海への落とし物はガイドが拾うのが当たり前?再潜降で減圧症になるケースも
とある南の島のダイビングガイドAさんから、こんなお悩みをいただきました。
「最近、考えさせられることがあります。“ゲストが海に何かを落としたときに、ガイドやスタッフがどこまで取りに行くか?”ということです。エキジットの時にカメラ、トーチ(ライト)、中にはフィンを落とすゲストもいらっしゃいます。結構そういうときのゲストは“ガイドさん、拾ってきて”と思われているようです」
実は、この話はとってもよく聞く、ダイビングガイド“あるある”です。
「え?それくらい取ってきてくれればいいのに…」と思う方もいるかもしれませんが、これ、結構リスクが伴います。
ガイドにとって減圧症のリスクが高い再潜降
Aさんのお話の続きです。
「以前、ローカルガイドが、エグジット直後に、ゲストのコンピューターを拾いに50mまで潜ってしまって即ベンズ。それ以降、後遺症が残り、今は潜っていません。もちろん、50mは行き過ぎですが…」
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これは極端な例ですが、浅いからといって安心はできません。
むしろ、水面からの浅い水深の方が、水圧変化が大きいので、たったの10mだからと言って、窒素たっぷりの体での再潜降はリスクが伴います。
「カメラはとても高価なものです。でもウェイトまでつけて沈むタイプのカメラなどは、あっという間に沈んでいきます。まだ沈んでいる最中、あるいは水底など、見える深さにある場合、ゲストの期待と、自分のセーフティーの間で悩みます」
多かれ少なかれ、ガイドにはこうした場面があるのではないでしょうか。
正解はありません。
いや、もちろん、安全上の問題から言えば、行かない方がいいですし、ルール化するのもありでしょう。
また、責任の所在を明らかにしておくために、事前に文書化するのもひとつの案です。
時代はそういう方向へ向かっていますし、これはこれでありだとも思います。
しかし、困っているゲストを手助けしてあげたいのもまたガイドの本音ですし、“取りに行きませんから”というルールは世知辛いという考え方もあるでしょう。
少し話は変わりますが、船上からカメラをピックアップしたスタッフが、カメラを置く際に壊してしまいゲストが「弁償しろ!」大激怒。
以来、ブリーフィングで「カメラが壊れても責任は…」といった説明をしていたお店もありましたが、そういう背景を知らないゲストはちょっとモヤモヤっとするかもしれません。
個人的には、何か落としたら、僕は自分で取りにいきます。
ただ、それができる人ばかりではないでしょうし、環境上、難しいこともあるでしょう。
もし、拾いに行っていただけたのであれば感謝し、「難しい」と言われたら諦めるしかありません。
少なくとも、文句を言う筋合いのものではありません。
※もちろん、明らかにガイドが原因で落とした場合は別の話になりますが…
いずれにせよ、まずは、海の落とし物を探して拾いに行くことに、リスクがあることを知り、ガイドが拾いに行くことが“当たり前ではない”と知ることが大事なのでしょう。
話はそこからです。