1時間に100mmの雨はどれほど危険なのか〜土砂災害集中連載第3回〜
短期集中連載「なぜ日本には土砂災害が多いのか?」、第3回です。
第1回目と第2回目は、こちらをご覧ください。
地球温暖化による、かつてないほどの豪雨
それにしても、去年の伊豆大島といい、今年の夏といい、土砂災害の話題とそれを伴う大雨の話題が多くなってきているような気がしませんか?
これは、事実なのです。
気のせいではありません。
そして、間違いなく地球温暖化のせいです。
ただし、温暖化と言っても、人為的な二酸化炭素の排出が原因だとは、気象予報士会では結論付けていません。
実際、ここ2~300年を見ると、20世紀に入ってから急速に二酸化炭素の量が増えて温暖化が進んではいます。
しかし、それを人為的なものが原因とする学者もいれば、太陽活動等自然の要因が原因で、二酸化炭素の増加は海水温の上昇のせいで、海中に溶けていた二酸化炭素が出てきたのだとする学者もいます。
実際、数万年以上の単位で見ると、かつてもこのように急激な温度上昇があったという説もあり、原因については、正直分かっていません。
ただ、それを「排出権取引」という、お金で解決する仕組みにしたので、そこにビジネスチャンスが生まれ、人為的なものとしたほうが儲かる人がいるために、ことさらにマスコミ等に取り上げられていることも事実です。
いずれにしても、原因はともあれ、ここ数十年地球は温暖化してきています。
そうすると、海水温が上昇していますから、そこから放出される水蒸気が持つエネルギーは何倍にもなります。
熱帯域で上空に昇ったエネルギーは、大量の雨となって温帯域に降ってくるようになります。
また、海水面の温度が高いので、台風もエネルギーをもらいながら、大型のものに成長しやすくなります。
ですから、人為的か否かにかかわらず、この数十年、我々は地球温暖化の中におり、集中豪雨や長雨など、雨の量はさらに増える可能性が高いということは言えます。
つまり、おじいさん・おばあさん程度の年齢では記憶にないほどの、大きな台風や集中豪雨などに襲われる可能性が高まっており、結果、「生まれてこのかた、土砂崩れなど起きたことがない」というような場所でも、土砂災害が起きる可能性があるということです。
思い出してください。
私達はみんな、結局「川が山を削って流出した土砂が堆積した場所」に住んでいるのですから。
この程度の雨で?と思うなかれ
ところで、「豪雨、豪雨というけど、せいぜい100mmだよね? 10センチ程度水がたまっても平気なのに、どうしてみんな騒ぐのか?」と、思われた方はいらっしゃらないでしょうか?
これは、このように考えてください。
降った水が流れずに全てそこにとどまっているなら、100mmの雨では10cmしか水は溜まりません。
ところが、水は低いほうに流れて集まります。
例えば、幅50cmの側溝に幅5mの道路から水が流れ込んだとします。
そうすると、10cmの深さの水は、10倍の面積分を集めるから、1mの深さになります。
ですから、1時間に100mmの雨ということは、大変な雨ということになります。
都市部は舗装道路が多く雨水を吸収しにくいので、特に、ちょっと低い場所は、周囲に降った雨をダイレクトに集めてしまい、一気に水かさが増すことがありますから注意が必要です。
これがもっと大規模に起きるのが、大雨が降り続いたときの山間です。
通常、山は地面がある程度の雨までは吸収してくれるので、そのようなことはなかなか起きません。
しかし、地面が水を蓄えきってしまい、水を吸収しにくくなった山間の谷には、その周囲の斜面に落ちた水がすべて集まるようになります。
沢の水面に比べたら、100倍の面積の地面から集まるかもしれません。
そうするとたった1時間に10cmの雨でも、沢筋にあつまった時には10mの深さの水量になっている可能性もあるわけです。
ですから、例えば1時間に60mmの雨といわれて、「6cmくらいたいしたことないじゃん?」と思わないようにしてください。
※次回(最終回)は、明日(2014年9月8日)アップ予定です。