ダイビング本数は愛のバロメーター!? ~とあるダイバーの恋物語~
旅のついでに沖縄でCカードを取った直樹さん(当時29歳・仮名)。
すっかり南国の海に魅了され、早速、次の休みには沖縄の海に舞い戻ってきていました。
沖縄の海のすばらしさに気分は盛り上がるばかりでしたが、初めて出会った念願のウミガメ以上に気分を盛り上げてくれた存在。
それは、 ダイビングショップで出会った由美さん(当時26歳。仮名。直樹さんいわく、上戸彩似)。
ショップの常連だという由美さんは、初めてのファンダイビングで勝手のわからない直樹さんに、くもり止めの方法からフィンの脱ぎ方まで、何かと世話を焼いてくれました。
しかも、あくまでもさりげないその気遣いを、とても好もしく思ったそうです。
その夜、ショップが開催した飲み会では話も弾み、南の島の空気も手伝って、「会ったその日だというのに、すっかり好きになってしまいました」と直樹さん。
しかし、もともと積極的でないうえに、直樹さんには大きな不安要素がありました。
それは、彼女との経験の差。
ダイビングを始めて3年近く経っていた由美さんのダイビング経験本数は当時で120本を超えており、始めたばかりの直樹さんにとって、それは途方もない数字に見えました。
次の日、海でチャキチャキ動き、華麗に潜る彼女に比べて、潜降もままならない自分が不甲斐なく思えてきた直樹さん。
変わらず、自分を気遣ってくれる彼女の思いやりも、ありがたいと思う反面、情けないという思いも募るようになってきました。
確かに、スキルと恋愛には多少なりとも関連性はあるのかもしれません。
以前掲載した「スキルと恋愛の関係」の中でも、「自分よりスキルが上の男性ダイバーでないと恋愛対象になりませんか?」というアンケートの結果は、「なるべくなら自分よりうまい人がいい」61%、「自分よりヘタな人は嫌」13%。
やはりスキルが上手であった方が有利なことは確かなようです。
しかし、「まったく関係ない」9%、「ある程度のスキルがあればいい」17%と、アタフタしない程度に潜れればよいと考える人もいます。
また、”なるべくなら”自分よりうまい人がいいと言っているだけで、絶対条件ではないので、そこまで気にするほどのことでもないのかもしれません。
※
その後、東京に戻ってからも、職場が近いこともあってすっかり飲み仲間になり、沖縄で仲良くなったメンバーたちで伊豆のお店にも潜りに行くような間柄が続きました。
出会ってからおよそ2年7ヶ月。
直樹さんは、ついに告白のために由美さんを食事に誘います。
好きなまま2年7ヶ月もの時間が流れてしまったのは、あまり積極的ではない性格や良好な関係を崩したくないとの思いも関係しているのでしょうが、直樹さんにとってはこの日、いや、このタイミングでなければダメだったのです。
食事に誘われた由美さんも何となく気持ちは察していたものの、「長い間、友達関係だったので『もうこれ以上はないかな?』と思っていたし、特に自ら積極的にそれ以上を望む気持ちも正直なかった」とのことで、告白されたらどうしようかな~といった気分でした。
「いつ、言おうか」「いつ来るのか」という、気まずくも甘酸っぱ空気の中、意を決したYさんの告白が始まりました。
「まずは、僕の気持ちを伝えておくね。
(ハニカミ沈黙1分)
君のことが……好きで好きでたまりません。会ったときからずっと。
この間の土曜日で、僕は168本になりました。つまり、君と同じ本数になったんだ。
僕の気持ちは前から知っていたと思し、僕も言いたい気持ちもあったんだけど……
やっぱりバディって同じレベルの人がいいって思うし。
だから、僕は君に追いつきたくて……、
君のバディになりたくて一生懸命潜り続けて……、
(挙手しながら立ち上がって)今日から僕は君のバディ宣言!」
嘘です。
「お付き合いしたくて、本数を追いつくために猛烈に潜って、同じ本数にそろえたことを伝えてから、自分の気持ちを告白しました。でも、それを言い訳にして、長引かせてしまった部分はあるんですけどね」という証言からだいぶ盛ってしまいましたが、ここまで寒い告白ではないにしろ、きっと同じようなことを言ったのではないかと推察されます。
これまで、毎週のようにダイビングに出かける直樹さんの話を聞き、「ダイビングにすごいハマッているな~」と漠然と思っていた由美さんですが、それが自分への気持ちからくる行動だと知り感動。
気づけば、「よろしくお願いします」と自然とこたえていたそうです。
ただ、好きだという思いを告げただけならどうなっていたかわかりません。
それから1年以上経ち、ペースは落ちたものの、今でも仲良く同じ本数のまま潜り続けている二人。
ダイビング本数が愛のバロメーター。
そんなほっこりいいお話でしたとさ。めでたしめでたし。