“かっこいいダイバー”とは?
かっこいいダイバーとは?
何気なく話題に上がったテーマですが、人より割と多くのダイバーを見てきた中で、かっこいいといと思うダイバーについて思うことを。
まず、外見上、かっこいいというのも僕の中では重要です。
海というフィールドで、安全や機能を追求すれば、腹を出してよい道理はありません(自戒を込めまくって)。
筋骨隆々、6パックの腹筋、イルカのような美しい流線型ボディのダイバーを見ると、単純にかっこいいダイバーだと思います。
ただ、本質的な話でいえば、かっこいいダイバーの前提は、やはり、まずは経験豊富であること。
さらに、この前提をクリアした上で、僕の中では、かっこいいダイバーとそうでないダイバーに分かれます。
いきなり具体例でいえば、ボートに乗船する時、ボート内からクルーが差し伸べる手に「ありがとう」と手を伸ばせるダイバーが僕の中ではかっこいいダイバーです。
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多くのダイバーが通る、100本ダイバー症候群。
自分のことは自分でできるようになり、海にストレスも感じなくなった結果、自信に満ち溢れ、何でも自分でやろうとし、下手すりゃ、おせっかいで危ない行動を取ったりするのがメインの症状です。
その最悪なケースを挙げれば、ガイドが「ロープを伝って潜降してください」と言っているのに、「俺はフリー潜降できるんだぜ」とばかりにロープをつかまず潜降し、透明度が悪くてロストしたり、流されたり……(いや、本当に結構あるんですよ)。
その逆で、その海を一番よく知るガイドを尊重し、最も効率よく安全に潜るという本質にプライオリティーを置き、経験豊富にもかかわらず、しっかりロープを握れるダイバーがかっこいいと思うのです。
かくいう自分も「俺、できるダイバーだぜ」な時期はまさに100本の時にきましたが、今では結構赤面。
この時のプライオリティーは、本質より自分に向いているわけです。
尊敬すべきかっこいいダイバーは、自分を誇示することなく、そんなダイバーたちを「すごいですね(ニコ)」と言いつつ、自尊心や虚栄心、ポジショニングの要素は時に危ないというのもわかっているので、むしろ、しっかり観察し、大きな懐で見守っています。
ちなみに、ここで、100本症候群ダイバーの伸びた鼻を豪快にへし折るベテランダイバーやプロも僕の中ではかっこよくないです。
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ただ、懐が広くてかっこいいダイバーは理解されにくく、俺すごいプロデュースをしている方がかっこいいと思われがちな一面もあります。
こんなことがありました。
尊敬するガイドさんと潜っている時、ゲストが浅瀬で浮いてしまいました。
もちろん、ガイドさんは気づいていて、浮いても安全なシチュエーション、むしろ、一度浮き上がりの経験をさせることが本人のためだろうということで、じっと見守りながら経験を積ませてあげようと思っているわけです。
ところが、そこそこ潜っているベテランダイバーが、むしろ水面移動させた方が楽なのに、そのダイバーをとにかく浮かないように押さえ続けるわけです。
ここまではよいのですが、そのベテランダイバーは「あのガイドおかしいよね、俺が対処したからいいものの」と言い、浮き上がりダイバーも「ありがとうございました。本当に助かりました」となっている。
横で聞いていて、う~ん、なんか悔しい(笑)。
学校の先生の評価を生徒がつける時代、背中で語る的な健さんスタイルはわかりづらく、ある程度、自分はこういう意図で、こういうことをしているんだよという説明やセルフプロデュースが必要なこともわかります。
ただ、だからこそ、前に出ない、わかりづらいけど一流というダイバーと会うと、かっこいいなぁ、となるのです。
この“かっこいい”を見極める方も、ある程度の経験に基づいたリテラシーが必要になるので、初心者やゲストにはなかなか理解されにくいかもしれません。
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経験豊富なのに、現地ガイドの言うことをしっかり守り、人の手を借りるべき場面では借りられるダイバー。
こういう方は得てして、潜った瞬間、「お主できるな」といった雰囲気が漂っています。
無駄な動きがなく優雅。
こんなダイバーになりたいものです。