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ダイビングスタイルが変わるか!? 形骸化するバディ・システムへの様々なアプローチ閲覧無制限

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徒然コラム

バディ・システム

近年、ダイビング界で、バディ・システムについての議論がいろいろな場所で交わされており、PADIの講習プログラムの改定でその熱は高まりつつあるように感じています。

「バディ・システムが形骸化している(しつつある)」
「Cカード講習の“本音と建て前”を見直そう」

ここまでは皆さんの共通認識なのですが、その後のアプローチがさまざまで、とても興味深いです。
そのいくつかをご紹介しつつ、問題点も考えてみたいと思います。

Cカード講習内容の充実・改定

まずは、PADIの改定。
簡単にいえば、「バディ潜水ができるように、もっと、ちゃんと教えようぜ」ということで、講習にバディ同士による計画潜水が加わるとのこと。

もともと、PADIのマニュアルは素晴らしく、きちんとその通りに実行されれば素晴らしいダイバーが誕生するはずです。

問題は、きちんとその通りに実行されているのかどうかがあやしいのと、それが公平に実行される仕組みがあやしいこと。
本音と建前が存在していることです。

仕組み・ルールを整えずに達成主義を掲げることは、抜け道、裁量という名の手抜きの温床。

具体的に説明すれば、PADIのホームページを見ると、「“プールは○時間以内に終わります”とか“○時間あれば十分です”などと時間を約束するようなことがあれば注意が必要です。PADIプログラムの最終目標はテクニックをマスターすることですが、そのショップでは“時間内に終わらせること”を最優先に考えている可能性があるからです」と書いてあり、これは一見もっともに聞こえるでしょう。

しかし、これは性善説に基づいているのですが、水は低きに流れるわけで、時間の設定に裁量があれば、商売上、より短くなるに決まっているわけです。
ですので、「プールは絶対に○日以上やらないとズルだよ!」など、達成するためのある程度の最低限の時間を担保してルール化した上での達成主義でなくては意味はありません。

これ、下手をすれば、現場が真面目にやればやるほど経営が圧迫される、競争に負ける、なんてことも考えられます。

PADIの講習でできるようになるはずのスキル項目を見ると、そりゃできたらすごいけど、今の講習じゃ無理でしょ~というのが、僕の率直な感想です。
真面目な現場のイントラほど悩んでいるんじゃないでしょうか。

ソロダイビングの導入
プロダイバーにもっと対価を支払う

僕が勝手にダイビング原理主義者と呼んでいる日本のトップダイバーである田原浩一さんは、そもそも今のレジャーダイビングにバディ・システムは合っていない、と言います。

バディ・システムを成立させるためには、バディがひとつのチームとして共通の目的を持ち、常にバディ・システムが機能する状態を保ってダイビングを行うことが必須ですが、昨今のダイビングは“海を楽しむ”、例えば、フィッシュウオッチングや写真撮影がメイン。

その楽しみ自体、バディのサポートや協力が不可欠というものでもなく、“バディ・システム、バディへの意識”へのフォーカスは、むしろ、気を散らす要素と感じれがちです。
互いが自身の写真撮影に没頭していれば、バディの存在はむしろリスクにさえ成りうるということ。

そんなことを考えると、最も合理的な潜り方は、ガイド付き、インストラクター付きのダイビングに行きつきます。

ガイドに付いていくだけの日本のダイビングスタイルは“金魚のフン”と揶揄されますが、ガイドが、常にゲストを気にかけている点、目的(生物とか撮影とか)に合った深い知識や方法論を持ち合わせている点では、実はかなり合理的で、リスクマネジメントが不完全なセルフダイビングよりよっぽどリスクの低いダイビングを可能にする、と田原さんは言います。

実際、現地で初めて会うダイバー同士をとりあえずバディ決めしておいて、実際は対ガイドというスタイルも珍しくありません。
あれ、実は取りうる手段としてはベターな選択かもしれないのですが、何となく、バディ・システムを組んでいるという体にしなくちゃいけないということで、モヤモヤしているガイドさんもいるんじゃないでしょうか。

ただ、この潜り方の問題は、“ガイドの責任過多”。
めちゃめちゃなCカード講習を受けた一見ダイバーさんを引き受けて事故が起きた場合でも、管理責任が問われ、場合によっては人生棒に振ることになります。

判例を見ていると、率直に、割に合わない職業だな~と感じるわけですが、田原さんもこのスタイルなら「もっとプロが対価をもらうべき」と言っています。

あるいは、田原さんは、今のようにパーソナルなテーマや楽しみを追求するレジャーダイビングに最もマッチしているのは“ソロダイビング”だと言います。

ソロダイビング=単独潜水というと、その語感や、これまで絶対やってはいけないと言われていたことへの抵抗感、テックダイビングの領域のハイレベルで特殊なダイビングを想像しがちですが、簡単に言えば、「本音と建前をやめて、ソロダイビングをちゃんと覚えて潜ろうよ」ということです。

いずれ、こういう流れも出てくるはずです。

問題は、田原さんの提唱は、正論ですが、現状にどうフィットさせるか考えると容易に答えは出てきません。

バディ・システム

バディ潜水(セルフダイビング)の検定
受け入れ側のレギュレーション

バディ・システムが形骸化し、Cカード講習が信じられないなら、“検定”を作ろうという動きも少し前にありました。
つまり、Cカードの認定を受けた後に検定があり(究極には、認定すらなくてもいい)、検定を通ればバディ潜水(セルフダイビング)をしてもいいよ、という動き。

現地ダイビングセンターもリスクが減らせるので、理念としてはとても共感できるし、とても素晴らしい試みだと思いますが、いかんせん、独自で走り過ぎて、残念なことに認知がほぼゼロ。
これをやるなら現地や業界への根回しが必須ですが、思い先行で、知っているダイバーがほとんどいないという状況になってしまったのは残念です。

この、“認定ではなく検定”という考え方は、今後大事になってくる気がするのですが、用意周到、認知徹底が重要になってくるのでしょう。

あとは、現地の受け入れ側が、バディ潜水を受け入れる際のレギュレーションを作るという動きもあります。

「バディ潜水をしてもいいけど自己責任でよろしくね」「その代り、僕ら受け入れ側は、受け入れ施設としての安全レギュレーションは整えますよ」と。

一種の合理的なリスクヘッジであり、バディ潜水という新しいマーケット開拓であり、ダイバー側としても半額くらいで潜れるようになればメリットがあるでしょう。

これも用意周到、まとまることがポイントですね。

意表を突かれた考え方!?
新しい指導団体の設立

ダイビングの旅行社で最大のエスティーワールド(STW)が、オーシャンアカデミーという新しい指導団体を設立しました。

もともと指導団体の乱立はよくないことだと思っていたのと、引き受け保険会社があるのかな? と当初は少し引いて見ていました。

しかし、理念を聞いてみて、面白い考え方だなと思いました。

つまり、「講習を受けたダイバーはセルフダイビングができるようになる、は建前です!」と認めるところから始めたのです。

オーシャンアカデミーのいわゆるエントリーレベルのCカード講習の認定は、「プロと一緒に潜ることができる」がゴール。
それ以上は、セルフの講習を受けてね、というものです。

日程も決まっている、南の島でのCカード講習パックツアーは、Cカードが取得できなければクレームにもなるので、何となく認定せざるを得ない雰囲気です。
達成主義をかかげているのに、達成主義から遠いという矛盾を抱えます。

ですので、「たったの2日じゃセルフダイビングできるダイバーなんてできないよ。個人差もあるし。じゃあ、セルフはできないけど、プロと一緒に潜れるくらいまでのダイバー認定にしよ」ってのは、また違ったアプローチでの建て前を取っ払う考え方で、面白いと思います。

いや、既存の指導団体にもそういうコースがあるのですが、こちらはデフォルトとして打ち出したというのが、なるほどね~と。

こういう新しい指導団体は、理念が先行して普及しないことが常なのですが、世界中に提携ダイビングショップを持ち、潜在的ダイバーへのアプローチ力もある、ダイビング最大手のSTWというところが最大のポイント。

彼らの持つマーケットで十分、回ってしまう規模かもしれません。
保険の引き受け会社も決まったそうですが、よく考えれば、ダイビング以外も市場を持つ大きな旅行社ですものね。

問題は、完全な彼らの王国で完結してしまい、ダイビング界と没交渉でいろいろ分断しちゃうと、よろしくないこともあるのかな~と。

いずれにせよ、どうなるか、注目しています。

今こそ、バディダイビングの面白さを再認識

個人的には、バディ・システムの議論が高まり、また、ダイビング市場が成熟・衰退しているというデータには事欠かかない現状、バディ潜水(セルフダイビング)というマーケットにちょっと注目しています。

ダイバーに話を聞くと、やっぱり「ダイビングは高い」という声をよく聞きます。
バディ潜水が普及すれば、半額くらいのコストで潜れ、さらにダイビングの選択肢が増えることになります(決して、ガイドの価値を下げるとも思いません)。

以前、バディ潜水をしたことがない人にその理由を聞くと、「やってみたいけど、」という答えが上位に並びました。

やってみたいけどできていない人がいて、さらに、セルフダイビングの情報はかなり不十分だと思っていますので、この辺りを改善し、情報と環境を整えてあげれば、面白がってくれるダイバーは結構いるのではないかと思います。

ご来光を見るために山頂を目指すとき、ゴンドラで行っても、ガイドに付いていっても、自力で登っても、選択肢はいろいろあってよいと思います。
同じ山頂に立っても、見える景色は違うでしょう。

今のダイビング界の環境は、自力で登る選択肢が細くなっているな~と思いますので、バディ・システムを考えつつ、この選択肢を残したい。

面白いのは、上記で挙げたいろいろなアプローチの中心となっている人たちは、考え方は違えども、僕も含めて、皆、セルフダイビングで育ち、魅了されたという原体験を持つダイバーたちです。

いや、おもしろんですよ、バディ同士で主体的に海と遊ぶのは。
いろいろ小難しいこと言っていますが、みんな、基本はそれを伝えたいんだと思います。

少し論点がとっちからかってしまいましたが、バディ・システムについては、しばらく議論が続きそうです。

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