柴又、麻布、小豆…地名からも分かる土砂災害の多い国・日本

この記事は約3分で読めます。

短期集中連載「なぜ日本には土砂災害が多いのか?」、第2回は日本の地名に着目します。
第1回の記事はこちらをご覧ください。

岩手・大船渡市綾里川のサーモンスイム(撮影:越智隆治)

突然ですが、「薙」という言葉をご存知でしょうか。
「薙ぎ払う」の「なぎ」です。

先日、日光に行ってきました。
日光には男体山(なんたいさん)というすばらしい山があります。

綺麗な形の山で、成層火山なのがよくわかります。

そして、たびたびの噴火で、川をせきとめた結果、あの有名な華厳の滝や中禅寺湖、戦場ヶ原などができたと言われています。

ただ、そのように、山は昔から崩れやすく、山肌のあちこちに大きな山崩れの痕が見られます。
その山崩れの爪痕をこの地方では「薙」と言います。

木々も「薙ぎ払われた」ようになってしまうからでしょうか。
「薙」と名のつくところは、今後も山崩れがおきやすいかもしれません。

それも含めて、男体山では「治山工事」が昔から行われています。

同様に、今回大きな被害が出た広島市安佐南区八木地区が、昔の地名で「八木蛇落地悪谷(やぎじゃらくじあしだに)」という名前だったというので話題になりました。

「蛇」・「龍」がつく地名は、水害がおきやすい、「落」ちる「悪」い谷だから、土砂崩れが過去に何度もあった場所だろうというのです。

でも、宅地にする時に、字面が悪いので、地名を変えたとか。

岩手・大船渡市綾里川のサーモンスイム(撮影:越智隆治)

そのように隠されてしまった地名もありますが、古い地名には意味が込められていることがあるのです。
実は、普段見ている地名でも危険を表すものがあります。

例えば「寅さん」で有名な「柴又」は、元は「嶋俣」で、「嶋」は三角州、「俣」は川の合流地点、すなわち川が合流してできた三角州ですから、水害に弱い地域ということだとか。

「梅」はかつて埋めた(埋まった)土地、「小豆」や「麻布」は「アゾ」(谷筋が崩れているところを示す言葉)から来ており、崖崩れがおきやすい地質を現す言葉です。

「柿」は「欠け」に通じ、土砂崩れがあったところ、「栗」はクレ・えぐれるなどから転じたもので、崩れる場所の地名にこともあるとか。

他にも「椿・燕」などは、ツバケル=崩れる、の意味からのことがあるし、「貫」なども鉄砲水の後につけられたりするようです。

「竹」は急斜面、「柳」は「薙」といっしょ等々。

もう、枚挙に暇がありませんが、こういった地名は、意外に私達が良く行くスポットの近くにも見られます。
こういう場所は、豪雨の時には要注意ということです。

◆参考:「地名と災害」

※次回は、明日(2014年9月7日)アップ予定です

\メルマガ会員募集中/

週に2回、今読んで欲しいオーシャナの記事をピックアップしてお届けします♪
メールアドレスを入力して簡単登録はこちらから↓↓

PROFILE
日本気象予報士会会員。
国際基督教大学(ICU) 理学科物理卒。
1995 年 よりダイビングを始める。
外見が「熊」なダイバーなので、魚の名前に因んで「くま呑み」を名乗る。

中学の理科の授業で、先生が教卓で雲を作る実験をしてくれたのを見て以来、気象学、天文学、地学に興味を持つ。
ダイビングを始めてからも海と空を眺めるのが好きで、2002年、気象予報士を取得。

ダイビングのスタイルは、「地形派」。
ドロップオフやカバーン、アーチや地層の割れ目などを眺めるのが好き。
特に、頭上のアーチなどをくぐった先で、水面からの光が見える瞬間に萌えてしまう。

ダイビング以外の趣味は、オーガナイズド(組織)・キャンプ、合唱、キャリア
・カウンセリング。
現在は、国際基督教大学にて学生や子ども向けの組織キャンプのディレクターも
努める。
FOLLOW