考えること、感じること

この記事は約4分で読めます。

ブルースリーの『燃えよドラゴン』という映画に「Don’t Think. Feel!(考えるな、感じろ!)」という、とても有名なセリフがある。わたしもつねづねThinkよりFeelな方向で生きていたいと思っているのだが、大人になるにつれて、感じることよりも考えることが重要になっていく。例えば会社の会議でA案かB案のどちらかを選ばなければならないというような場合「やっぱA案がいいよね。なんかこうグッときた。オレはだんぜんA案!」みたいなことをいっても、あまり相手にされない。というか、多分怒られる。やっぱり会社というところは「今回の製品特製から考えて、A案のほうがより効果的にターゲットに……」とかなんとか、それっぽい理屈を述べないとウケが悪いことになっているのだ。このヘリクツな世界。


ワット・スィー・チュム
ところが旅に出るとこれは逆になる。例えば写真のような仏像を見て「この仏像は、当時のスコータイ王朝期の仏教と世俗社会との関係性を表現していて……」みたいなことをいっても、あまり相手にされない。というか多分うざい。それよりも「うわー、まるっきり家政婦は見ただよね」みたいな方が、きっとウケがいいのだ。
そう、旅先では、いい大人が思慮を浅くして、感じたことをそのまま行動に移してもいいことになっているのだ。あっちに行ってみよう! ここに入ってみよう! すごい景色だ! うまい飯だ! 夕日が赤いぜ! 星がいっぱい! 眠いから寝るぜ……。
要するになにが言いたいかというと、わたしたちが旅をするのは、普段、仕事とかで、ものごとを必要以上にシリアスに考えなければならないので、たまには「Don’t Think. Feel!」な状態になってバランスをとるためなんじゃないかと思う。考えるより感じること。思ったことを素直に口に出すこと。直感で行動すること。五感をフル活用して野性を取りもどすこと。旅に必要なのはそんな能力だ。旅に限らず、ダイビングとか、山登りとか、バイクに乗るとか、たき火をするとかも同じかもしれない。大事なのは考えより感じること。なので、やたらと頭を使って考えないといけないようなアクティビティというのは、趣味にしないほうがいいです。ずいぶん昔の話だけど、知り合いの外国人が5人の女の子と同時につきあっていて、わたしが「それってどんなヘブン?」と聞いたところ、彼は「いや、スケジュールを管理したり、鉢合わせしないように行動するエリアを分けたり、他の娘の記憶と勘違いしないように前回のデートの内容を事前に頭の中で復習したり、まるで仕事みたいだ」といっていた。たぶん本音なんだと思う。うらやましいけど。
ちなみに『燃えよドラゴン』で、彼はさらに「Do not concentrate on the finger, or you will miss all that heavenly glory」と続けている。シャオロン先生、私もそう思います。南の島とかで、部屋にヤモリがいるとか、スタッフがぜんぜん時間通りにこないとか、シャワーの出が悪いとか、あんまりそういうことを気にしてはいけないのだ。なぜなら、そういうことでイライラすると、せっかくバルコニーから見られる尋常じゃない星空とかが目に入らなくなるから。
ちなみにわたしが世の中で一番好きなマンガ『花男』(松本大洋)も、考えることと感じることの物語。実は父茂雄は、優等生の息子にただひたすら「Don’t Think. Feel!」といい続けている。「冷たいか、茂雄。それが海だ」「ビリビリしたかぁっ」。旅に出る時間がない人はぜひお読みください! そして管理人まこっちゃん、マンガ返して!

\メルマガ会員募集中/

週に2回、今読んで欲しいオーシャナの記事をピックアップしてお届けします♪
メールアドレスを入力して簡単登録はこちらから↓↓

FOLLOW