御蔵島でも見られる!? ミナミハンドウ以外の鯨類たち

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御蔵島のドルフィンスイム(2012年8月)

イルカとクジラの違いって何?

御蔵島のイルカといえば、ミナミハンドウイルカですが、実は御蔵島でも、ミナミハンドウ以外の鯨類(クジラやイルカ)が見られることもあります。

さて、ここでクジラとイルカの分け方について、ザックリご説明します。

生物を分類する学問「分類学」的に言うと、すべてのクジラやイルカは「クジラ目」に分類されます。

その中で、マッコウクジラやシャチ、ミナミハンドウのように歯が生えている種は「ハクジラ亜目」、シロナガスクジラやザトウクジラのように口内に鯨ヒゲの生えている種は「ヒゲクジラ亜目」に分けられます。

また「ハクジラ亜目」は鼻の穴が1つなのに対して、「ヒゲクジラ亜目」は鼻の穴が2つ!というのも大きな特徴です。

皆さんがイルカと呼ぶのは「ハクジラ亜目」に属する、小型(体長がだいたい5m未満)のクジラ類のことです。

つまり、だいたいの身体の大きさでクジラなのかイルカなのか呼び分けているのです。
中には例外もいて、ややこしいですが……。

そんなところですが、御蔵島では「ハ」も「ヒゲ」も実は多彩な種類が見られるチャンスがあります。

イルカウォッチング中は、普通、目の前のイルカに夢中ですが、年に数回は必ず大型鯨種の目撃報告もあるんです。

これまでに御蔵島で見られているミナミハンドウ以外の鯨類の紹介をしたいと思います。

御蔵島で見られた鯨類たち

■マッコウクジラ

マッコウクジラ(提供:小木)

小さな写真ですが、三角の背ビレが特徴的です。頭の左前に向かって噴気が吹き上がるのも本種ならでは

大型鯨類の代表格でしょう。
御蔵島周辺では最も観察の多いクジラです。
5年前に目撃情報を記録するようになってから、すでに16例もの情報が寄せられています。

イルカウォッチングの時期にも目撃例があることから、比較的見やすいかもしれません。

つい先日、5月1日にも観光協会から発見がありました。

■ザトウクジラ

ザトウクジラ(提供:小木)

いつもイルカウォッチングをしているくらいの浅瀬でした。御蔵島で観察されたこの個体は、沖縄県の座間味周辺でも観察されていました

沖縄や小笠原で冬場見られるクジラです。
彼らが北上、南下する時期に御蔵島でも見ることができます。
つまり、春と秋ですね。

過去の記録を見ると15例、その全てが12月〜5月の間でした。
御蔵島のウォッチングのシーズンではないので、なかなか見づらいかもしれません。観光協会や村営住宅からブリーチが見える、なんて贅沢なこともあります。

■ハンドウイルカ

ハンドウイルカ(提供:小木)

かなりのスピードで移動していることが多く、水面から全身を出すようなジャンプを見せながら泳いで行きます。エントリーしたガイドは、「バビューン!と泳いで行っちゃいました」と言っていました

ミナミハンドウとは別種となっています。
水族館でもおなじみの彼らは、やっぱりたくさん見られます。

海がべた凪の時、一日中双眼鏡をのぞける時間と根性があれば、ほとんどの確率で見られるのでは?と思うくらい。

ウォッチング中に見ることも多いイルカです。
島では「灘イルカ」と呼ばれることが多いです。

■ハナゴンドウ、カズハゴンドウ、オキゴンドウ

カズハゴンドウ(提供:小木)

茨城あたりで大量座礁することで有名なカズハゴンドウ。御蔵島周辺でも大群で見られます

ゴンドウ3種。
こちらも年に数回は目撃情報があります。

ウォッチング中に見た!と言うお客様が多いのもゴンドウ類です。
御蔵島のイルカたちがゴンドウの群れに混ざって泳いでいることも。

そういえば、カズハゴンドウと思しき赤ちゃんイルカを御蔵のミナミハンドウが連れていた!という衝撃的なこともありました。

珍しい鯨種

■シャチ

はっきり言ってレアです。が!過去10年で2回の目撃例があります。
いずれも冬場です。
私は見たことがありません。
次はぜひとも見たいです。

■サラワクイルカ

サラワクイルカ(提供:小木)

小さな背びれと短い糞、のど元はピンクでカワイイです。島から数百メートルのところでした

たぶん初めて名前を聞く方がほとんどかと……。

1度だけ大群が島の東側で見られました。
カズハゴンドウの大群と一緒で、数百頭の群れは壮観でした。
イルカウォッチングのお客様も見られた方がいらっしゃったようです。

つい先週も、八丈島からの帰りのフェリーでハンドウイルカが見られました。
御蔵から東京へ戻る船で、真っ昼間から飲んでしまうのもオツですが、せめて三宅島を越えるくらいまではデッキで海を見ていたら、いろいろ見られるかもしれません。

マッコウやハンドウは可能性が高そうです。
またクジラ類以外でも、春のこの時期はアホウドリやカンムリウミスズメという世界的には超レアな鳥が多い海域です。

波間にたゆたうマンボウや大型のサメ類が見られることも。
どうせなら、帰りの船まで楽しんでしまいましょう~。

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PROFILE
山形大学農学部で、テントウムシの産卵生態を研究をしていたが、「もうちょっと大きな動物を研究したいなぁ」と路線変更。
三重大学大学院在学中に、御蔵島をフィールドとしてイルカの行動研究を始める。

2004年、御蔵島で観光協会設立に関わり、同大学院を中退。
現在、御蔵島観光協会勤務。

観光案内業務、エコツーリズムの普及活動、イルカの調査取りまとめを行っている。

■著書:
「イルカ・ウォッチングガイドブック」水口博也(編著)144pp. ウォッチングと生態研究の両立-御蔵島のイルカをめぐって
「クジラと日本人の物語―沿岸捕鯨再考」小島孝夫(編集) 第4章クジラと遊ぶ..
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