」と必要に迫られた事情もあるのでしょう。
また、「徹底した安全と快適さ」が逆にダイバーのニーズに合ったブランドとして成り立つという判断もあるはずです。

もし、この独自の基準作成が、ダイビング界全体の統一基準にしようとする動きであるとすれば、おそらく大きなハレーションを起こすと思われます。
というのも率直に言って、基準をクリアできないお店がほとんどだと思われるからです。

例えば、ランドマーク的な基準である「4人までの少人数制」。
もちろん、4人以上でも安全管理は可能ですし、むしろ、4人と縛らない方がいい場合もあるでしょう。
また、現実問題として必ず守れと言われれば厳しいところは多いでしょう。
ただ、逆にこの基準に魅力を感じるダイバーも多いはずです。

いずれにせよ、H.I.S.の基準のレベルを業界全体に求めるなら、ソフトランディングする方法を考えないといけませんし、現状、この基準をクリアしていなくても安全に楽しく潜れる状況もあると思います。

しかし、ひとつの企業が気概を持って、あるいは生存戦略として独自の安全基準を真剣に作成、新コンセプトとして発表し、その基準に賛同するショップとタッグを組んで潜ることに何の問題があるでしょう。
むしろ、ひとつの魅力的なコンセプトとして支持したいと思います。

今回のグアムでは、この基準にいち早く賛同したダイビングショップ、GTDSを視察させていただきました。

オーナーのYASUHIRO MAEDAさんは、今回の基準については「よくぞ聞いてくれましたという内容」と評価します。

GTDSでは年間1万数千ドルかけてボートの保険を払い、アメリカ本国でのガスの不純物チェックを3カ月に1回、安くはないコストをかけて行なっています。
その他、ダイビングの人数比、スタッフへの教育費や設備投資など、H.I.S.の基準を上回るほど安全にかけるコストは大きいですが、これは削っていても一見すると見えない部分。
評価されづらい部分です。

しかし、前田さんは
「何かあった時に企業として存続するために必要なコストです。
ただ、ここまでやっているお店は少ないですし、見えにくい部分ですから、H.I.S.の基準を見たとき、私からすれば、『こんな厳しい基準』というより、よくぞ聞いてくれました、と思いました。
こうした動きが波及して、ダイビング界全体として安全に潜る環境が整えば嬉しいです」
と安全にかけるコストの重要性を強調します。

H.I.S.の新ブランド。
まずは、賛同するショップが増えるかどうかが今後のダイビングツアーの流れを左右する成功の大きなポイントです。
実際問題、すべてをクリアできるお店はそうそうないように感じますが、「H.I.S.は本気です」と妥協するつもりはないようです。
目に見えづらいダイビングの受け入れ側の安全をクローズアップするこの動き、今後も注目してご紹介していきます。

H.I.S.の安全ダイビングツアー
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PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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