船上からイルカやクジラを探す3つのコツ

トンガ、ザトウクジラのスペシャルトリップ(撮影:越智隆治)

クジラと「捕る」調査と「見る」調査

海やイルカが大好き! という方が一度は憧れるであろう「イルカやクジラに関わるお仕事」。

水族館の飼育員さんやトレーナー、ウォッチングガイドなどがすぐ思い浮かぶかと思いますが、他にも獣医、捕鯨船の船員、研究者、調査員などもコアに関われる仕事です。

先日、「勇魚会」(海棲哺乳類の会)のシンポジウムに参加して、クジラの目視調査についての講演を聴きました。

日本では、独立行政法人「水産総合研究センター」や「日本鯨類研究所」がクジラの調査を行っていますが、よくニュースなどで取り上げられる「調査捕鯨」だけではなく、「目視調査」もかなり力を入れておこなっています。

目視調査は、文字どおり「見る」調査です。
事前に決めたルート上に船を走らせ、発見した場所、時間、クジラの種類を記録します。
これによって走った範囲の鯨の分布や頭数を調べることができます。

「捕る」調査と「見る」調査ですが、それぞれに利点があるため、鯨類の資源量を調べるためにはどちらも大切な調査です。

現在、IWCではPOWER(North Pacific Whale and Ecosystem Research)という、北太平洋をかなり広い範囲で網羅する「見る」国際調査を行っています(IWCのウェブサイトで調査中の美しい写真がご覧になれます)。
この調査でも日本は中心的な役割を果たしています。

「見る」調査の調査員は、日の出から日の入りまでひたすらクジラを探して海を見つめます。
実際は1時間程度の交代制になっていますが、かなりハードなお仕事です。

見つけなきゃ始まりませんから、調査員のスキルが大変重要です。
若い頃から捕鯨船に乗っていた老練の調査員さんになると、数キロメートル先の鯨種まで瞬時に分かってしまうそうです。
う~ん、スゴイ。

でも国内の捕鯨産業が衰退しているために、調査員がそのスキルを磨く場所がなかなか無いようです。
調査員がどんどん高齢化しているのが問題になっていました。

慣れない人だと、鯨種どころか、鯨そのものを見つけるのも難しいかもしれません。
見つけないと調査にならないから、大問題です。

オーストラリア、グレートバリアリーフのミンククジラ(撮影:越智隆治)

イルカ・クジラウォッチング

見つけなきゃ始まらない、という意味では、イルカウォッチングやクジラウォッチングも同じです。

幸い御蔵島は、結構な確率でイルカを見られるため、それほどではないですが、他の地域のウォッチング船の船長さんは、それこそ目を皿のようにして探しているはずです。
目視調査員と同じく、ウォッチングの船長やガイドの大切なスキルです。

誰よりも早く見つけるにはセンスとコツが必要ですが、ウォッチング中にぼんやり乗っているのではなく、「船長に負けない!」つもりで探すと移動中も愉しめると思います(そういうゲストがいらっしゃると、船長やガイドにとっては脅威です)。

コツとしては……

①普通の波とイルカの波を見分ける

慣れてくると普通の波は規則性があるのに対し、イルカなどが立てる波は「急に」「変な場所に」立つことが多いです。

②広い範囲を流し見する

1点集中で探す方が多いですが、意識的に視線を左右に振るようにします。そして不自然な波や物が見えたような気がしたら、その周辺を集中してみます。
何も無ければ、再び広範囲に視線を動かします。

③漁父の利で2番手を狙う

発見したら船長は進路を変えたり、エンジンを吹かしたりします。
それに気づいたら、いち早く船長の視線の先を集中的に探します。

 

いかがですか?

きちんと探すと、近くの海でも結構イルカはいたりするものです。
ダイビングボートや島へ渡る船など、ウォッチング船以外の船で期せずしてクジラやイルカを見つけた時の感動は、何にも代えがたいですよ~。

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writer
PROFILE
山形大学農学部で、テントウムシの産卵生態を研究をしていたが、「もうちょっと大きな動物を研究したいなぁ」と路線変更。
三重大学大学院在学中に、御蔵島をフィールドとしてイルカの行動研究を始める。

2004年、御蔵島で観光協会設立に関わり、同大学院を中退。
現在、御蔵島観光協会勤務。

観光案内業務、エコツーリズムの普及活動、イルカの調査取りまとめを行っている。

■著書:
「イルカ・ウォッチングガイドブック」水口博也(編著)144pp. ウォッチングと生態研究の両立-御蔵島のイルカをめぐって
「クジラと日本人の物語―沿岸捕鯨再考」小島孝夫(編集) 第4章クジラと遊ぶ..
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