本当にあった恋物語にメリークリスマスだ、このヤロー!
ささいなことで喧嘩になり、勢いで別れることになってしまったダイバー同士のカップル、秀人さん(28歳)と留美さん(26歳)。
※共に仮名。主に留美さんの証言をもとにしています。
「秀人の傲慢で自分勝手な言動に嫌気がさした」という留美さん。
最初はすっきりしたそうですが、そこは付き合って6年。
想い出もあれば情もあり、心に刺さった小骨は徐々に痛みを増しつつ、時が流れていきました。
お互い連絡も取らずに迎えた師走。
街がクリスマスムードに包まれるにつれて、留美さんは昨年のクリスマスのことを思い出していました。
※
大学のダイビングクラブで出会っていた二人は、ダイビングするときはいつもバディ潜水。
その年、クリスマスもダイビングをすることになり、留美さんはせっかくなら水中のクリスマスツリーに潜ってみようと提案してみましたが、体育会ダイバー気質の秀人さんは「あんなもん、何が楽しいんだよ、くだらねー」ととりあってくれません。
「たまにはそういうイベントごとみたいなのしてもいいじゃん!」と言っても、「二人が楽しいと思うダイビングの方がいいだろ」と、結局、秀人さんのお気に入りの海に潜り水中写真に夢中。
「こいつ、私がいて当たり前だと思ってなめている」と留美さんは思ったそうです(笑)。
そんなことが積み重なり、別れることになってしまいましたが、冒頭でも言ったように、徐々に後悔の念が膨らんできました。
そんな気持ちを吹っ切るために、12月のとある休日、留美さんは伊豆の海で初めてダイビングサービスに申し込みました。
なぜ初めてかと言えば、それは、いつもバディが秀人さんだったからです。
当日、慣れないダイビングサービスでのダイビングに戸惑い以上に寂しさを感じたまま、ダイビングへ。
クリスマスツリーのあるポイントです。
何となく、このポイントを選んでいたそうです。
留美さんがセッティングしていると、「留美!?」の声。
振り向くと、驚いた顔をした秀人さんでした。
(心の中で、なんか気の利いたBGMを流してください)
大学時代からの男友達と二人で潜りに来ていた秀人さん。
やはり、何となくこのポイントを潜りたくなったのだそうです。
二人は見つめ合ったまま動けなくなっていましたが、しばらくすると秀人さんの目から大粒の涙が一気にあふれ出てきました。
いつも傲慢な秀人さんのそんな様子に留美さんは驚いて駆け寄ると、留美さんの肩に手を置いて、しばらくオイオイと泣いていた秀人さん。
そして、二人は皆に見守られながら二人で海へ……
となればよかったのですが(それを期待して聞いていた自分・笑)、そこはドラマと現実の違い。
留美さんはダイビングサービスの人に悪いと、「とりあえず、秀人、後でね」と秀人さんを置いてとりあえず1本ダイビングを満喫し、その後、ランチで待ち合わせて再会。
秀人さんは「失って初めて気が付いた」こと伝えて謝罪し、留美さんも私生活では我慢できたものの、大好きなダイビングに来て初めて秀人さんの存在の大きさに気づいたことを告げたそうです。
気まずさからか、秀人さんはその場で寄りを戻そうとは言えなかったものの、「この後、一緒に潜らない?」。
2本目。図らずとも前年に潜れなかったクリスマスツリーのポイントを、一緒に潜ることができたのでした。
ダイビングが気づかせてくれた相手の存在の大きさ、そして、ダイビングが引き戻してくれた縁。
「何となく、そのポイントを選んでいた」の“何となく”とはなんだったのか?
「断ち切れない思いや相手への思いなど、“思い”がそこへ足を運ばせ、ダイビングが再び引き合わせてくれたのかな」
「留美への気持ちを確かめるためにあのポイントに行ったんだと思います。そして、海を目の前にしたら意固地な自分が馬鹿らしくなり、さらに留美が目の前に現れて感激してしまいました」と二人仲良く当時を振り返ってくれたのでした。
めでたし、めでたし。